第12話 ドワーフ

 この世界には転移者を迷い人と呼ぶぐらいには異世界から来た人を受け入れて居る。

 東に転移者が作った国があるそうで、其方の国は黒髪黒目が多いらしい。

 聞いた話によるとバカ男爵も祖先は迷い人だと言うのでビックリだが、私の祖先とは違うと思う。

 なので、この国にも日本の文化がチラホラと見受けられる。

 (転移者は何故か日本人が多いみたい)

 食堂のおばちゃんが米と醤油と味噌を使って調理していて可笑しいと思っていたのだ。


 迷い人は文化だったり、魔法の使いかただったりを発展させる人が多く色々な技術をこの世界に広めていた。

 その1つにウォータージェットもあった。

 威力は強いのだが、コスパが悪いので魔力に余裕が無ければ使用出来ない。

 

 ディランさんに私がいつも使っているフロートボードを見せて見た。

 ディランさんはビックリしていたが、所詮は生活魔法だから威力は高が知れてるがソコソコの切れ味はある。


 水属性は固まることが苦手だけど、その代わり形は自由に変形出来るのが強みだが、それはには魔力制御が要求されるので練習は必要だ。


 フロートボードの説明をするときに、回転を掛けると切れ味が増す話もしているので、丸鋸のようなものを意識して貰う。(丸鋸も迷い人が普及している)

 それによって魔法の威力もコスパも良くなると思うが、私は呼吸をしている魔物ならもっと簡単な魔法があることを教える。


 生活魔法でバスケットボールぐらいの水球を出して的の頭の部分を覆うとディランさんは、訳が分からないのかポカんとしていた。


 「呼吸している魔物ならこれだけで息が出来なくて死にますよ?

 対人戦にもお勧めです。」


 「センちゃんは歳の割にえげつない事考えつくんだね?

 おじさんちょっと怖くなったよ?」


 「ディランさんはおじさんって歳じゃ無いですよ。

 この魔法は水属性が得意なほうが精度も上がりますし、コスパも良いですからお勧めの魔法ですよ。」


 「そう言う事じゃ無いけど、水球は現状でも出来そうだから丸鋸の練習でもしようかな。

 ありがとうね、センちゃん。

 大分参考になったよ。」


 ディランさんもヤッパリ男だね、回転とかに憧れるのかな?(そうでは無い?)


 ディランさんとの話を終えると、隅のほうで私のことを待っているロリコンがいた。

 私は溜息を吐きつつジョージさんの近くに寄って行く。


 「ジョージさんは依頼を受けなくて大丈夫何ですか?

 幼女の相手をしてても結婚は出来ないですよ。

 依頼も受けずにお金も無くなったら、見向きもされませんよ?」


 「うぐっ、センちゃんは人の心を抉るのも上手なんだね?

 お兄さん感心しちゃうな。」


 「ジョージさんはもうお兄さんって歳でも無いんですから気をつけたほうが良いですよ。

 今日は仕方なく相手して上げますが、明日からはちゃんと仕事して下さいね。」


 「どうしてディランはお兄さんで、オレのことはお兄さんと認めてくれないの?

 オレとディランは同い歳だよ?

 オレのこともお兄さんって呼んで良いんだよ?」


 「ツッコむところはそこですか?

 そんなんだからダメなんですよ。

 お兄さんならお兄さんらしくして下さいね。

 もう手遅れだと思いますけど。」


 シクシク泣くジョージさんを尻目に私は体術の練習をする。

 私は治療の合間を縫って訓練場に来ているのだ、そんなに暇では無い。

 仕事しながら訓練が出来るので、私的には大助かりなのだがジョージさんはそうでは無い。

 ジョージさんには申し訳ないが、老後の面倒は見るつもり無いからね。


 最近キャシーさんは診療所に15歳以下の子供達を連れて来ることが多くなった。

 回復魔法士を育てる為なのは分かるのだが、それよりも歳下の子に教わるのはどうなのと思う。

 皆んな真面目に聞いてくれる良い子達なので、問題はおきていないが私がやり辛い。


 ただ、珍しい光属性魔法の回復が見れたのは良かったかも知れない。

 光属性も回復と似たような感じだが、どちらかと言うと成長なのだと思った。

 新しい細胞を作る手助けをしているように感じられた。

 光属性を極めれば、欠損も回復出来るのでは無いかと思っているが私が使えないので検証は出来ないだろうけど。

 

