第6話 ギルドへ
エリーさんは、この後用事があるとかで別れることになった。
ギルドの場所を教えて貰い、泊まる所もギルドが紹介してくれる様なのでお礼を言って別れた。
後でお礼がしたいと、何処に行けば会えるのか聞いたらギルドでエリーさんの名前を出せば会える様にしてくれるらしい。
困ったことがあったら、遠慮なく連絡してねと笑顔で言われたが極力自力で何とかしないと、いつまで経っても恩返しが出来ないからね。
私はギルドに向かうためにいつもの癖で隠密と隠蔽を使い気配を消した。
他人に絡まれたくなかった私は何気なくスキルを使用したのだが、突然後ろからパコォーンといい音を鳴らして頭を叩かれた。
何事と思い後ろを振り返ると1人の冒険者が私を睨みつけていた。
「何しようとしてるか知らんが、街中で気配を消すヤツがあるか。
悪さしますって言っている様な物だろうが。」
と、怒鳴られてしまった。
私としてはこの様に絡まれたくなかったからスキルを使ったのだが、言われてみればそうだなと納得してしまった。
「すいません、ついいつもの癖でスキルを使いました。
今日街に着いたばかりなのですが、ギルドに寄って今日の宿を紹介して貰うつもりだけなのですが。」
男の冒険者は、チッと舌打ちして右手で頭を掻きむしった後、私の首根っこを掴んで歩き出した。
私は面倒なのに絡まれたなと思ったのだが、私のスキルが通用しないレベルの冒険者なので大人しくしていた。
バカ男爵のギルドでは私のスキルも通用していたが、この街の冒険者には通用しないと思ったほうが良さそうだ。
暫くブランブランと吊るされながら連れられて行くと剣と杖がバッテンに交差する看板が目に入って来た。
冒険者ギルドの看板だ。
冒険者が私を吊るしたままギルドに入り受付に向かって叫んでいる。
「キャシーさんはいるか?
今日街に来た鼻垂れ坊主だから良く教えてやってくれ。」
ギルドの奥から1人の綺麗な女性が現れる。
そのキャシーさんと思われる人が溜息を吐きながら此方にやって来た。
「ジョージさん人攫いは感心しないですよ?
ちゃんと拾った所に返してこないと親御さんが心配してますよ?」
「この坊主どうやら1人で来たらしい。
門のところで気配を消して入って来た様だから連れて来たんだ。」
「それにさっきから坊主って言ってるけどお嬢ちゃんよこの子。
そんな連れられ方したら可哀想よ。
ところで、お嬢ちゃんの親御さんはどうしたのかな?
1人でこんなところを彷徨いていると、この変なおじさんみたいのに連れ去られちゃうわよ。」
「初めまして、両親は魔物に殺されていません。
エルフのエリーさんに男爵の街から連れて来て貰いました。
ギルドで聞けば今日の宿を紹介して貰えると聞いたので此処に来るつもりだったのですが、前の街の癖で隠密のスキルを使ったところを…えぇっとジョージさんに見つかり連れて来て貰いました。」
キャシーさんとジョージさんはちょっとビックリしている様だった。
私は栄養が足りて無いのか、成長が少し遅いと思う。
なので6歳になったが、見た目はもう少し幼く見えているかも知れない。
「ありがとうね、エリーさんに確認するけど大丈夫かな?
後、身分証なんて持って無いわよね?
貴女のお名前と何歳か知っていたら教えてくれる?」
「孤児院で過ごしていたので名前は有りません。
歳は6歳なのは確かです、孤児院で作った向こうのギルド証は有りますが出来れば此方で作り直したいと思っています。」
私はストレージからギルド証を出した。
また変な誤解を招く様なことをして頭を叩かれたくは無いので素直に出すことにした。
収納のスキルが貴重なのは知っているが、門兵さんに言われた通りに隠さずに行こうと思う。
「ありがとう、それじゃこっちの部屋で少し待ってて貰えるかな?
