第20話 依頼

 レフ君が聖樹の魔剣を持ってエルダートレントに近づいて行く。

 レフ君が魔剣に魔力を流すと、魔力の刃が伸びて行く。

 日本刀の打刀のような見た目だ。

 増えた魔力と魔剣にまで成長したナイフの合わせ技である。

 前の魔力量だと脇差ぐらいが限界だったんだよね。

 私に刀は振れないけれど、レフ君は難なく使える。

 私のスキルなのに何処で覚えたのか?

 レフ君の謎は深まるばかりだけど。

 

 その状態になるとエルダートレントもざわつき始める。

 頭上の木を揺らし、腕のような枝を振って威嚇して来る。

 レフ君は浮いてるから関係ないけど、地下から根も突き出してる。

 腕の枝がしなりレフ君に襲いかかって来るそれを、レフ君は魔剣で打ち払って行く。

 打ち払った枝を、直ぐ回収する有能ぷりも発揮する。

 

 迫る枝を打ち払い回収すること暫し、頭上の葉が激しく揺れると木の葉が舞い落ちるとレフ君に襲いかかる。

 レフ君がフロートボードの盾で木の葉を防いでいるなか、私もフロートボードのチャクラムで根を切り刻みながら木の葉を防ぐ。

 腕の枝の攻撃がウザいので、チャクラムで枝を打ち払って行くとエルダートレントの攻撃が緩んで来た。

 攻撃が緩んだ隙に、レフ君はエルダートレントの口に飛び込み魔石を確保する。

 大人しくなったエルダートレントを丸ごとストレージに保管して討伐完了だが、私が打ち払った枝や根などを回収しなければ勿体無いのでレフ君にはもうひと頑張りしてもらう。

 レフ君が枝と根の回収をしている間に私は、キャシーさんに会いにギルドへ向かった。


 「キャシーさん、女性物のインナーとか鎧下を制作しているところ知りませんか?」


 「専門で使っているところは無いけれど、冒険者用の服を作っているところがあるからそこを紹介しますね。

 センちゃんは育ち盛りだから防具は、まだ早いけれど、もう少し防御力のある服装にしてもらいたいかも。」


 「そうですね、それは分かっていたことなんですけど。

 今回の件が上手くいけば、その問題も解決すると思いますよ。

 ところでキャシーさん、この素材はギルドで幾らぐらいで買取してくれますか?」


 私はエアロフロッグの皮を見せて聞いてみた。


 「もしかしてこれってエアロフロッグの皮じゃない?

 街から出ていないのに、もう取ってきたの?

 しかも毒に汚染されていない皮なんて今まで見たことがないし、こんな綺麗な白い皮なんて初めてみたわ。

 もし良かったらサンプルとして置いて行ってもらえば、ギルドで検討してみるけど…。」


 「余分に確保してあるので大丈夫ですよ。

 それは預けておきますね。

 私はこの素材でインナーと鎧下を作って貰って来ますね。」


 私はキャシーさんに紹介されたグラシア洋服店に足を向けた。

 グラシアさんのお店はアンディ武具店と同じ通りにあり、私としては非常に助かるところだ。


 「こんにちは、ギルドの紹介で来ました。」


 「はーい、今行きますね。」


 店の奥から1人の女性がやって来た。

 多分、グラシアさんだろう。


 「いらっしゃいませ。

 随分可愛らしいお客様ですね。

 本日は、どのようなご依頼ですか?」


 「素材の持ち込みなんですが、インナーと鎧下の製作をお願いしたいのですが可能ですか?」


 「先ずは、持ち込みの素材を拝見させてもらっても宜しいですか?

 それによっては難しい場合もございますので。」


 私はグラシアさんにエアロフロッグの素材を見せた。

 この世界にはブラやショーツは普及しているのだが、全て大人用だ。

 子供用やちっぱいさん用のものは売られていない。

 なので私はこの素材で、スポーツブラとショーツを作ってもらおうかなと思っている。

 ボクサータイプも良いけどね、後は鎧下用に長袖とレギンスも作ってもらいたいな。

 他には外套用にポンチョも欲しいところだ。


 私は事前に描いてきたイラストを出してグラシアさんに聞いてみる。


 「この素材でこの絵のようなブラとショーツが欲しいのですが可能ですか?

