第7話 残った答え
それから何日間か経っても、紙の上に書かれた答えは消えてくれない。むしろ文字は大きく鮮明になって、元の小さな答案用紙の上に積み重ねられていく。
私が影山のことなんて……。そう思うと、頭の中に彼のすましたクールな表情が浮かび上がってくる。左側に顔を向ければ、その先には頭の中に浮かんでいた顔がそのままの形である。今日も一人で本と向き合っている。だけど、今日は心なしか表情が柔らかく見える。
かっこいい。蓋の隙間から逃げ出してきた想い。嘘だと信じたくても、嘘だと思えない。もう、目を背けていられない。私はきっと。いや、確実に影山に好意を抱いてしまっている。
スッと心が軽くなった。机の上の答案は、まるで崩れたジェンガのようにバラバラに床の上に落ちていく。机の上に残った一枚。その上にはすごくシンプルで純粋な気持ちが残っていた。
時が経つにつれて大きくなっていくこの気持ち。影山の一つひとつの動きや、授業中、ごくまれに聞こえてくる無機質で気怠そうな声が気になって。気になって。家でも、SNSを流したまま彼のことを考えてしまっている。
溜め息。いつまでこんな日々を送るのか。かわいくて明るい私が、どうしてあんなに陰気な奴をひそひそと眺めているんだろうか。影山が私のことをどう思っていようが、この私に告白なんてされたら、喜んで尻尾を振りながらついて来るに違いない。
浴室に立ち込める白色の湯気を見上げながらぼんやり考える。
「そうだよ。観てるだけじゃなんも変わんない。よし。明日が勝負だ」
恐れているわけじゃないけど、自分を奮い立たせるようにそう言って私は浴室から出た。
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