第7話 格闘!

 「試験は簡単よ、回復魔法を使って治療して貰うだけだから。

 付添の治療士が居る前で患者の治療して貰って魔法の腕前を見たいの。

 それをギルドで判断して治療士として常駐出来るかを判断する訳よ。

 ただ、治療士は足りて無いから常駐出来る腕前がなくても補助として指導も出来るから安心して。

 補助要員にも生活出来るくらいの報酬は出してるから。」


 「治療士の常駐依頼って頻繁にあるんですか?

 週に何日くらい入れるものなんですか?」


 「今は冒険者に頼んで週に1回は入って貰ってるけど、その人たちは魔の森に入ったほうが稼げるからね。

 センちゃんが入ってくれたら、毎日でも入れそうだけどね。」


 暫くは回復魔法で暮らしていけそうだね。

 その合間にゴブリンの魔石を回収しておけば生活に困ることは無さそうかな?

 試験受けてからどれくらいでギルドに常駐出来るか分からないけど、魔石を売れば暫くは待つからね。

 森に採取しに行っても良いし、スライムハンドで採取出来る私は街の外に出る必要は無いからね。


 「分かりました。

 出来れば早めに試験は受けたいです。

 後、今日の宿を紹介して貰えますか?

 宿の相場なんかも教えて貰えると助かります。」


 「試験は明日でも受けれるわよ。

 それじゃ、明日は補助要員として依頼を出しておくわね。

 後、泊まるところはギルドの施設があるから其処を利用して?

 16歳未満の子が初めて登録した日から1年間は無料で貸し出している部屋があるから。

 普通は成人した子が困らないように作った部屋だけど、センちゃんも利用出来るからね。

 部屋は狭いし、朝だけだけどギルドの食堂がタダで食べれるわ。」


 「それでは施設と明日の試験の手続きをお願い出来ますか?

 これからのことは試験次第で考えたいと思いますので。

 宜しくお願いします。」


 「分かったは、手続きしてくるからちょっと待っててね。

 その後に施設に案内するから、案内と言ってもギルドの裏にある建物だから直ぐだけどね。」


 そう言ってキャシーさんは部屋を出て行った。

 私も回復魔法は余り使って来なかったので、どれくらいの魔法が使えるかは分からないけど…。

 補助要員で仕事しながら、採取しておけば食べるのには困らないと思うよね。

 朝はギルドで食べれるのも助かるし。

 お代わり自由なら良いけど、それよりもどれくらい食べれるかも分からないから要らない心配か。

 

 キャシーさんが戻って来て手続きは問題なく終了して、施設に案内して貰った。

 ギルドの裏口から出て直ぐの建物がそうらしい。

 建物の近くにはギルドの解体場と訓練場があって、少し臭いと騒がしい音が気になるかもしれないと言われたが孤児院よりは遥かにマシなレベルなので問題は無かった。

 部屋は2畳ぐらいの部屋でベットに小さな机と椅子がある簡素な部屋だ。

 キャシーさんからは、1年後には出なければ行けないので余り荷物は増やさないようにと注意されたが、収納のスキルが有れば問題無いわねとも言われた。 

 ストレージにものを入れとけばこの部屋でも十分なくらいだ。

 今まで大部屋に雑魚寝だったので、個室を貰えただけでもありがたい。

 どうせこの部屋には寝に帰って来るだけなのだから。

 後は掃除は毎日することを言われたが、生活魔法が使えれば問題無いわと言われた。 

 魔法が苦手な獣人の子が部屋に入ると、生活魔法が使える子にお願いしているようだ。


 今日は朝早くから街を出て移動だったので、流石に6歳の身体には応えた。

 私に体力が無いだけかも知れないけどね、これからは良く食べて体重も増やさないと行けないので明日の朝はしっかりと食べよう。

 取り敢えず今日はお休みなさい。


 翌朝、昨日はご飯も食べずに早めに就寝したので、お腹が空いて目が覚めた。

 身支度を整えて、孤児院から着ているボロを纏う。

 お金が入ったら服を買いに行かなくてはならないかな。

 今日は室内なので外套は着ていないので痩せているのが目立つが仕方ないだろう。

 少し早いかなと思ったが、解体場のほうはもう職員が出て来ているようだ。

 私はギルドの裏口からコッソリ覗いて見たら、受付の女性が既に今日の準備をしていたので、食堂に行ってみた。


 「おはようございます。

 新しく施設に入ったセンと言います。

 ご飯はもう食べられますか?」


 「おはよう、あんたがセンだね。

 話は聞いてるよ、私はこの食堂を切り盛りしているおばちゃんだよ。

 食堂のおばちゃんで通っているから好きに呼んどくれ。

 それにしてもアンタ、ガリガリだね?