 後、こんな感じの鎧下を作って欲しいです。」


 「御免なさいね。

 初めて見る素材なんだけど、何の素材なのかしら?」


 「エアロフロッグの皮ですね。

 魔力を流すと色が変色する面白い素材なんですよ。

 さっき初めてギルドに下ろしてきたので知らないのも無理がないと思いますよ。」


 「エアロフロッグの皮は聞いたことがあるけど、毒に侵されて使いものにならないと思ってたのに、この素材にはそれが見られないのね。

 初めて扱う素材だから少し時間が掛かるかも知れないけど良いかしら、出来れば挑戦させてもらいたいのだけど…。

 それでも大丈夫かしら?」


 「サンプルも含めて置いて行きますね。

 時間は気にしないので、お願いしますね。

 ギルドにはキャシーさんに渡していますから、何かあればキャシーさんに連絡してください。

 素材が足りないときは連絡してもらえれば、また取ってきますから。」


 「ありがとうございます。

 誠心誠意努めさせて頂きます。

 何かありましたらギルドに連絡致しますね。」


 「はい、宜しくお願いします。

 私はセンと言います。

 この素材でアンディさんのところでもブーツを作って貰おうと思ってますので、気になることがありましたら其方にも声を掛けてみて下さい。」


 「そうなのですね。

 分かりました、アンディさんとはたまに一緒に仕事していますから何かありましたら聞いてみますね。」


 「はい、それでは宜しくお願いします。」


 私はグラシアさんの店を出て、アンディさんのお店に向かった。

 

 「おう、どうした?

 武器のメンテナンスにはちょっと早くねぇか?」


 「こんにちは、アンディさん。

 メンテじゃないですよ、今回はブーツと防具の依頼です。

 これとこれの素材でブーツを、この素材で胸当を製作してください。」


 私はエアロフロッグとエルダートレントの素材を出してアンディさんに見せる。


 「おいおい、これはエルダートレントか?

 コッチの皮は初めて見る素材だぞ?

 この素材でどんなブーツを作るってんだ、胸当は分からなくもないが…。」


 「私の魔法にこんなのがあるんですよね。」


 私はエルダートレントの素材を魔法触媒にしてゴム状のフロートボードを出してみた。


 「ほう、面白れぇ魔法を使うな。

 これを靴底に仕込むってことか?

 それとこの皮でブーツを作るってんだな。」


 「そうですね、後この皮はエアロフロッグの皮なんで、通気性と伸縮性に防水の効果があるみたいですし、魔力を流すと色が変わるのと多分なんですが、防御力も上がってると思うんですよね。」


 「ほう、エアロフロッグの皮の加工に成功したんだな。

 毒で使いものにならないと聞いていたのにすげぇじゃねぇか。

 ただ、オレも初めて扱う素材だから色々試してみてぇこともあるしな、ちぃとばかし時間もらっても構わねぇか?」


 「構いませんよ、エアロフロッグの皮はグラシアさんのところにも下ろしてるので、もし良ければ2人で相談して下さい。

 グラシアさんのところには、インナーと鎧下を頼んでいますので。」


 「確かにオレのところじゃ鎧下は頼み辛れぇよな。

 まぁ、分かったよ。

 なんかあったら相談してみらぁ、胸当は全体的に覆うのか?

 それとも左胸を中心に防御するものか?」


 「左胸中心でお願いしますね。

 成長すると思うので試作品でも構いませんよ。

 完成は数年後でも構いませんし。」


 「確かにそれもアリだが、エルダートレントの素材なら、ちと勿体ねぇな。

 長く使うことで魔力が馴染むからなぁ、素材はどれぐらい持ってるんだ?」


 「エルダートレントなら1匹?1本?分はありますよ。

 ただのトレントなら数本ありますけど。」


 「それならギルドにエルダートレントは下ろしておいてくれ、必要なところは後で取りに行くと言っといてくれりゃぁ保管しといてくれるからな。

 トレントは裏に出してくれりゃ、オレが見てやれるがな。

 残りはギルドに売っちまいなぁ。」


 「はい、それじゃ良さそうなトレントは置いてきますね。

 残りはギルドに売ってしまいますけど、追加が欲しかったら言って下さい。

 また取りに行きますから。」

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