20日目「無限級数の定理を紹介したり、証明するよ(第一回)」

無限級数とは、Σ(k=0→n)a_nをnの数列と見なして、その極限をとったものである。例えばΣ(k=0→n) (-1)^k/(k+1)はnの数列と見なして極限をとると、ln2に収束する。つまり、Σ(k=0→∞) (-1)^k/k+1=ln2である。結局のところ、特殊な数列だと思って差し支えない。違うのは、収束することを示す判定法が複数存在していたり、積分と結びつけられるくらいである。(これが大きな違いであるが)

この日誌では、無限級数や収束判定法を複数紹介し、その証明もできる限りつけていきたいと思う。また、証明が記号の煩雑さ故、または難しいものは概略のみ紹介したいと思う。この中での数列は実数もしくは複素数とする。


単調収束定理

a_nは単調非減少とする。このとき、a_nは有界なら収束する。

証明

sup(a_n)を考えよ。(今回は省略)

収束判定法

・絶対収束すれば収束する

級数Σ(k=0→n)a_nが絶対収束するとはΣ(k=0→n)|a_n|が収束することを指す。また、一見当たり前のように思えるが絶対収束すれば収束する。


すなわち、絶対収束するということは、収束するよりも強い条件であるということだ。ただ、これだけでは真に強い条件かはわからない。幸運にも命題の逆の反例として、Σ(k=0→n) (-1)^k/k+1 は収束するが絶対収束はしないことがあげられる。

絶対収束するなら、収束することの証明

コーシー列を用いれば簡単に示せる。


ここで、コーシー列というのは、a_nに対して、|a_m-a_n|がm、nを任意に大きくとると任意に小さくできることをさす。数列がコーシー列であることと、数列が収束することは同値である。証明は、ボルツァーノ・ワイエルシュトラスの定理より導ける。

コーシー列を利用した判定法についてもう一つ。


収束の必要条件

lim(n→∞)Σ(k=0→n)a_nが収束したとする。このとき、lim(n→∞)a_n=0

証明

コーシー列のMをN+1ととったときを考えればよい。


・Comparison Test(CT)

簡単だが強力な判定方法である。他の判定法の証明で使われることもある重要な定理である。しかし、証明はとても簡単である。


CT

|a_n|≦|b_n|を満たす数列がΣ(k=0→n)|b_n|が収束するということを満たせば、Σ(k=0→n)|a_n|は収束する。

証明

Σ(k=0→n)|a_k|≦Σ(k=0→n)|b_k|より極限をとると、極限は順序同型写像なので、lim(n→∞)Σ(k=0→n)|a_k|は収束する。


・d'Alembert's Ratio Test(d'Alembert's Test、dRT)

級数の数列と違う点は、級数中の数列から、収束が判定できる場合があることである。その一つがこの判定法である。比較的簡単に運用することができることも利点であるし、証明もそこまで難しくない。


dRT

lim(n→∞)|a_(n+1)/a_n|<1であれば、Σ(k=0→n)|a_k|は収束する

lim(n→∞)|a_(n+1)/a_n|>1ならば、Σ(k=0→n)|a_k|は発散する

証明

収束する方の証明をする。lim(n→∞)|a_(n+1)/a_n|=αとおく。α≦1-2εとε>0をとる。nがあるN以上ならば、||a_(n+1)/a_n|-α|<εとできる。三角不等式を用いて、|a_(n+1)/a_n|<1-ε。|a_(n+1)|<(1-ε)|a_n|である。

n≧Nとする。Σ(k=0→n)|a_k|=Σ(k=0→N-1)|a_k|+Σ(k=N→n)|a_k|≦Σ(k=0→N-1)|a_k|+|a_N|Σ(k=N→n)(1-ε)^(k-N)=Σ(k=0→N-1)|a_k|+|a_N|Σ(k=0→n-N)(1-ε)^k=Σ(k=0→N-1)|a_k|+|a_N|1-(1-ε)^(n-N+1)/ε≦Σ(k=0→N-1)|a_k|+|a_N|/εよって、Σ(k=0→n)|a_k|の有界性が示せた。

