第3話 至福のひととき
コンビニバイトの退屈な時間を埋めてくれる星川さん。レジに立っているだけで、商品を陳列しているだけで、時給を増やしたくなるくらいかわいい。本当に癒し以外の何物でもない。十分に一人くらいくらい来るお客さんも、俺と星川さんがレジに立っていたら俺の方が近かったとしても星川さんの方に並ぶ。まぁ異次元のかわいさなのだから当然だろう。接客中の笑顔を見てまた胸が苦しくなる。
あぁ、幸せだ。このかけがえのない幸福な時間をかみしめながら、星川さんの列の二番目に並んんでいるスーツ姿の爽やかな男性を呼ぶ。呼ばれた男性は、一度は聞こえないふりをしてもう一度呼んだときに、こちらを睨みつけながら重い足取りでこちらに歩いてきた。せっかくの楽しみを奪うような形になって申し訳ない。心からそう思いながら不愛想な男性に作った笑顔を浮かべる。
「ありがとうございました。またお越しくださいませ」
定型文を口にして時計に目をやる。針はちょうど六時を指している。ここからは帰宅ラッシュで客足がどっと増えてくる。ふぅと息を吐いて憂鬱な気持ちを外に逃がして、息を吸い込むのと同時に気合を入れる。
「北野先輩。頑張りましょうね」
「う、うん。頑張ろう」
突然の星川さんからの声掛け。毎週この時間に聞いているはずなのに、やっぱり慣れない。やはり彼女の笑顔がこんな自分に向けられているという現実を目の前にすると、流石に動揺を隠せない。凛とした麗しい表情がくしゃっと崩れて出来上がるすごく幼くて可愛らしい笑顔。この時間が永遠に続け、なんて願いつつもそんなの不可能だと心の中でツッコんで裏に入ってホッとスナックの準備に入った。
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