31日目「現在の地球総人口は80億人を突破。いつの間に......」

驚くべき事実として、現在の世界人口はとうに80億人を突破しているというものがある。kakuyomuに画像があげられないのが残念だが指数関数的に世界人口が増えているというのは、検索エンジンで「世界人口 グラフ」と調べれば視覚的に理解することができる。


今回のは世界の人口増加を関数で表す時に微分方程式を用いることができるということの紹介をする。


まず、人口の減少、増加は何が要因であるかを考えてみよう。今回はあるエリアAの人口について考察する。P(t)をt秒の時のAの人口(Population)、B(t)をt秒とそれ以前の時、Aで出生された人々の総数(Birth)、D(t)をt秒とそれ以前の時、Aで死亡した人々の総数(Death)、I(t)をt秒とそれ以前の時に他の地域からAに流入し(inflow)てきた人々の総数、O(t)をt秒とそれ以前の時にAから流出し(Outflow)た人々の総数とすると、P(t+dt)は次のように表せる。


P(t+dt)=P(t)+B(t+dt)-B(t)-D(t+dt)+D(t)+I(t+dt)-I(t)-O(t+dt)+O(t)


これは人口学的方程式と呼ばれており、人口学の基本方程式である。人口は離散的なものではあるが、連続的なものと考えて近似をする。

これが成り立ちそうであることは、人口の増減は死亡数、出生数、流出数、流入数のみで支配されていそうだという直感からわかる。


定義より、B(t)、D(t)、I(t)、O(t)は単調増加する。


ここで、B(t+dt)-B(t)-D(t+dt)+D(t)を自然増加、I(t+dt)-I(t)-O(t+dt)+O(t)を社会増加と呼ぶ。


エリアAが人口学的に閉じているというのは、エリアAから流入、流出する人間がいないことをさす。すなわち、I(t+dt)-I(t)=0、O(t+dt)-O(t)=0が成り立ち、閉じた地域の人口学的方程式は、


P(t+dt)=P(t)+B(t+dt)-B(t)-D(t+dt)+D(t)

と表せることがわかる。

これを変形して、


P(t+dt)-P(t)=B(t+dt)-B(t)-D(t+dt)+D(t)


dtを十分小さくとって、dtで両辺を割ると、

P'(t)=B'(t)-D'(t) (これを閉じた人口学的微分方程式と呼ぼう。)


つまり、B'(t)とD'(t)を求めることで、P'(t)を求められ、P(t)も積分することで求められる。


Aを世界とすると、Aは明らかに閉じている(宇宙人が人間に擬態して飛来しない限り)ので、この閉じた人口学的微分方程式を計算していくことになる。


ここで、B'(t)とD'(t)について次のような仮定(マルサスの仮定)を課す。


マルサスの仮定

出生数や死亡数の変化率B'(t)とD'(t)はP(t)に比例する。


つまりある定数b、dが存在して、


B'(t)=bP(t)


D'(t)=dP(t)


とかけることを仮定する。ここで、bを出生率、dを死亡率という。

bは非負定数、dは正定数である。このことは、b<0の時、B(t)は単調増加であることに反するということと、d=0のとき、D(t)が定数になってしまい矛盾し、d<0の時、D(t)の単調性に矛盾することから言える。


このことが正しそうであることを説明する。D(t)については、例えば、Aの人口が10人の時、t〜t+dtで死亡するのはほとんど0人に近い。しかし、Aの人口を100000000人にしてみるとどうだろうか。t〜t+dtで死亡するのは1人、2人、あるいはそれ以上になるという直感が働く。つまり、P(t)が大きくなるほど、D'(t)は大きくなる。


また、Aには突出して死にやすい人間はいない(夜見山中学でない限り)、すなわち、一人一人の死の確率はおおよそ等しいとできるので、P(t)に対するt〜t+dtでの死亡数の割合は等しいと言えるだろう。よって、P(t)に対するB'(t)の割合は等しいと言えて、B'(t)=bP(t)とかける。


上記と同様の理由から、D'(t)=dP(t)が成り立ちそうだと言える。


閉じた人口学的微分方程式から、P'(t)=(b-d)P(t)が言える。

ここで、b-dをマルサス係数と言って、mと置くことが多い。

m=b-dとすると、


P'(t)=mP(t) (マルサスの微分方程式)が導ける。


この微分方程式を解こう。この微分方程式はlog(f(x))の微分を思い出すと解ける。


P'(t)/P(t)=m とマルサスの微分方程式は同値であり、log(P(t))の微分がこの微分方程式の左辺と一致するので、0からt_0までの積分を考えることにより、


log(P(t_0))-log(P(0))=mt_0


が導けて、log(P(t_0))=mt_0 +log(P(0))とできる。


両辺にexp を合成すると、


P(t_0)=P(0)exp(mt_0)という解が導けて、微分方程式を解くことができた。


t_0からtに変数を変換すると、


P(t)=P(0)exp(mt) (マルサスの解)となる。つまり、人口はmが正であれば、指数関数的に増加し、m=0であればP(t)=P(0)となり停留、mが負であれば0に収束していくことがわかった。mが正でかなり大きい時、人口が極端に増加していくことを人口爆発と言って、これは現在のインドで発生している。死亡率と出生率の差が極端に異なる時には爆発的な人口増加か爆発的な人口減少が起こるのである。


ここまでで、マルサスのモデルを紹介した。ここからマルサスは食料不足の問題とこれを関連づけていて、その考えはダーウィンの進化論にも影響を与えたと言われているが、私は人口爆発における幾らかの問題には触れないでおこう。


また、人口増加に打ち止めがあるという仮定を置くことによって、ロジスティック方程式などの興味深い微分方程式を得ることができるが、それは後日にしよう。


結局、さまざまな仮定をすることで人口増加をモデル化し、微分方程式を用いることができた。これによって、人口増加が理想的な状況であれば指数関数的に変化することを解することができた。



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