 私は左手が無いからこそスライムハンドと言うユニークスキルを獲得できたのだ。

 これは私の強みだろう。

 人前で使用出来ないのが辛いところだが、左手が無くても冒険者としてやって行ける確信が有るのもスライムハンドのお陰なのだ。

 それに私のご先祖さまのスキルもある。

 他の冒険者より恵まれているくらいなので、左手は無いままでも問題ない。

 

 が、やはり体術を習う上で左手が無いのがネックになっていた。

 左腕が疎かになりやすい。

 防御するにしても手が無いので払うか受けるしか選択肢が無いのが戦術の幅を狭めてる。

 腕だけで攻撃しても効かないので無視をされるのだ。

 だからハンスさんは盾を勧めて来たのだと思う。

 攻撃に使えないのなら防御に徹しろと。

 

 対人用に体術習っているのに、普段装備して無い物を当てにするのは如何なものかと思うのですよ。

 早急に小手を探さないといけないかな?

 小手を使って訓練したほうが早く慣れるよね。

 今日の帰りにキャシーさんに防具屋さんを紹介して貰おう。


 夕方の治療は今日は早く終わった。 

 冒険者の殆どが、魔物による切傷や噛まれた後などなので纏めて回復魔法を掛けると終わるのだ。

 さっさと終わらせてキャシーさんの元に寄る。


 「キャシーさん、小手が欲しいのだけど、この辺で良い防具屋さんに心当たり無いですか?

 鉄の防具では無くて、皮や木で作っていたら尚良いのだけど?」


 「革製品か木ね?

 それなら近くにドワーフのお店があるからそこの紹介状を書いてあげるわ。

 気難しい人だけどセンちゃんなら大丈夫だと思うわよ。」

 

 サラッと嫌なことを言ってくるキャシーさんだが、紹介状が有れば何とかなるのかな?

 深くは考えずに取り敢えず行ってみよう。


 キャシーさんにお礼を言い、私はそのドワーフのお店に足を運んだ。

 ドワーフのお店の名前がアンディ武具店と言い、店主はアンディさんだ。ギルドからも近くて大変助かるお店である。


 お店に着いて店内に入って声を掛ける。


 「すみませんギルドの紹介で来ました。

 アンディさんはいらっしゃいますか?」


 「ウルセェな誰だこんな時間に。

 今日は店仕舞いだから明日来やがれ。」


 とんでもない店の対応だが、私も暇では無いので更に声を掛ける。


 「そこを何とかお願いします。 

 話だけでも聞いていただけませんか?」


 「本当にウルセェな、何しに来やがった。

 まだガキじゃねぇか、ガキが武具なんて10年早ぇよ。」


 「すみません、これでも冒険者として働いてますので防具は必要なんです。

 確かに身体のは早いと思いますが、体術を習うのに左の小手が必要なので相談したいのですが。」


 左手の無い腕を見せて私は話し掛ける。

 アンディさんが顰めっ面をして私を睨む。


 「オメェさん親はどうした。

 その歳で冒険者なんてする必要ねぇだろよ。」


 「親は私が赤ん坊のときに魔物に殺されました。

 そのときに母に助けられて私は左手だけで済んだのですが、男爵の街からはエルフのエリーさんに助けられてこの街までやって来たので、頼れる知り合いも親戚もいません。」


 「ケッ、エルフに助けられただと、よくドワーフの店でそんなことが言えたな。

 ならエルフ以上のことをオレがしてやるよ、覚悟しやがれ。

 大体オメェのようなガキンチョがどんな小手を欲しがるって言うんだよ。」


 「出来ればですが、聖樹の木で作った小手が欲しいのですが加工は出来ますか?

 素材は私が持っているのでそれを加工して下さい。

 軽くて魔力の通りが良いものが望ましいのですが大丈夫ですか?」


 「バカかオメェは、聖樹なんてもんはエルフでも中々手に入らねぇ代物だぞ。

 よくそんなもん持ってやがるな。

 ただ、加工出来るかって?、それはオレに喧嘩売ってるのと同じだぞ。」

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