単調収束定理より、この級数は収束する。

発散する方の証明をしよう

あるNが存在して、n≧Nのとき、||a_(n+1)/a_n|-α|<εとできる。εを1+2ε<αを満たすようにとると、α-|a_(n+1)/a_n|<εより、1+ε<α-ε<|a_(n+1)/a_n|、ここから、(1+ε)|a_n|<|a_(n+1)|が導けて、収束の必要条件の対偶より、これは収束しない。


・Cauchy's Root Test(Root Test、CRT)

dRTと同じように級数中の数列で級数の収束を判定することができる。この定理の適用範囲はdRTよりも真に大きいことが知られている(つまり、dRTで収束判定できる級数は、CRTで判定できて、CRTで判定できて、dRTで判定できない級数が存在する)


CRT

limsup(n→∞)(|a_n|)^(1/n)<1ならばΣ(k=0→n)|a_k|は収束し、limsup(n→∞)(|a_n|)^(1/n)>1ならば、Σ(k=0→n)|a_k|は発散する。

証明

収束することの証明をする。limsup(n→∞)(|a_n|)^(1/n)=αとする。あるNが存在して、|(|a_n|)^(1/n)-α|<εとできる。α<1-2εなるε>0が存在するので、そのεをとると、(|a_n|)^(1/n)<1-εとできる。両辺をn乗してやると、|a_n|<(1-ε)^nとできる。ここからは、dRTと同じように級数を変形させていくことで証明が完遂される。

発散する方の証明をする。1+2ε<αとなるε>0が存在する。よってあるNに対して、n≧Nならば、|(|a_n|)^(1/n)-α|<εが満たされることを利用すれば、(1+ε)^n<|a_n|とできる。よって収束の必要条件の対偶より、発散する。


・Abel's Test(AT)

二個の数列の積の級数はその2数列に条件を課すことで収束することが判定できる。この方法は二種類存在する。そのうちの一つが、このATである。


AT

λ_nは単調かつ有界、Σ(k=0→n)a_kは収束するとする。このとき、Σ(k=0→n)λ_n a_nは収束する。

証明

λを単調非減少としてもよい。理由は、単調非増加でもそこまで証明の手順は変わらないから。lim(n→∞)A_n=Aとして、収束列は融解であるので、|A_n|≦M。また、λ_nは単調収束定理より収束するので、lim(n→∞)λ_n=λ。ここで、アーベルの総和公式により、積の級数を和に変換する。A_n=Σ(k=0→n)a_kとおくと、

Σ(k=0→n)λ_n a_n

=A_nλ_n-Σ(k=0→n-1)A_k(λ_(k+1)-λ_k)

右辺第一項はAλに収束することがわかる。

Σ(k=0→n-1)|A_k(λ_(k+1)-λ_k)|

≦MΣ(k=0→n-1)λ_(k+1)-λ_k

≦M(λ_n-λ_0)

より右辺第二項は絶対収束する。つまり、右辺は収束する。よって、左辺は収束する。


・Dirichlet's Test(DT)

ATと同じような収束判定法がDTである。DTはATとは異なる条件により級数の収束性が判定できる。


DT

実数列λ_nは単調で、lim(n→∞)λ_n=0となり、Σ(k=0→n)a_kは有界であるとする。このとき、Σ(k=0→n)λ_n a_nは収束する。

証明

λ_nが単調非減少としてもよい。理由はATの時と同様。|A_n|≦Mとする。アーベルの総和公式により、Σ(k=0→n)λ_n a_n

=A_nλ_n-Σ(k=0→n-1)A_k(λ_(k+1)-λ_k)

と変形できる。右辺を評価していく。

まず、|A_n λ_n|≦M|λ_n|より、lim(n→∞)|A_n λ_n|=0

右辺の第二項は、

Σ(k=0→n-1)|A_k(λ_(k+1)-λ_k)|

≦MΣ(k=0→n-1)|λ_(k+1)-λ_k|

≦M(λ_n-λ_0)

≦-Mλ_0

と書ける。これは第二項が絶対収束することを意味する。つまり右辺は収束する。よって左辺は収束する。


判定法はまだまだある。次の回では、dRT、CRTよりも強力な判定法を紹介する。










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