第19話 進化?

 この身体になって気付いたのだが、どうやらスライムは妖精寄りの生き物みたい。

 森のお掃除屋さんとして生まれて来るのだか、魔物やら何やらを消化吸収して行くうちに魔物寄りの生き物になって行くようだ。

 要は、純粋な魔力溜まりから生まれて来るスライムが成長と共に汚れて魔物になってしまう。


 もし私が何も知らずにスライムを核ごと吸収していたら、私も魔物になっていたかもしれない。

 さっきのビックスライムと同じように。


 それをスライムハンドが必要な魔力だけを吸収してくれたので、純粋な魔力の核が私の中に出来たようなのだ。

 なので今の私の状態は妖精寄りの存在、多分エルフとかと似たような存在かな?


 元々エルフは、妖精と人族とのハーフだと言われているからね。

 ドワーフなんかもそんな感じだね。


 そんな訳で、問題は無いようなので黙っていることにした。

 もしかしたら寿命も延びていて、あと後問題になるかもしれないが、それはそのときの私が考えることだろう。

 

 スライム細胞が増えたことにより、若干だが私の身体にも変化はあった。

 霞んだ白髪だったのが、艶が出て魔力のお陰かプラチナのような輝きが出たり。

 黒眼が蒼みがかったり、肌がプルプルのツヤツヤになったり、若干だが胸も膨らんだようだ。

 それにスキルに[物理耐性]が生えていた。

 スライムが持っていたスキルをゲット出来たようだ。


 以前のガリガリの棒のような面影は無くなった。

 年相応か、それよりも健康的になったとは思う。

 

 今はキャシーさんにスライムの登録をしてもらい、食堂でご飯を食べているところだ。

 スライムにはレフ君と名前を付けた。

 そのレフ君だが、私の食事のサポートをしてくれている。

 今までは右手だけで食事をしていたので時間が掛かっていたのだが、お皿を抑えてくれたり持ち上げてくれたり、左手があるようにサポートしてくれている。

 スライムハンドの正しい使い方が出来ている感じだ。

 左手が無くて不便だと思って練習してたのに、暗殺じみた戦闘にしか使ってこなかったからね。

 もしかしたらレフ君も思うところがあったのかもしれない。

 今は[擬態]でスライムになっているが、今まで通りのスライムハンドとしての活動も出来るので、これからも頼りになる。

 私に魔石が出来たからなのか、レフ君に自我が芽生えたようで私が命令しなくても自主的に活動出来るようになった。

 元からそういう兆候はあったのだが、今はハッキリとした意思表示を感じる。

 それが、スライムとしての私のお世話なんだと思うけど…。

 普通にスライムハンドとして使用してあげたい気持ちもあるが、私の切り札的存在のスライムハンドを公に使用するのは憚れる。

 これまでもこの子のお陰で生きながらえたのだから、これからもそれは変わらない。


 それから1週間は診療所に通ったり、採取の依頼なんかをこなしていたら食堂のおばちゃんからスペシャルメニューの卒業を言い渡された。


 「あんたもソコソコ稼いでいるようだし、ちょっとは見れる容姿になったからね。

 これからは、自分でしっかり食べて食堂に貢献しておくれ。」


 何故かこのとき食堂に居た冒険者に祝福された。

 1年以上私とおばちゃんのやり取りを見て来たのだから、分からなくもないがそんな反応になるとは思ってなかった。

 これで私も1人前の冒険者の仲間入りが出来たのかな?


 最近採取の依頼で森に入るのだが、今の革靴だとどうも森の中を歩き辛い。

 滑りにくい加工はしてあるものの限度があるし、革靴なので濡れると最悪だ。


 私にちょっとしたアイディアがあるのだが、それを活かすための素材を私は知らない。

 なので、知っていそうな人に聞いてみることにした。


 「キャシーさん、通気性が良くて、伸縮性もあっる防水の素材ってありますかね?」


 「何言ってるの、センちゃん?

 そんな素材1つしかないじゃない。」


 「えっ?

 あるんですかそんな素材? 

