第52話 慌ただしい帰国
カタコトと音がする。
俺の周りには緊張した雰囲気を出しているカエサル隊の面々がいる。
かく言う俺も緊張している。
いつか来るとは思っていたが、まさかこんなに早いとは。
先日『死の大地』に発生したダンジョン及びスタンピード。
ダンジョンは『邪神のダンジョン』と思われるとカエサル王国の首脳陣は結論付けた。
理由は単純。
それもあってかカエサル王国の対応は早かった。
すぐに攻勢から防衛に切り替え魔物を国内に入れない方針に切り替えた。
運が良かったのは邪神の力を取り込んだ魔物が無効化スキル以外に特殊なスキルを保有していなかったことだろう。
そのようなこともあり俺達は馬車に乗り帰国していた。
カエサル王国側はまだ居て欲しそうだったがこればかりは仕方がない。
「邪神のダンジョンとは」
「カエサル王国は大丈夫でしょうか」
「心配ない、エリアエル。あれでもそれなりの武人が集まる国だ。そうそう落とされたりはしないだろう」
クラウディア隊長はそう言うが少し不安な様子が伺える。
「アルメス王国側も気になるな」
「通常の軍に加えて各国からかき集めた独立ダンジョン攻略部隊がいるんだ。時間は
「問題は無効化スキル持ちがいると知らず
「その通りだ。下手に攻勢に出て損害を出すほど馬鹿なことはない。スタンピードが起きた所は幸か不幸か死の大地。防衛に
聞くところによると死の大地と呼ばれる所には何も育たないらしい。加えて不干渉地域。
そう言うこともあって誰もその土地を利用しないとのこと。
農作物を育てることもそうだが、広大な不毛な土地が広がっているために商人も通らないとか。
もし何かしら利用していれば少なくない損害が出ていたと思うが、利用していない。
防衛に徹し、確実に仕留める。
これに限る。
「防衛の状況はどうなっているのでしょうか? 」
「わからない。だが恐らく防壁系統の魔法を展開し遠距離から
「
「こういう場合は堅実が一番だ。無駄に被害を広げることはない」
「意外ですね。隊長なら「もっと攻めないか!
「エリアエル。最近君が私の事をどう思っているのか本気で気になるから今度一緒に話そうか」
二人のやり取りに空気が少し
きちんとした服を着ているせいか、またもぞもぞしているシグナが隊長に聞いた。
「アルメス王国の
「さぁ? 」
「いえ「さぁ」って」
「そう言われても私はカエサル王国の正規軍の軍事練習に参加したことないからな。恐らく我々のような部隊は単独での行動になると思うが正直この先どのような布陣をとるのかわからない。何せ個性の集まりだからな。軍として機能させるよりも別働部隊として自由に動かした方が良い。だが一ついえることは、今回の防衛はカエサル王国やアルメス王国を含めたダンジョン都市国家総出で行われるだろう」
隊長がそう言い俺は首を傾げた。
死の大地から見て南側に位置し、隣接するアルメス王国とカエサル王国が連携するのは分かる。
だが何故ダンジョン都市国家総出で行われるんだ?
「不思議、と言う顔をしているな。アダマ君」
「ええ。こう言っては何ですが隣接していない他の国にとっては関係のない事のように思えて……」
「そうか。しかし答えは簡単だ。アダマ君。ダンジョン都市国家はその名の通り国土面積が狭いのだ。もしアルメス王国やカエサル王国が落ちたらすぐ次は自分の国になる。加勢しない理由はないだろう」
確かにそうだな。
納得した俺は隊長の説明を聞きながらアルメス王国に向かい、入った。
★
死の大地でダンジョンスタンピードが起こっているのを国の人々は知っているようだ。
アルメス王国に入ると騒がしくなった。
人の様子を見ると様々だ。
荷物を纏めて国外へ逃げようとする者はもちろんの事、逆に武器を持ち王都へ向かっている人もいる。
「恐らく緊急で募集をかけたのだろう」
「……そのまま前線に立たせて大丈夫なのですか? 連携とか」
「無理だろうな。だからスタンピードで起こる他の魔物達の恐慌連鎖反応の対処を任されるだろう」
「恐慌連鎖反応? 」
聞き覚えの無い言葉に首を傾げる。
すると隊長が俺に教えた。
「スタンピードは様々要因によって引き起こされる。今回のような事例は特殊だが、例えば魔物達の生存を脅かす強力な魔物が発生したとかな。しかし全てのスタンピードに共通するのは、スタンピードを引き起こした魔物以外の魔物もパニック状態になり、まるで連動するかのようにスタンピードを引き起こすことだ」
「彼らはそれを抑えるために募集された、と? 」
「恐らくそうだろう。それほどまでに人手が足りていないということになるが……」
俺達は馬車を走らせる。
そして中央区に着いた。
馬車から覗く中央区はいつも以上に慌ただしい。
いつもならば商人達が行きかっているのだが殆どが軍人。
中には軍人が炊き出しを行っているのも目に入る。
ダンジョンスタンピードの影響で商人がこの場を離れた影響だろうか。
王城に着き馬車から降りる。
外に出ると軍服を着た人が多く行きかっていた。
そして彼らは俺達気付き足を止める。
「まさかタイト卿?! 」
「タイト卿が帰って来たぞ! 」
「
その一言で軍人が城内へ入っていく。
その様子を見ながらも他の馬車から出て来た文官達に
王城内も慌ただしい。
あまり入ったことはないが俺達の式典をした時よりも緊迫しているのは事実で。
俺のこの巨体は、やはり目立つようだ。
俺を見るなり動いている人が一度は立ち止まり、そして仕事を再開している。
「アダマ君。先を急ぐぞ」
隊長の言葉に大きく頷く。
彼女を先頭にし城内を行く。
すると一人の文官に止められた。
「カエサル隊の方々ですね? 」
「そうだが
「こちらへ。カエサル隊の方々が帰って来たということで現在陛下は仕事を終わらせ準備中でございますので」
クラウディア隊長がそれを聞き頷く。
そして俺達は待機室へ案内された。
———
後書き
こここまで読んでいただきありがとうございます!!!
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