44日目「調和級数が発散することの証明」

調和級数は次の様に定義される。

H(n)=Σ(k=1→n) 1/k

この時次の定理が成り立つ。


調和級数の発散

lim(n→∞) H(n)=∞

これをさまざまな方法で証明していく。

[証明(不等式)]

1≧1

1+1/2≧1+1/2

1+1/2+1/3+1/4>1+1/2+1/4+1/4=1+1/2+1/2

1+1/2+1/3+1/4+1/5+1/6+1/7+1/8

>1+1/2+1/2+1/8+1/8+1/8+1/8>1+1/2+1/2+1/2

すなわち、次の様な不等式が一般的に成り立つ。

H(2^n)≧1+ n/2


右辺はn→∞で発散するので、左辺も同様。

[証明(無限積)]

無限積について次の様な定理が成り立つ。


*無限積と無限級数の収束の同値性

非負な実数列a(k)に対して、

Π(k=1→n) (1+a(k))が収束することとΣ(k=1→n) a(k)が収束することは同値

[証明]

P(n)=Π(k=1→n) (1+a(k))、S(n)=Σ(k=1→n) a(k)として考える。次の不等式が成り立つ。


**テイラー展開的な不等式

e^x≧1+xが全ての実数xについて成り立つ

[証明]

f(x)=e^x -1-xとおいて、微分で増減を出す。f'(x)=e^x -1である。よって、x≧0では単調に増加する。x<0では単調に減少する。よって、f(x)の最小値はx=0のときであることがわかる。よって、f(0)を求めると、f(0)=0であるので、題意は示せた。**


この不等式を用いるとe^a(k)≧1+a(k)であるので、右辺と左辺でk=1→nまで積をとると、右辺はP(n)と一致し、左辺はe^S(n)と一致する。すなわち、e^S(n)≧P(n)が成り立つ。P(n)を展開すると、S(n)が式の中に現れ、数列の非負性により、P(n)≧S(n)が成り立つことがわかる。よって、次の様な不等式が結局成り立つ。

e^S(n)≧P(n)≧S(n)

ここで、P(n)とS(n)は単調増加するので、有界でさえあればそれぞれは収束する。

ここで、本題に入ろう。S(n)→sのとき、e^s≧P(n)より、P(n)もあるpという値に収束する。P(n)→pのとき、p≧S(n)よりS(n)もあるsという値に収束する。(単調収束定理より)

よって題意は示せた。*


ようやく準備が完了した。H(n)の項はすべて非負な実数列であるので定理が適用できて、I(n)=Π(k=1→n) {1+ 1/k}の収束とH(n)の収束は同値であることが言える。

I(n)=Π(k=1→n) {k+1/k}=n+1となる(項が次々と打ち消しあうため)のでI(n)は収束せず、H(n)も収束しないことがわかった。


[証明(積分)]

H(n)について次の様に不等式がたてられる。

1/n というものを下から積分で抑えたい。この時グラフの面積的に考えて次の様な不等式が成り立つ。

1/k≧∫(k→k+1) 1/x dx

最大値を用いてしっかりと証明をできるが省略する。

右辺と左辺をそれぞれk=1→nまで足し合わせて、

H(n)≧∫(1→n+1) 1/x dx

右辺はlog(n+1)となるのでn→∞では発散する。よって左辺も発散する。


この様に調和級数が発散することはさまざまな方法によって示すことができる。また、このさまざまな証明を一般化することでいくつかの定理を得ることもできる。例えば第一の証明から次の様な定理が一般化により導ける。


コーシーの凝集判定法

a(n)は非負であり、単調に減少する物とする。この時、

Σ(k=1→n) a(k)の収束性とΣ(k=0→n) 2^k a(2^k)の収束性は一致する


積分判定法

a(k)は非負であるとする。この時、単調減少な関数f:[1,∞)→[0,∞)が存在して、f(n)=a(n)であるとすれば、Σ(k=1→n) a(k)の収束性と∫(1→n) f(x) dxの収束性は一致する。


証明はどちらも単調性や非負性を用いることで可能である。







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