第2話 おはよう

 バイト先に到着する少し前。そこで俺は天使と遭遇した。想定していなかった事態におどおどしていると、彼女は表情を緩ませて

「おはようございます、北野先輩」

そうやって挨拶をしてくれた。まさに天使のような笑顔。この素敵な表情を見ただけで今日までの苦労が全て報われたような気がした。

「おはよう、星川さん、今日もよろしくね」

「はい。よろしくお願いします」

彼女の名前は星川和月ほしかわなつき。初対面の時に受けた印象は、ただただ美人だということ。すごく小さい顔。子猫みたいに澱みのないまあるい目。顔だけ見れば間違いなく可愛い系なのに、前髪をつくらずに分けているせいなのかすごくクールな印象を受けた。見た目の印象的に話しかけづらい感じがしたけど、実際はそんなことなくて、さっきみたいに明るい笑顔で挨拶してくれたり、気さくに話しかけてくれたりする。美しくて性格もすごく良い子。それが初めて会った日の終わりに抱いた印象。

 そんなラブコメのヒロインみたいな彼女に、俺は気づいたら恋をしていた。

「おはようございます」

「おう、おはよう。今日もよろしく」

「はい」

店長の伊藤さんに軽く挨拶をして星川さんが先に休憩室に向かう。着替えの関係で俺は少しの間、雑誌コーナーで時間を潰して星川さんが出てきたのを確認してから休憩室に入った。

「はぁ。今日もかわいいな」

思わず口にしてしまう程の美しさ。彼女と出逢ってから、何度この言葉を口にしたのだろうか。数えるのも馬鹿らしいけど、数えていても大きな数字になり過ぎて途中で数えるのが面倒になっているだろう。

「よし。今日も頑張るとするか」

ロッカーの扉を閉めて一言、自分自身に宣言して休憩室を出た。

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