 ダメ元で聞いてみたんですけど、あるなら教えて下さい。」


 「魔の森の中層に湖があるんだけど、そこに棲みついてるエアロフロッグって魔物の革がそうなんだけどね。

 問題があって、倒すと皮に毒が染み出して使い物にならなくなるのよね。

 それさえどうにか出来たら、いい素材なんだけどね。」


 「そうなんですね。

 ありがとうございます、参考になりました。

 少し検討してみます。」


 「あぁ、センちゃん1人で湖には行かないでね。

 湖の周りはトレントの巣になってて、中にはエルダートレントもいるからね。」


 「はーい。

 私、行かないから大丈夫ですよ。」


 それから私は宿に戻り、森の湖にレフ君を飛ばした。

 私がいつも行っている中層よりも更に奥に、その湖はあった。

 レフ君に周りを確認してもらったが、確かにトレントが多い。

 その中に一際大きい木が立っていて、アレがエルダートレントだろう。

 ただのトレントはレフ君のことに気付いていないが、エルダートレントには気付かれているようなので近づかないようにしなければ。

 後で素材は回収したいけど。


 今日の目的はエアロフロッグなので、湖の探索をしてもらう。

 エアロフロッグは湖のそこら中にいた。

 岸で休んでいる個体や、泳いでいる個体。

 そして湖の上に浮かんでいる個体…、そうこのカエルは空を飛べるのである。

 飛ぶと言うよりかは、膨らんで漂っている感じだが…。

 身の危険を感じると、空高く浮かんで風魔法で攻撃して来るのだ。

 なので遠距離攻撃が出来なければ、倒し辛い相手でもある。


 私はいつも通りに、岸で休んでいるカエルの眉間をゴム弾で撃ち抜き気絶させた。

 気絶している間に、カエルの毒袋を取り出して止めを刺した。

 カエルの皮は毒による侵食こそ無かったが、攻撃したときに変化した斑模様の気持ち悪い色になってしまった。

 これでも使えないことはないが、もう少し何とかしたい。

 次の個体に狙いを定め魔法を放つ。

 次の個体も気絶している間に、毒袋を取り出すのまでは一緒だが生きている間に魔石を撤去した。

 魔石を抜いた瞬間にカエルの皮が、斑らな攻撃色から真っ白な色になって亡くなった。

 レフ君に頼んでその場で解体してもらって、皮と肉に分けてもらった。

 毒に侵されてない肉はギルドで買い取って貰えるらしい。

 鶏肉のような感じで、意外と美味しいみたいだけど、私が進んで食べることはないだろう。


 レフ君が皮を持ち上げて、触っているところが黒く変色したのだ。

 皮から離れるとまた白くなるのだが、皮に魔力を流すと変色するようなのだ。

 魔力の流す量により色の変化が変わるようで、結構幅の広い色合に変化出来るようだ。

 これは面白い素材かもしれない。

 私は多めにこの素材を集めることにした。

 身体が成長したので欲しかったものがあるのだが、この素材で作れるかもしれないので多めに確保したい。


 エアロフロッグの素材を集め終わったら、次はトレントだ。

 トレントは冒険者が近くにいると擬態して、突然襲いかかってくるか、自分になっている果物や木の実などを餌に誘き寄せる習性がある。

 私の場合は、トレントがレフ君に気付いていないので根を上げて移動しているトレントを狙う。

 トレントの顔に見える樹洞の口の中に魔石があるので、それをレフ君が抜き取るとそのままストレージに収納出来る。

 地面に生えているトレントは、1度掘り起こすか引っこ抜かなければ収納できなかった。

 

 果実付きのトレントも回収出来てホクホク顔の私だが、これからもお世話になりそうな場所なのに邪魔なヤツがいるよね。

 私の装備の為に素材は欲しかったからちょうどいいけど、出来れば討伐して安全を確保したいところだ。

 私の今の防具と言えば小手ぐらいしか装備してないからね。

 ここらでアンディさんに頼んで防具でも作ってもらいたい。

 それには先ずエルダートレントの討伐からだね。

 パワーアップした私の力を試すのには、ちょうど良い相手かもしれない。

 って言っても戦うのはレフ君なんだけどね。

 レフ君にはちょっと頑張ってもらおうかな。

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