第22話 御披露目

 私はグラシアさんのお店に戻って、ハーフパンツと手袋を右手だけ作ってもらった。

 手袋は鎧下に合わせて黒にした。

 私はハーフパンツに着替えてジャケットを脱いだ。

 ブーツにレギンス、ハーフパンツと鎧下に胸当の格好だ。

 鎧下が身体にピッタリなので肌の露出がないが少しセクシーな感じだが、胸当でカバーしてるので問題ないだろう。

 後、7歳児に興奮する知り合いは1人しか知らないので、大丈夫な筈だ。

 キャシーさんにも可愛いと褒めてもらえたので冒険者としては合格な範囲のようだ。

 斥候職の女性などは肌の露出が多い人がいるので、それに比べたら断然マシだろう。


 私は商品の御披露目の為に暫くこの格好でギルドをウロウロしていた。

 訓練場ではロリコンがベタ褒めしてくれて若干引いたが、性能の確認のため模擬戦をしてもらった。

 後、食堂のおばちゃんにも好評だった。

 黒く染め上げると熱にも耐性があるので食堂でも着れるとおばちゃんが言っていた。

 通気性も良いので、汗をかいても蒸れないし、水に濡れても弾いてくれる。

 そんな布教活動をしていたら、インナーも女性の間で話題になっていたらしくグラシアさんのお店は大繁盛になっていたようだ。

 エルフは総じてちっぱいさんが多く、このスポーツブラに群がった。

 大きい人は大きい人で冒険者の人はこのブラを求めたようだ。

 激しく動く人にはオススメだよね、そう言う目的のものだから。

 アンディさんの店にもチラホラお客は行っているらしい。

 グラシアさんの商品よりお高いので、劇的には売れないが買い替えるタイミングで新調しようと相談に来る人は多いようだ。

 私もグラシアさんのお店にはボクサータイプのショーツを注文したり、キャミソールを買ったりしているがアンディさんの店では追加はナイフくらいだよね。


 大分布教も進んできたので、私はグラシアさんの新商品の御披露目をすることにした。

 今回はフード付きのポンチョである。

 白いままのポンチョを注文したのだが、エアロフロッグの魔石を嵌め込むと周囲の色に同化することが分かったのだ。

 要は保護色なので良く見ればわかる程度なのだが、コレは冒険者には必須級の外套になるよね。

 特に魔の森で活動している冒険者には重宝するだろう。

 この時点でグラシアさんのキャパはオーバーしているので、他の服飾店と共同して商品は作っていた。

 私のお陰か?大分稼げたようで、商品の独占をするよりかは街全体で盛り上がろうと言う感じのようだ。

 その為、エアロフロッグの革の需要が鰻登りで、流石の私でも供給が追いつかなくなっていた。

 なので数組のベテランを伴ってエアロフロッグ狩りのツアーが開催されることになったのだ。

 ギルドが幾ら説明しても毒に侵された皮を持ってくる冒険者が多く、キャシーさんが私になきついてきたのだ。

 キャシーさんにはお世話になってるからね、頼まれると断れないよね。


 今回は特例として、上級冒険者の護衛の下に未成年冒険者が中層域に入ることになった。

 私自身も初めて湖に行くので、強ち間違えではないのだが、他の未成年冒険者の手前の処置だ。

 私も護衛付きでマップを広げられるので非常に助かるけどね。

 そんな中、護衛の冒険者の中にエリーさんがいた。

 

 「お久しぶりね、センちゃん。 

 暫く会わないうちに随分と格をあげたみたいだけど……。

 まぁ、それは道中聞くとして、今回の件は私達としても見過ごせない案件だから参加させてもらうわ。」


 「お久しぶりです、エリーさん。

 この間、エルダートレントから桃の果実を採取出来たので、お裾分けしますね。

 エルフの皆さんでもエアロフロッグの皮は採取出来て無いのですか?」


 「エルフは魔法は得意だけど、普通は殲滅に使うから気絶させるのは得意じゃないのよね。

 でも今回のインナーはエルフ専用装備になりそうなくらいだからね。

 その為に私も派遣されたようなものだから。」

 

