30日目「完全数とメルセンヌ素数の関係式」

約数総和関数σ(n)を次のように定める。


σ(n)=(nの正の約数全てに渡る和)


ここで便利な記号を導入する。それは総積記号Πである


Π(k=1→n)a(k)=a(1)a(2)a(3)a(4)......a(n)


つまり、Σの積ヴァージョンである。


約数総和関数に戻ろう。

組み合わせで考えてやると、N=Π(k=1→n)p(k)^e(k) p(k)は素数で、e(k)は非負整数 というようにNを素因数分解した時σ(N)=1+p(1)+p(2)+......+p(n)+p(1)p(1)+.......p(n-1)p(n)+.......+Π(k=1→n)p(k)^e(k)

というように表現できて、(右辺)は(1+p(1)+p(1)^2+......+p(1)^e(1))(1+p(2)+......+p(2)^e(2))......(1+p(n)+......p(n)^e(n))と等しくなる。(展開すればわかる)よって、

σ(N)=Π(k=1→n)Σ(i=0→e(k))p(k)^i=Π(k=1→n){p(k)^(e(k)+1)-1}/(p-1)

が成り立つ。一つ目の等号は先の議論により、二つ目の等号は等比級数の和の公式による。

また、この約数総和関数の公式から、mとnが互いに素であればσ(mn)=σ(m)σ(n)が成り立つことが容易にわかる。


約数総和関数の計算方法がわかったところで、続いて完全数の定義に移る。


nが完全数であるとは、σ(n)=2nを満たすことをいう。


例を出してみよう。

n=6とすると、正の約数は1,2,3,6となり、全て足し合わせると12になるので6は完全数。


n=28とすると、正の約数は1,2,4,7,14,28となり、全て足し合わせると56になるので28は完全数。


ここで、完全数に関係なさそうな素数を定義する。


メルセンヌ素数


2^n -1が素数の時、これをメルセンヌ素数という。M(n)=2^n -1とする。


例えば、M(2)=3、M(3)=7......というような数である。


M(n)をメルセンヌ数と呼ぶことにすると、メルセンヌ数のリストは次のようになる。


M(1)=1

M(2)=3 Prime

M(3)=7 Prime

M(4)=15=3×5

M(5)=31 Prime

M(6)=63=3^2 ×7

M(7)=127 Prime

M(8)=255=3×5×17

M(9)=511=7×73

M(10)=1023=3×11×31

M(11)=2047=23×89

M(12)=3^2 ×5×7×13

ここからわかることとして、

・nが素数の時だけM(n)は素数になっているということ

・pを素数とすると、M(p-1)はpで割り切れること

・nが偶数であれば、M(n)は3で割れるということ


がある。証明をしていこう


メルセンヌ素数の指数必要条件

M(n)が素数であるにはnが素数である必要がある。


<証明>

対偶を示そう。n=PQ P,Q >1と分解できた時について考える。

2^PQ -1=(2^P)^Q -1=(2^P -1)L 2^P -1,L >1より、M(PQ)は素因数を2つ以上もち、合成数である。


メルセンヌ素数の因数についての定理



完全数のリスト

6 28 8128 33550336......


完全数をとりあえずは素因数分解する。乗法的関数の関係する数は素因数分解をすることで性質を探せる場合が多い。


6=2×3


28=2^2 × 7


8128=2^6 ×127


33550336=2^12 × 8191


完全数をPとおく。

このようにみていくと、どうやら今のところ、Pは素因数として全て2の冪乗を約数に持っており、2と異なる素因数は1つしかないことがわかる。つまりP=2^m × qというように表せているということがわかる。さらにみていくと、7=2^3 -1 127=2^7 -1から予想されるように、q=2^(m+1) -1であると予想することができる。


すなわち、q=2^(m+1) -1が素数であれば、2^m × qは完全数であることが予想できる。実際にこの予想は正しいことが示せる。


<証明>

qは命題中と同じように、n=2^m ×qとする。

σ(n)=σ(2^m ×q)=σ(2^m)σ(q)=(2^(m+1) -1)2^(m+1)=2n

となるので、nは完全数であることが示せた。


十分条件が成り立つことは示せた。ある条件下で必要条件が成り立つことを示す。


nが偶数で、完全数の時、n=2^(p-1) × (2^p -1) ただし2^p -1は素数 と表せる。


<証明>

σ(n)=2nである。nは偶数であるので、p≧2 n=2^(p-1) ×Q Qは2と互いに素 というように分解できる。

σ(n)=2×2^(p-1) ×Q=2^p ×Q (完全数の定義より)

σ(n)=σ(2^(p-1) ×Q)=σ(2^(p-1))σ(Q)=(2^p -1)σ(Q)

ここで、σ(Q)=Q+Q/(2^p -1)と表せる。

QとQ/(2^p -1)はQの約数で、p≧2より、Q >Q/(2^p -1)が示せる。

よって、σ(Q)はQの二つの約数の和で表せているので、Qは素数で Q/(2^p -1)=1。

ここから、n=2^(p-1) ×(2^p -1) ただし2^p -1は素数


つまり、偶数の完全数を見つけることはメルセンヌ素数を見つけることと同値なのである。


完全数については古来、紀元前からさまざまな研究がされてきた。しかし、完全数についてわかっていないことはいまだに数多く存在する。


例えば、完全数が無数に存在するか、奇数の完全数は存在するのかなどの問いや、完全数を拡張した概念についても未解決の問いが多く存在する。


完全数が無数に存在するかという問いがなぜ難しいのか、それはメルセンヌ素数の無限性がそもそも難しいものであるし、仮にメルセンヌ素数が有限であったとしても、奇数の完全数が無数に存在する場合があり得るからである。


奇数の完全数については幾らかの結果が得られており、それらはeffectiveな結果であることが多い。しかし、effectiveな上界があまりにも大きいため、実際に奇数の完全数が存在しないことを示すのは困難だと思われる。


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