第二十三篇 テーマ「どんでん返し」 ジャンル「現代ドラマ」

 私は悪い奴だ。

 そう自分で自分を認めていた。

 だから何も遊び半分で魅かれた誘いに断ることなどなかった。

 しかし、彼女が俺に積極的に声を掛けてきたのは違った。


 彼女の名前は美咲。同じ大学のサークルで知り合った。

 彼女は頭も良くて容姿も良かったが、最初は全くそんなことに興味がなかった。

 それが彼女が俺の前でフリークライミングをしているところを目撃してから変わった。


 美咲は縦走路を登るところを見た瞬間、女性とは思えないような力としなやかさに感動した。

 彼女が登り終わると、俺は無言で後を追うことに決めた。


 それからは誘うこともされるし、俺から彼女を誘うこともあった。

 美咲は俺のことをよくしてくれた。

 自分が誰にも必要とされていないと感じていた俺にとって、彼女はとても大切な存在だった。


しかし、美咲の友達から、彼女が詐欺師であることを知らされた。それまで彼女が稼いでいる金には疑問を持っていたが、大学の授業料や生活費を稼いでいるだけだと思っていた。


 しかしそれは私たちが思っていたものとは違っていた。

 彼女は実際には銀行の口座を不正に操作していた。

 美咲は本当に大切な人だったけれど、俺はしばらくの間、彼女から距離を置いた。


 その後、俺はダイビングインストラクターになり、マレーシアに移住した。

 それからしばらく彼女とは連絡を取り合っていなかった。

 しかし、半年前に彼女から手紙が届いた。


 手紙には、「あなたに話すべきことがあるので、マレーシアに来て欲しい。」と書かれていた。

 折り返しの切手も同封されていたので返事なしにはいられなかった。


 到着した空港で彼女に会った時、彼女は昔と変わらず美しかった。

 彼女の顔を見た瞬間、俺は時が止まったような気がした。

 しかし、美咲が語り始めた時、俺はざわめき始めた。


「銀行の口座を操作したことを後悔している。だからそのお金と共にもう一度リスタートしたいと思っていた。でも、ある取引がうまくいかなくて、金が必要になった。」


 美咲がどのような取引をしていたのか、俺は推測していた。

 でも、俺が聞こうとしても口を開かなかった。

 彼女が静かに私に語りかけた。


「でも、今、私は全てを終わらせた。私が独り立ちして稼いだお金で、あなたを呼びました」

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