 「エルフの方達ならどうにでも出来そうですけどね。

 多分、キーワードは生活魔法だと思いますけど、それは現地で試してみましょうか。」


 エリーさんとの冒険は、バカの街からの移動ぶりなので私もテンションが上がる。

 私とエリーさんだけなら空をひとっ飛びなのだが、他の冒険者がいるので今回は徒歩で向かう。

 フロートボードの移動を教えたのだが、使える人は少ないみたい。


 その中、私のブーツに注目が集まる。

 エリーさんには私の魔法を教えているので、自前のブーツの下に魔法を展開している。

 普通は魔法触媒も無しそんなことは出来ないのに、流石はエルフのエリーさんだ。

 私は魔法触媒でブーツ裏にフロートボードを発生させてる。

 このフロートボードはゴム状の柔らかさで展開しているので歩きやすいし、本来の靴底は地面と接触している訳ではないので滑ることはない。

 慣れると空を走ることも可能になるが、それは今のところ私しか出来ないようだ。


 森の起伏も関係無しに歩く私とエリーさんを見て上級冒険者の人も欲しくなったようだ。

 後、女性が着ている鎧下にも注目されている。

 今日の私はワイドパンツとジャケットを着てるので鎧下は見えてはいない。

 斥候職の女性がレギンスにホットパンツと鎧下にベストの格好で先行しているのだが、肌の露出が無くなって森の枝などでの切り傷が少なくなったようだ。

 しかも動きやすさは変わらないし、通気性の良いので森の中でも快適に過ごせるようだ。

 

 男性冒険者からは露出が減ったと文句も出ているようだが…。


 そんな改めて布教活動をしていたら湖が見えて来た。

 今回はトレントの素材は関係ないので、極力無視してここまで来た。


 湖の周りにはカエルがいっぱいいるのだが、私は手前にいるカエルにゴム状の魔弾を眉間に撃ち込だ。

 カエルが伸びているうちに私は素早くカエルを引き寄せて冒険者に見えるように腹を裂いた。

 先ずは毒袋を取り出して容器に入れる、その後は心臓脇にある魔石を抜くとカエルの色が白くなって死んでしまう。


 「見事なものね、最初から魔法は手加減が出来ていてその後の処理も早かったわ。

 後は解体するだけで良いのかしら?」


 「この状態になったら後は問題無いですね。

 私はこのまま収納してギルドで解体してもらいますけど、肉はそんなに高くは売れないので皮だけ剥いで行っても問題無いと思います。

 あぁ、でも毒袋は持ち帰ってくださいね。

 この毒が革の加工に使用しますから。

 打撃系が得意な人は眉間や頭を殴打して下さい。

 そこそこ強めでも死にませんから。」


 私はさっきカエルに撃った魔法を近くの木に当てた。

 木の表面が裂けて大きめな痕がついた。

 

 「物理耐性が有りますから死なないと思いますが、瀕死になると毒を全体に回しますので注意して下さい。

 魔法使いのかたはコレから色々試してみましょう、斥候職のかたは毒の使用は辞めて下さいね。

 麻痺毒でも毒が全体に回りますから、睡眠は大丈夫ですけど。」


 物理主体の人は結構楽なんだよね、思いっきり殴ればなんとかなるから。

 瀕死の場合はそこから毒が回るまでのスピード勝負になるけど…。

 

 魔法職も地属性の人は比較的楽かな?

 眉間に狙えるならばだけど、他の属性はどうしようかなと思っているが…。


 「エリーさん、冒険者の人って虫除けの生活魔法使えますかね?」


 「森の中では必須級の魔法だから、パーティーの中で最低1人は使えると思うわよ?

 それがどうかしたの?」


 「それなら魔法職の人でも何とかなるかもしれないですね。

 エリーさんは私の真似をしてもらっても良いですか?」


 「勿論大丈夫よ。

 センちゃんの魔法は面白いから、私は好きよ。」


 私は使える魔法の中で試行錯誤して使っているだけなのに面白いって…。

 でもコレも前世の知識があるから使えているのだけどね。

  

 私は虫除けの魔法を広範囲で掛けた。

 掛けた後は、それを右手に集めてくる。

 虫除けの魔法は匂いとか成分で虫を寄せ付けないのではなく、微弱な静電気によって虫を寄せ付けないのだ。

 コレを1箇所に集めるとAED並みの電力が集まるのだよ。

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