 ちゃんとメシは食ってるのかい?

 そんなんじゃ1日持たないよ。

 ちょっと待ってな、今直ぐ用意するから。

 朝は施設の子達は4時から食えるから大丈夫だよ。

 朝早くから依頼に出る子もいるから食堂も開けてやってるのさ。」


 わっはははっと豪快に笑って怒涛の如く嵐が去って行った。

 あんなに捲し立てられたの初めてだが、意外と心地よかった。

 暫く待って居ると、漫画メシのようなてんこ盛りのご飯と大盛りの野菜炒めとスープが乗ったトレイを持ってくるおばちゃんが出て来た。


 「アンタの分だよ、残したら承知しないからね。

 残さず食べるんだよ、アンタは痩せ過ぎだからそんくらいは食べなきゃ仕事はさせないからね。」


 「はははっ、ありがとうございます。」


 私はその重いトレイを持って座席に座って食べ始める。

 この世界に来て初めてご飯を食べたと思う。

 あるんだご飯、私みたいな転生者が広めたのかな?

 昨日はお代わりの心配をしていたが、これはお代わりどころか食べ切れるかも分からない。

 私の胃が破裂しないことを祈るだけだが、破裂したら自分で治そう。

 食堂に顔を出したのが大体5時半頃だったと思うが、只今の時刻は6時半を回っている。

 私のメニューには時間表記が付いている。 

 最初は日本の時間を表しているのかと思ったが、時間の進みはどちらも同じようだ。

 1日は24時間で回っているようである。

 最後のご飯と野菜炒めを口に入れてやっとのことで朝食との格闘を終わらせる。

 ご飯を食べるのに1時間以上も掛かっていたら、明日からも早起きしないと仕事に間に合わないかも知れない。

 明日も早起き決定になってしまった。


 「おばちゃん、ごちそうさまでした。」


 「漸く食べ終わったかい。

 明日も同じくらい出してやるから、ちゃんと食べるんだよ。」


 わっはははっと、笑いながら去って行くおばちゃん。

 明日も頑張ろうと思うが、直ぐには動けそうも無いのでちょっとだけ休んでいこうと思う。

 

 7時を過ぎた頃にキャシーさんが受付に来ているのが見えたので声を掛ける。

 

 「おはようございます。

 今日は宜しくお願いします、キャシーさん。」


 「おはよう、センちゃん。

 ご飯は食べたみたいね、うふふ。

 あのおばちゃんはいつもそうだから諦めてね。

 私達にも何だかんだ言って食べさせようとするから困っちゃうけど、根はいい人だから勘弁してあげてね。」


 「私が痩せ過ぎなのは分かっていますので、有難いです。

 今の私だと無理にでも食べないと胃が大きくならなそうなので助かります。」


 「そうね、センちゃんはちゃんと食べないとダメよね。

 でも私があんなに食べたら太っちゃうから辞めて欲しいわ。

 おばちゃんは直ぐ痩せ過ぎもっと太れって言ってくるのよね。」


 一般女性に太れは禁句だよおばちゃん。

 おばちゃんは美味しくご飯を食べて貰いたいだけだと思うけどね。


 それから私とキャシーさんは診療所に一緒に向かった。

 診療所には今日の担当の冒険者が来ているそうだ。

 診療所は基本は8時から17時まで仕事で暇な時間は自由にしていて貰って良いそうだ。

 朝から昼くらいまでは住民の皆さんが来て、夕方頃に冒険者が帰って来るとまた忙しくなるようだ。

 暇な時間に訓練場で訓練をしても良いそうだが、魔力切れには注意して欲しいとのこと。

 魔法使うのに魔力切れだと話にならないからね。

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