第14話 新装備

 あの後、おばちゃんに食堂まで連行されて強制メニューを食べることになった。

 今回からは昼と夜で大銅貨1枚に値上がりした。(それでも安い)

 アンタもソコソコ稼いでいるだろうと。

 毎日私は診療所にいるので、少なくとも銀貨1枚は稼いでいる。

 多いときには銀貨2枚ほども行く日もあるからソコソコは稼げていると思うが、私はお金を使わないので貯まる一方だった。

 小手を買ってお金を使ったくらいなんだよね。

 服もそんなに必要ないし、食事はおばちゃんが用意してくれるからね。

 食堂のお金は取られているけど、私の手元に来てる時点で天引されてるので関係なかったからね。


 おばちゃんの強制メニューを2時間掛けて食べ終わることが出来た。 

 それなりに早く食べれるようになった私が2時間掛かって食べ切る量とはいかほどなものかと思うのですよ。

 残そうとするとおばちゃんが(無理矢理)食べさせてくれるので申し訳ないし、収納に仕舞おうとすると何故か包丁が飛んでくるので大人しく食べるしかない。

 やっとの思いで食べたら私はお眠の時間になっている。

 身体と服に清掃の魔法を使いそのままお休みなさい。


 翌朝はスッキリ目覚めたが、嫌な予感がして早めに食堂に行った。 

 おばちゃんの元気のいい挨拶と共に出て来た朝食プレートは、昨日の晩ご飯と同じくらいの量だった。

 私は引き攣った笑顔でプレートを受け取り2時間の格闘をするハメになったのだ。


 それから診療所の開始まで軽く型稽古をして腹ごなしをしておく。

 患者が多くて運動する暇が無かったら、昼ご飯を食べる時間がなくなるかもしれないからね。


 時間になったので診療所に向かい今日もお仕事。

 最近はお爺ちゃんお婆ちゃんがよく朝イチに来る。

 少しだけだがお年寄りと会話をして補助要員の水属性魔法使いに腰痛や膝の痛みを治して貰う。

 関節痛などは水属性のほうが治りは良いみたい。

 ヘルニヤとかは私の管轄になるけどね。

 この世界の人に神経が圧迫されていると言っても分からないと思うから。


 いつも通りに患者を捌き暫しの休憩の時間になるので私は訓練場に顔を出す。 

 最近無視していたロリコンが隅の方に居たので声を掛けた。


 「ジョージさん体術の相手してくれませんか?」


 「やっとやる気になったようだな。

 仕方が無いから…「だったらほか当たりますね。」お相手させて下さい、お願いします。」


 最初からそう言えば良いのに、困った人だよ。

 私とジョージさんは向かい合って構える。 

 ハンスさんにもお願いして、体術の確認をして貰う。


 「基本は防御主体ですので、ジョージさんからかかって来て貰えますか?」


 「了解だが、手加減はしねえからな。

 日頃の恨みはないけど、6歳児に負けるわけにはいかないからな。」


 それって恨みがあるって言ってるようなものじゃ無い?

 ジョージさんは自業自得だからね、私は悪くは無いよ?


 ジョージさんの右手の突きを小手で払う。

 ジョージさんの力にも対抗出来そうだ。

 その後も、蹴りや正拳突きに掴みなどを小手で受け流して行く。


 少しイラついているジョージさんを観察しつつ、ジョージさんの大振りな右の拳にカウンターで小手の正拳突きを腹に喰らわせてやった。

 見事に決まった小手の正拳突きからドゴォンと変な音がなったと共に、ジョージさんが訓練場の壁まで吹っ飛んでいった。


 私とハンスさんがポカァンとそれを見送っていた。

 ハッと私は気付き、ジョージさんに駆け寄って回復魔法を掛けていた。

 ジョージさんは、


 「ナイスパンチだぜ。」


 と親指を立ててそのまま気絶してしまった。

 もう一度、魔力をジョージさんに流して診察してみたが外傷は無いようだ。

 少し安心して私は診療所にジョージさんを運んで貰うよに近くの人に頼むのだった。


 「センちゃんよ。

 何処でそんな小手仕入れて来たんだ?

