第16話 ジョブ
私の冒険者の中での立ち位置は間違いなく回復職ヒーラーだ。
ただ、体術を習っているのでゲーム的には殴りヒーラーと呼ばれる部類かもしれないが…。
只今、スライムハンドは魔の森の浅瀬でヒャッハーしている。
指輪で魔法を打出し狙撃したり、ゴブリンの背後から首を掻き切ったりしている。
やっていることは暗殺者と一緒だ。
姿が無いので暗殺者よりタチが悪い、魔力の掌なんて魔力視がなければ見ることも出来ない。
魔力視があっても、私は隠密と隠蔽を使って見付かりにくくしているので余程の上級者じゃ無いと見つけることは困難だろう。
ゴブリン如きにに気付かれない自信はある。
ゴブリンの魔石が100個を超えたあたりで辞めることにした。
私の格も随分と上がったように感じる。
6歳児としては上位に位置付けていると思うが。
暫くはゴブリン狩りで格を上げて、基礎体力と身体能力の向上に努めようと思っている。
一旦ゴブリン狩りを辞めて薬草などの採取をすることにした。
格上げも大事だが、冒険者としての生活も大事だ。
冒険者にはランクはないが、ギルドの評価はある。
ギルドの評価が低いと依頼を断られることもあるとか、この街の人はいい人しかいないから大丈夫だが、他の街では素行が悪いと護衛依頼を断られることもあるようだ。
ギルドとしても紹介した手前、依頼を失敗されると困るよね。
何事も人と人の繋がりは信用第一なのはどこも変わらないようだ。
妖精の街の所属なだけで、ギルドと商人からは信用されるらしいけど。
私は治療士としては評価されているが、冒険者としては駆け出しも良いところなので出来ることはしていきたい。
薬草などの採取は出来ているのだが、私が1番探しているのは果実だ。
ご飯は山ほど食べれるけどヤッパリ欲しいよね甘味は。
果物を求めて森の奥にスライムハンドを飛ばしているが一向に果物が生っている様子がない。
果物の木などは生えているが、実が生っていないのだ。
もう少し奥まで行くとゴブリンが果物を取っている現場に出会した。
コイツらのせいで森の果物が無かったようだ。
フロートボードのチャクラムとナイフで、サクサクとゴブリンを退治していく。
残っていた果実は回収しておくが、この調子だと他もやられていそう。
もう少し果実を回収しておきたかった私は、スライムハンドを森の奥まで飛ばした。
ウジャウジャいるゴブリンを無視して森の中程に強そうなゴブリンが何やら指揮をしているようで、果物やら食べられる木の実を集めてるようだ。
コイツのせいでゴブリンが組織立って動いているようなので、サクッと首をナイフで掻き切る。
ゴブリンの上位種なのか、少し抵抗されたので魔力を込めて首を落としてやった。
通常種のゴブリンが騒いでいるが、ゴブリンは馬鹿なので放っておいても大丈夫だろう。
ゴブリンが集めた果物など汚くて食べる気にはならないので放置するしかない。
ゴブリンが煩いので始末しようか悩んでいると奥から先ほどと同じ様な上位種と、更にそれよりも強そうなゴブリンがやって来た。
先ほどと同じ上位種がまた、指示を出していたのでサクッとフロートボードのチャクラムで首を刎ねる。
その上のゴブリンが騒ぐ前に魔力を流したナイフで、首を刎ねておいた。
通常種のゴブリンは一瞬訳が分からなかったのか静まり返っていたのだが、1匹が逃げ出したら周りのゴブリン全てが逃げていなくなった。
他にも上位種がいるかは分からないが、これで暫くは森の中も落ち着くかも知れない。
私は上位種の魔石を抜取り、一応死体も収納しておいた。
今日は取り敢えず終了にしよう。
受付のキャシーさんを探し、私は魔石の買取をお願いしたのだがキャシーさんの顔色が変わる。
「センちゃん、疑うわけではないのだけど、この魔石はどこで手に入れたから教えてくれる?」
「どこでと言われると困りますが、ギルドには魔の森の地図とかありますか?」
「そうよね、センちゃんに言っても分からないかもね。
詳しく聞きたいから、ちょっと個室でお話ししましょうか。」
キャシーさんの案内で受付横の個室に案内されて暫く待たされる。
キャシーさんが戻って来て、資料室にある地図よりも詳しく書いてある地図を持って来て見せてくれた。
「余り新人の冒険者には見せない地図だけど、センちゃんなら仕方がないかな?
