第5話 聖樹?
私とエリーさんはそれなりの高さを今飛んで移動中だ。
私の魔力に余裕があるのが分かって高度を上げてスピードアップし辺境の街に向かっていた。
この分なら今日の夕方には街に着くだろうと言われて私は困惑した。
名前を考える暇が無いのでは?と思っている。
まぁ、暫くはこのままだろうから考えておきますか。
エリーさんは魔法が上手いので回復魔法のことを色々聞いてみた。
鬼畜王国はアホ教国の言いなりになって居たので、回復魔法を使える人が極端に少なく教国が囲っているので学ぶことが出来なかった。
人族は最低1つの属性魔法が得意だが回復魔法専門は少ないらしい。
光属性や水属性にも回復魔法はあるので回復専門はレアだがハズレでもあると言える。
光にしろ水にしろ攻撃魔法も存在するのだから。
エルフは使おうと思えば全ての魔法が使えるので関係ないが、人族は生活魔法のほか1種類しか覚えられない人が多いのにそれが回復だと攻撃魔法は無くなってしまうのでハズレ扱いにされるようだ。
私にはスライムハンドに前世の記憶もあるので、攻撃手段は何とかなりそうだが、冒険者同士のパーティーは組みづらくなるかも知れない。
回復魔法は属性魔法とは種類が別物らしい。
どの属性の特長も無いので別枠になっているようだ。
私の感覚では再生何じゃないかと思っている、増える訳でも無いし時間を巻き戻している感じも無いからだ。
切り傷や火傷の後は治るのだが、欠損は生えて来ない。
なので私の左手も治せないが、切れた残りがあるのならくっ付けられるような気がしている。
その他にも魔法のことをエリーさんに聞いているうちに広大に広がる森が遠くのほうに見えて来た。
まだまだ遠く街は見えて来ないが、地平線の彼方まで続く森は壮大でもあるが恐怖の対象でもある。
冒険者の噂には聞いていたアレが魔の森なのだろう。
魔物が蔓延る魔境の森が見えて来たのだ。
「森が見えて来たわね。
あの森は人族には魔の森と呼ばれている森ね。
私達エルフにとっては恵みの森なのだけどもね。」
「魔物が蔓延る森が恵みの森なのですか?」
「魔物があの森にいるのは食べ物に困らないからよ?
その中で生きて行けない種族が平地に移っただけのことよ。
平地は便利なようだけど恵みは少ないわ、それを数と知恵で補っているのが人族なんだけど。
エルフから見たら弱い種族が森を出されただけのことよ?」
「確かに言われてみればそうですね。
私も森の恵みで生き残って来たようなものですから。」
「その割にはガリガリよね?
ちゃんと食べないと成長しないわよ。
スライムやゴブリンを倒せるのならウサギぐらいは捕まえられたんじゃ無いの?」
「捕まえようと思えば出来ましたけど、太って院長に目をつけられたくは無かったのでガリガリを維持してたんですよね。
これからは沢山食べて鍛えますよ。
体力が無いと冒険者も出来ませんから。」
「ヤッパリあそこの孤児院も悪いことしてたみたいね。
人族ってどうして同族にも酷いことが出来るのかしら?
エルフからしてみれば不思議でしょうがないわ。」
「どうしても他人と優劣を付けたがる種族ですから、仕方がないですね。
全ての人がそうでは無いと思いますが、自分より下が居ると思うと安心出来るからじゃ無いですかね?」
「その歳でよくまぁ、達観してるわね。
それが分かっているなら孤児院でも惨めな思いをしなくても良かったんじゃ無いの?」
「私の中では、孤児院で優遇されて貴族に売られるよりも、ひもじい思いをしても逃げ出すチャンスのほうが幸せでしたから。」
「それもそうね、腐った貴族になんか買われたら、それこそ生きていられないわね。」
そんな話をしていたら、段々と立派な街壁が見えて来た。
辺境の街にしては随分と立派な街壁である。
あのバカ男爵がこんな立派な壁を作るお金をよく出したものだと思ってしまう。
「街が見えて来たわね、この街は男爵の管轄だけど経営自体は街独自のものだから安心してもらって大丈夫よ。
街に入る前に私が上げた指輪をしていれば、すんなりと入れる筈だからしておいてね。
貴女なら無くても大丈夫そうだけどね。」
私はストレージから指輪を出して右手の人差し指に嵌めた。
少しブカブカだったが、不思議とサイズがピッタリとなった。
私が不思議に思っていると。
「指輪には自動調節の効果が付けてあるから成長しても使える筈よ。
でも良く聖樹の木片なんか見つけて来たわね?
