第7話 疑問
「なんですか?」
少し先で足を止めた星川さんが、さっきと変わらない冷たい表情で振り返る。
「その、一緒に行こう。あの、えっと、今日はさ偶然、制服持ってきてたから。だから、このまま一緒に行こう」
そうだ。今日は何を思ってか、大学に制服を持ってきていたんだ。今考えれば、虫の知らせのようなものを感じ取ったのかもしれない。朝の自分を褒めてやりたい。
「いいんですか? 私と一緒で」
まだ険しい星川さんの顔。少し棘のある声も胸を締め付ける。
「あの、本当に星川さんにアパートの前で待ってもらうのは申し訳ないなって思って変に言い訳しちゃったけど、本当は最初から一緒に行きたかったんだ。あの、だから、その、なんというかごめんなさい」
正門の前。刺すような視線とか、冷ややかな声とか、もうそんなの気にならない。
「はぁ……」
「星川さん?」
突然のため息。怖くなって名前を呼ぶ。すると星川さんは、さっきまでの眩しい笑顔を俺に向けて
「そんな。本当に気にしなくてよかったのに。だけど、安心しました。先輩に嫌われてるわけじゃないってわかって」
安心した? 星川さんみたいな人が、どうして俺なんかの評価で安心するんだろう。疑問は浮かんだけど、そんなことを聞けるほどの強さは俺にはないから疑問は心の水にそっと沈めて
「それじゃあ行こうか」
そう言って、二人でバイト先に向かった。
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