エリーさんに確認が取れたら手続きするから。
ジョージさんもありがとう。
でも余りお節介を焼かないほうが良いかもよ?
お嬢ちゃんが騒いでいたら貴方が捕まっていたかも知れないのだから。」
「ジョージさん、ギルドに連れて来て貰いありがとうございます。
お陰で迷わずに来れました。
この街に住みたいと思っているので、これからも宜しくお願いします。」
「イヤ、こっちこそ悪かったな。
何処の坊主かと思ったら嬢ちゃんだったとは、これからはちゃんとメシを食えよ。」
ジョージさんは片手を上げて依頼の報告をするために受付のほうに行ってしまった。
私が女の子と分からずに照れ臭かったのかも知れないが、ガリガリの6歳児などの性別はぱっと見なら気付かないと思うので仕方がないと思う。
それなのに気付いたキャシーさんが凄いと褒めたほうが良い気がする。
受付脇にある少し狭い談話室みたいな部屋で待たされる。
個別で依頼を受けるときにでも使う部屋なのかな?
其処で暫く待って居ると、キャシーさんが入って来た。
「待たせちゃって御免なさいね。
エリーさんからは確認が取れたからこれからの手続きをしましょう。
ギルド証は見せて貰ったけど、何か適当なギルド証ね?
嘘は無いとは思うけど、良くこんなギルド証を発行したと目を疑ったわ。」
「孤児院とギルドの職員で何かしらの繋がりがあると思います。
孤児の給料もギルド経由で孤児院に送られてましたから何らかのお金のやり取りがあったのだと思いますよ?」
「ありがとう、それは私のほうで調べるから貴女は気にしないで。
6歳と言うことだからギルド証を発行します。
前のはちょっと使えないからこの街のギルド証を作り直すわね。
分かっていることをこの紙に書いて欲しいのだけど字は書けるのかしら?
分からなかったら私が代筆するけど、どうする?」
「大丈夫です。
字は書けるので私が書きます。」
私はキャシーさんから記入用紙を受け取り必要事項を書いて行く。
スキルは大体のことは書いた。
メニューやユニークは伏せたが、ストレージは収納としてスキルに書いた。
後は隠密と隠蔽もバレているので書いておいた。
魔法は生活魔法と回復魔法を書いて最後に名前で悩んでいた。
来るまでに考えておいてと言われたがピンと来るものが無かったのだ。
私が悩んでいると後ろから
『セン』
と、囁かれた。
後ろを振り返っても誰も居ないが、空耳では無いと思った。
私は少し考えて用紙にセンと書いて提出した。
『セン』の響きが日本ぽかったから私に合うかなと思ったからだ。
私は小声で(ありがとう)と呟いたら何か心の奥で暖かいものを感じたような気がした。
キャシーさんが、用紙を確認して行く。
「その歳でこれだけスキルが有るのもおかしな感じね。
それだけ過酷だったのかしら、それなら御免なさいね。
悪気は無いのよ、ただこれからはギルドの仕事をして行くつもりなのかしら?
それとも街の中で仕事をするつもり?」
「私に出来る仕事があるならギルドで仕事がしたいと思います。
無ければ街の中での仕事を探すつもりですが、私の歳で雇ってくれる所がありますかね?」
「回復魔法が使えればギルド内で仕事が出来るわよ。
一応、試験の様なことは受けて貰うけど、冒険者を治療する為の治療士を募集してるから回復魔法が使えれば安全に稼げるわ。
この街には教会が無いからギルドで冒険者を雇うかエルフのかたに頼んで診療所を開いているの、街の人も利用するからそこそこ稼げる筈よ。
冒険者に頼むから依頼が入っていると誰もいない日なんかもあるの、そういう日はエルフのかたにお願いするのだけどセンちゃんが専属で入ってくれたらギルドとしては助かるかな。」
「それなら私にでも出来そうな仕事ですけど、試験って何をするんですか?
後、1日どれくらいのお金貰えますかね?」
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