魔法触媒としては最高の物なのよ、何処で見つけて来たの?」
「??、大工さんの廃材置き場から貰って来たんですけど、そんなに貴重な物なんですか?
私はてっきりトレントの素材か何かだと思っていたんですよね。
何で大工さんが聖樹の端材を持っていたのかは知りませんけど。」
「知らずに拾ったのなら運が良かったのね。
聖樹は魔の森でも奥の方まで行かないと生えていないし、エルフが見守っているから手に入れることは難しい筈よ。
たまに嵐とか魔物の被害で折れた枝何かが売りに出されることはあるけどね。
それでも王都のオークションで売りに出されるくらい人族にとっては貴重な物よ。」
へぇー、知らなかったが随分と貴重な物を拾ったようだ。
長く使うことによって魔力が馴染み自分専用の装備になるよとエリーさんに教えて貰った。
確かにストレージに入れて置いただけの指輪なのだが、私の魔力を帯びている。
魔剣擬きを出してみれば、此方は良く使っていたので更に魔力の通りが良くなっていた。
ストレージ内でも私の魔力を帯びるのだが、使い込んだほうが早く馴染むようだ。
これからはなるべく多く使って行こうと思うが、ギルドで他の冒険者に目を付けられたくは無いよね。
冒険者だっていい人ばかりでは無いからね。
「何を心配しているかは分からないけど、妖精の街では悪さは出来ないからね。
人から物も奪えないし、傷つけることも出来ないわ。
そもそもそんな人は街にすら入れないから気にすることも無いけど、貴女も其処は安心しなさい。」
私の頭には?が浮かんでいたが、エリーさんは大丈夫だからと頷いていた。
そんな中、私達は街の門の前まで来ていた。
門の前にはギャーギャーと騒ぐ商人を遠巻きに見ている門兵と、ヒソヒソと話す街の住人がいるが商人の相手をしている人はいない。
その遠巻きに見ている門兵の1人がエリーさんに気付き此方にやって来た。
「お帰りなさいエリーさん。
お疲れ様でしたが、どうしたのですかその子供は?」
「ご苦労様、この街はいつも通りで安心するわ。
この子は男爵の街で見つけたのよ、この街で過ごすことになると思うから宜しくね。
私が身元は保証するから大丈夫よ。
街には入れる筈だから通して上げて。」
「エリーさんが保証するなら大丈夫ですね。
ようこそ妖精の街へ、我々は街に入れる人は歓迎しますよ。」
と、意味深な言い方をする門兵にお辞儀をする私だが、エリーさんに通ってみなさいと背中を押された。
私は恐る恐る門兵の脇を通り抜け街壁の中に入る。
私が振り返りエリーさんを見ると、和やかに笑いながら、
「ようこそ妖精の街へ。」
と、言ってくれた。
私は妖精の街と聞いてエルフが治める街なのかと思っていたが、どうやら違うらしい。
魔力視を通して見ると、小さい魔力の塊が彼方此方と飛び回っている。
この街は本当に妖精が住んでいる街のようだ。
門兵さんの話によると、ギャーギャー騒いでいる商人は妖精の結界に阻まれて街に入れないようだ。
この街に入れない商人は、信用されないので街では商売出来ないのだがそれを知らない商人が騒いでいるだけの様だ。
この妖精のお陰でこの街には基本善人しか入れない様で、安心して暮らせる街なんだと。
だからギルドに行っても正直に出来ることを話したほうが、仕事を斡旋して貰えるから隠し事はしないほうが良いと言われた。
ただ自分の切り札は教えなくても良いと、魔の森で他から来ている冒険者もいるので自衛の手段は確保しておけよと。
街は安全でも街から出ればあの商人みたいのはいるから気をつけろと注意して貰った。
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