センちゃんはこの地図のどの辺でさっきの魔石を手に入れたか分かるかな?」
「えぇーと、この辺でこの魔石のゴブリンがいて、残りの2つはこの辺だと思います。」
「中層手前くらいの森の中なのね。
ハッキリ聞くね?、答えづらかったら言わなくても大丈夫なんだけど、このゴブリンはセンちゃんが倒したってことで良いのよね?」
「方法は教えられませんが、私が倒したので間違いありません。」
「そうなのね、それじゃこのゴブリン達がこの辺で何をしてたか分かるかな?」
「上位種の様なのが通常種を指示して果物や木の実を集めてた様ですよ?
私も果実を集めるのに森の探索をしていましたから。」
「ギルドから一歩も出ていないセンちゃんが、森の探索をしているのも疑問だけど…、そこは聞かないでおいてあげる。
他にも上位種がいたか分かるかな?」
「上位種を倒した時点で探索を辞めたので、ハッキリとは分かりませんが、多分いなったと思いますよ。
あと、上位種の死体も収納しているので、提出は出来ますよ?」
「ありがとうセンちゃん、後は此方で調査するけど今回のゴブリン騒動は早めに終わりそうね。
死体も確認してからだけど、キングをセンちゃんが倒してくれてるから後のゴブリンは直ぐにいなくなるかもね。」
「?キングってこの魔石の持ち主のこと?
魔石でそんなことも分かるんですか?」
「そうよセンちゃん、魔石はね大きさと魔力の純度が調べられるのよ。
この1番大きいのか多分キングで、この2つはジェネラルだと思うわ。
ジェネラル以上の上位種がいなくなれば、普段のゴブリンと変わらなくなるはずよ?」
「そうなんですね、この後解体場に死体持っていきますね。
それで確認して下さい。
私は果物が取れればそれで良かったので、余り気にしていませんでした。」
「センちゃんもし良かったらなんだけど…、果物持ってるなら少しギルドに下ろしてくれないかしら?
ゴブリンのせいで、冒険者も余り納品できて無いのよね。
数によっては色を付けて買取するわよ?」
「私もゴブリンのせいで余り数は無いですけど、葡萄と桃なら20個づつなら卸せますよ?」
「ありがとうセンちゃん。
助かるわ、依頼主には吹っ掛けて卸すから楽しみに入金待っててね。
果物は受付カウンターで出して、その後解体場に行きましょう。」
私はキャシーさんに言われるまま果物を出して解体場に死体を出した。
果物はキャシーさん用に2個多めに出して、お裾分けをしておいた。
キャシーさんには色々とお世話になっているからね。
ゴブリンの死体は、確認してもらったところキングとジェネラルで間違いないとのことだった。
キングとジェネラルの素材は防具とかにも使えるようだが、私には必要ないと売却した。
後はギルドのほうで、残党狩りなどの依頼を出すかどうかのようだが私には関係ないので食堂に行くことにした。
ギルドの依頼より私はおばちゃんのご飯のほうが手強いのだ。
食堂に行くと笑顔のおばちゃんがいて、いつもの山盛りプレートを渡してくる。
私はそれを笑顔で受け取り、食べ切るために格闘しなければならないのだ。
キングより怖いおばちゃんが、この街最強なのではと思うのは仕方がないことだと思う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます