22日目「ZFC公理を学んだけど、目的が達成できなかった話Mk-II」

今回は、先に挙げたZFC公理の解説をしたいと思う。しかし、解説ができない(未定義用語が難しい、理解しにくいもの)は後回しにして、わかりやすいものを解説していきたいと思う。


最初にZF公理系を紹介しておく。


・外延性公理

∀x∀y[∀z[z∈x⇄z∈y]→x=y]]

・空集合の公理

∃x∀y[y∉x]

・非順序対の公理

∀x∀y∃z∀w[w∈z⇄w=x∨w=y]

・和集合の公理

∀x∃y∀z[z∈y⇄∃w[z∈w∧w∈x]]

・冪集合の公理

∀x∃y∀z[z∈y⇄z⊆x]

・Zermeloの分出公理

xとt=(t_1,t_2……,t_n)を自由変項としてもつ任意の論理式φ(x,t)に対して、∀x∀t∃y∀z[z∈y⇄z∈x∧φ(z,t)]

・Fraenkelの置換公理

φ(x,y,t)が関数論理式であるとする。∀t[∀x∃y∀z[z∈y⇄∃w[w∈x∧φ(w,z,t)]]]

・無限公理

∃x[0∈x∧∀y[y∈x→y∪{y}∈x]]

・正則性公理

∀x[x≠0→∃y[y∈x∧y∩x=0]]


Cは、主張に写像や集合族などの概念を用いる必要があるため、後回しにする。また、Zermeloの分出公理、Fraenkelの置換公理は関数論理式、自由変項などの解説が必要であるため後回しにする。


それでは、解説をしていこう。


・外延性公理

∀x∀y[∀z[z∈x⇄z∈y]→x=y]]


これは、集合が等しいことをどう定義するかを示した公理だ。集合として等しいということを、含まれている元がすべて等しいとして定義している。

論理式解読

任意の集合x、yに対して、どんな集合zでもz∈x⇄z∈yとなれば、x=yと定義する。


・空集合の公理

∃x∀y[y∉x]


これは、空集合の存在を保証する公理だ。外延性公理より、空集合は一意に定まる。よって、これを∅や0とおく。

論理式解読

どんな集合yも元として含まないような集合xが存在する。


・非順序対の公理

∀x∀y∃z∀w[w∈z⇄w=x∨w=y]


xとyを集合として、xとyしか含まれないような集合zが存在することを主張している。

外延性公理より、このような集合は一意であるので、これを{x,y}とかく。{x,y}={y,x}である。

論理式解読

どんな集合x、yにもある集合zが存在して、w∈zであれば、z=xかz=yのどちらか一方が成り立つ。


・和集合の公理

∀x∃y∀z[z∈y⇄∃w[z∈w∧w∈x]]


この公理は、集合xの元の元を集めたものは集合であるという公理である。このとき、xの元の元を集めた集合は外延性公理より一意に定まるので、これを∪xとかく。

また、∪xをxの和集合という。

論理式解読

どんなxに対しても、あるyが存在して、どんなzに対しても、z∈y⇄あるw∈xが存在して、z∈wが成り立つ。


合併集合

非順序対の公理と和集合の公理より、合併集合が定義できる。

集合x、yに対して、∪{x,y}をxとyの合併集合といい、x∪yと表す。


・冪集合の公理

∀x∃y∀z[z∈y⇄z⊆x]


この公理は、どんな集合xに対してもその部分集合すべてを元として持ち、それ以外は元に含まない集合yの存在を保証するものである。このような集合は外延性公理より一意であるので、yをP(X)とかく。

論理式解読

任意の集合xに対して、ある集合yが存在して、どんなzに対しても、z∈y⇄z⊆xが成り立つ(すなわち、xのすべての部分集合のみを元として持つ集合yが存在する。)


・無限公理

∃x[0∈x∧∀y[y∈x→y∪{y}∈x]]


この公理は、今までのように集合から集合を作り出すようなものではなく、ある性質を持った集合の存在を保証する。その性質とは、


・xは0を含む


・y∈xならばy∪{y}∈x


の二つである。この公理によって、自然数集合の構成の大部分が達成される。

また、この公理を認めるというのは無限集合(有限集合でないもの)を認めることだ。

論理式解読

ある集合xが存在して、0∈xかつy∈xであれば、y∪{y}∈xが成り立つ。


・正則性公理

∀x[x≠0→∃y[y∈x∧y∩x=0]]

この公理は、集合に成り立っているべき性質を述べたものである。xが空でなければ、ある集合yが存在して、y∈xかつx∩y=0とできる。

x∩yは共通部分というもので、紹介を見送った公理から出てくる。今は、普通に共通部分としておいてよい。

論理式解読

どんな集合xに対しても、xが空でなければ、ある集合yが存在して、y∈xかつ、x∩y=0とできる。


これで10つあった公理のうち7つが解説し終わった。次の回には、残りの二つを解説した後に、写像の定義や直積の定義を解説しようと思う。







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