 並の攻撃力じゃ無かったぞ。

 そんなもんで人間叩いちゃダメじゃ無いか?」


 「アンディさんのお店で謎素材を使って作って貰ったんですけどね。

 此処まで攻撃力が上がるとは思っても居ませんでした。

 防御力を上げるために購入したんですけど、実戦でも使えるレベルですよね?」


 「そうだな、魔物素材だからな多分。

 実戦でも使えるだろが、実際は実戦でしか使っちゃいけない代物だよな。

 ジョージには良い薬にはなっただろうよ。

 最近依頼をサボってやがったからな。

 これでちったぁ真面目に働くだろうよ。」


 「やっぱり仕事サボってたんですね。

 この間注意はしたんですけどね。

 キャシーさんに言って今のも治療費請求しとこ。」


 「お前さん、どんだけオーガなんだよ。

 自分で殴って自分で治療して金取んなよ。

 そんなことしてたら誰も相手にしてくんねぇぞ。」


 私が周りを見渡したが、何故かしら目を逸らされる。

 溜息を吐きつつ私は諦めの境地にいた。

 もう此処では誰も相手してくれないのだろうなと、ハンスさんを見ても。


 「オレには無理だぞ、現役のヤツに相手して貰いな。」


 と、断られてしまった。

 ロリコンには犠牲になって貰おうか。

 仕方が無いので時間まで型稽古をすることにした。

 型の稽古は型の稽古で小手と会話をしているようで楽しいから良いけどね。

 それからは左腕に小手と右手に指輪を付けての稽古をするようにした。

 実戦で使えるように成るために、私のフル装備で稽古しないと慣れないしね。

 ナイフはどちらかと言うとスライムハンドの装備だからね。

 仕事も慣れて来たとこだし、スライムハンドには遠征に出て貰おうかな。

 今でもゴブリンの討伐くらい余裕だからね。

 採取も出来れば稼ぎにもなるから、頑張って貰おうと思う。


 昼食と格闘しつつも午後の診療も終え、夕方まで暇になる。

 ジョージさんも先ほど目覚めて、鍛えてくると言って出て行ってしまった。

 何処に行ってしまったのやら、そのうちに戻って来るとは思うけど。


 訓練場で型稽古をしながらも、スライムハンドを魔の森まで飛ばして行く。

 魔の森のゴブリンも放っておくと直ぐ増えてしまうので、討伐推奨の魔物になっている。 

 魔の森のゴブリンが厄介なところは数が増えると街を目指すようになるからだ。

 ゴブリンは魔の森の中でも弱者なので数が増えすぎると森から溢れて街までやって来る。

 数が多くても所詮はゴブリンなので、魔の森では生きて行けないのだ。

 森から追われて街から物資を奪おうと攻めて来る。

 人族が森から追われて平地に出て来たのと一緒なのだが、平地は人族のテリトリーなので平地からも追い出される厄介な魔物なのである。

 なので繁殖する前に叩いてしまうのがセオリーなのだが、たまに爆発的に増えて街が襲われることもあるのだが、この街だけは毎回撃退出来ているようだ。


 ゴブリンの背後からスライムハンドがナイフを持って近寄り首を掻き切る。

 前までは魔力を通して切っていたが、魔力を通さなくても掻き切れるし、魔力を込めると首を落としてしまうくらいには斬れ味が良くなっている。

 アンディさんの仕上げが凄まじことになっているよ。

 小手の攻撃力が高いのもアンディさんの所為なのかもしれない。

 

 ナイフばかり使っていると性能に差が出て来そうなので、指輪も使ってゴブリン退治もしようと思う。

 指輪は魔力の通りが良くなって魔法の威力も上がっているようだ。

 指輪から魔法を使うと魔力消費も抑えられていて、速度もいつもより早くなっていた。

 なので私は木の高い位置からゴブリンを狙撃して行く。

 ゴブリンを次々に狙撃していき、その数が2桁になるときに気付いたのだが魔石の回収が面倒だなと。

 仕方ないので、一旦狙撃をやめて魔石の回収をする。

 それからは狙撃は辞めて見つけたグループごとに処理をして行った。

 何か森の東の方からのゴブリンが多いような気がしたが、私が気にしても仕方が無いだろう。

 何か異常があるなら冒険者が報告すると思うからね。

 

 そこそこの魔石を回収してキャシーさんに買取を頼んだのだが、いつの間に森に行ったのと不思議がられたけど私は森には行って無いよと言っておいた。

 私自身は森には行ってないからね。

 嘘は言ってない。

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