6日目「数で構造は定まる」
群というある程度いい感じの演算が定まった集合がある。群はなんとその集合の元の数によって構造が類別されてしまうのだ。構造の類別をするためにいくつかの定理を証明したい。
前提として、p、qは素数であるとする。
ラグランジュの定理の系
元の数がpであるような群は必ずCpと同型である。
証明
ラグランジュの定理を命題中の群Gに適用してみる。すると、Gの部分群は自明なものしか存在しないことがわかる。ここで、単位元以外のGの元をとってきて、それをgとしてやると、gのべき乗をすべて集めたものは群を成す。それをHをすると、Hの元の数は1ではないことが簡単にわかる。よって、H=G。
ラグランジュの定理の証明はまたいつか行おうと思っている。(多分、フェルマーの小定理の証明の時に証明すると思う)ここで注目したいことは、元の数が素数であるような群は巡回群という、簡単な構造の群とのみ同型である(同型という言葉の意味ものちのち)ということである。先人たちが素数を考えたのは、大きな意義があるといえるだろう。
補題
AとBをGの正規部分群であるとする。また、A∩Bは自明群であるとする。このとき、∀a∈A,∀b∈Bについて、ab=baが成り立つ。
証明
Aは正規なので、b^-1ab∈A、よってa^-1b^-1ab∈A。Bも正規であるので、a^-1b^-1a∈B、よってa^-1b^-1ab∈B。よってa^-1b^-1ab∈A∩B={e}。つまり、a^-1b^-1ab=eであるので移項して、ab=ba
AとBの正規性に強く依存した証明である。やはり、正規性というのは相当に強い性質であることがわかる。
シローの定理の系
元の数がpq(p>q)であるような群を考える。このとき、pをqで割ったあまりが1でないならば、必ずCpqと同型である。
証明
命題中の群をGとする。Gにシローの定理を適用してやると、Gにはp-シロー群とq-シロー群が存在していうことがわかる。ここで、p-シロー群と、q-シロー群の個数について考察する。シローの定理より、p-シロー群の個数は1+λp個であり、1+λpはpqを割り切ることがわかる。整数論的な簡単な考察により、λ=0が導ける。よってGにはp-シロー群がただ一つのみ存在する。これをAとおく。また、q-シロー群の個数についても考えてみると、シローの定理を適用して定理の条件を用いると、q-シロー群はただ一つのみ存在することがわかる。これをBとおく。
上のことから、A,Bは極大なシロー部分群であるといえるので、シローの定理より
A,BはGの正規部分群。a∈A,b∈Bととる(a,bは単位元ではない)と、A,Bはそれぞれ、a,bによって生成される。ここからA∩Bは自明群であることがわかる。補題を適用するとab=baが示せたので、abの位数について考察すると、pqであることがわかるので、結局GはCpqと同型。
もういろいろとわからない人にとっては全くわからない単語が出てきてしまったので、群論についていつか書くことにする。
補題
元の数がp^2であるような群はアーベルである。
証明
そのような群をGとおく。C(G)がGと一致することを示せばよい。
Gはp-群であるので、その中心は自明ではない。C(G)の位数がpであると仮定すると、G-C(G)の元aがとれる。このとき、N(a)について考察するとこの元の数はpよりも大きいのでN(a)=G。つまり、a∈C(G)であるので、これは矛盾。よって、C(G)=G。
定理
元の数がp^2であるような群はCp^2かCp x Cpに同型である。
証明
命題中の群をGとおく。場合分けをして示す。
・位数がp^2の元が存在するとき
定義よりCp^2に同型
・位数がpの元が存在して、p^2の元は存在しないとき
その元をgとして、gにより生成される群をHとおく。G/Hを考えるとこれはラグランジュの定理より、元の数はp個。ラグランジュの定理の系よりG/Hは巡回群。つまりG/Hの元はh^i/Hと書ける。またHの元はg^jと表せるので、結局Gの元はすべて、h^ig^jと表せる。ここで、f:G → Cp x Cp をh^ig^j → (i,j) と構成するとこれは同型写像(よく数学書で言われるように演習問題とする)であるので同型が示せた。
このほかにも元の数が2pで表せる群の同型の種類もあぶり出せたりするが、それはまた次の機会に。
群論での私の一つの目標は、位数50までの群の分類である。よって、先に書いた定理たちによってわかる同型を記しておく。
|G|=1 → G≅{e}
|G|=2 → G≅C2
|G|=3 → G≅C3
|G|=4 → G≅C4∨G≅C2 x C2
|G|=5 → G≅C5
|G|=7 → G≅C7
|G|=9 → G≅C9∨G≅C3 x C3
|G|=11 → G≅C11
|G|=13 → G≅C13
|G|=15 → G≅C15
|G|=17 → G≅C17
|G|=19 → G≅C19
|G|=23 → G≅C23
|G|=25 → G≅C25∨G≅C5 x C5
|G|=29 → G≅C29
|G|=31 → G≅C31
|G|=33 → G≅C33
|G|=35 → G≅C35
|G|=37 → G≅C37
|G|=41 → G≅C41
|G|=43 → G≅C43
|G|=47 → G≅C47
|G|=49 → G≅C49∨G≅C7 x C7
結局のところ23個の位数の群を類別し終えた。残った奴らはpqの形でpをqで割ったあまりが1になってしまうもの、p^3、p^4、p^5p^2q、p^3q、pqr、p^2q^2、p^4qである。とくに、最初の形のものが多かったので、次回はその形のものを分類していきたいと思う。
参考資料
鈴木通夫「群論」
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