第46話 試練の塔 再び 2
試練の塔十一階層。
この階層も草原であった。しかしながらこれまでの階層とは
「早速魔物の気配だ」
シグナがそう言い全員臨戦態勢をとる。
少しすると近くない木と木をジャンプしながらやって来る
「ハングリー・エイプ? 」
隊長がそう言うが聞いたことのない魔物だ。
ハングリー・エイプが木になる実を一つ
「どんな魔物ですか? 」
「その名の通り常に腹を空かせている魔物だよ、アダマ君」
「加えて雑食だ、アダマ」
「つまりだな。人も喰らう、と言うことだ」
そう聞きすぐに拳を構える。
するとキキっと鳴き声を上げて食べ終わった果物を放り投げた。
「だが草原にいるような魔物ではないんだが」
「そこはダンジョンだから、と言うことで無理やり納得するしかないだろう。クラウディア」
ライナーがそう言うと前を向く隊長。
そしてハングリー・エイプが凶悪そうな顔をしてこちらにジャンプしてきた。
ライナーがそれを危なげなく
が器用にのり空中に逃げた。
「逃がさん! 」
隊長が
しかし空歩を使ってさらに逃げるハングリー・エイプ。
だがそれも意味なし。
「キキッ?! 」
隊長の
巻き付かれ逃れようともがくがそれも一瞬。鞭から数え切れないほどの長い棘が出て、絶命させた。
何と言うか、毎回思うが魔物が
「……クラウディア。お前また強くなってないか? 」
「兄上は話を聞いてなかったのですか? 我々は試練を受けたのですよ。強くならないはずがないでしょう」
「そうは言うがな」
ハングリー・エイプの落下地点まで歩き魔石を採る。
そして俺達は更に進んだ。
それが出現したのは十二階層だった。
「? 」
いつものようにライナーが魔物に拳を突き立てる。
しかし効いた様子はなくライナーがカウンターを喰らう。
だが俺の防御範囲にいるためダメージは喰らわない。
「任せてください」
ライナーが驚く中シグナが魔物を切り裂き戦闘が終わる。
「……こいつはそんなに強い魔物じゃなかったはずだが」
「隊長。これは」
「ああアダマ君が思っていることは正しいと思う」
隊長は魔物の残骸を見ながらそう呟いた。
邪神の力を取り込んだ魔物。
恐らくさっきの魔物はそれだろう。
「何故こんなところに」
「それを言うのならばアルメス王国東区ダンジョンも「何故」だろう」
隊長にそう言われると確かに今更感があるな。
しかしこんなに突拍子もなく出るものだろうか。
嫌な予感がする。
「しかしシグナも神壁とやらを破れるようになったのだな」
「これでも試練を受けたんだぜ? 当然だ」
「わたしだってできますよ! 今からその魔法をお見せしましょうか? 」
「「「やらんでいい! 」」」
俺達が言うとエリアエルは不満げにしょんぼりした。
彼女がここで魔法を使うと
少し不満げな顔で見上げて来るエリアエルをスルーしながら足を進める。
「この先無効化スキルを保有した魔物がいると考えて行動した方が良さそうですね」
「アダマ君の言う通りだな。兄上」
「分かっている。今回は引き下がろう」
後方にいるように念押ししたのにもかかわらず前に出ていたライナー。
しかし今回ばかりは引き下がってくれた。
得体の知れないスキルを保有している魔物の事もあるだろうが、この先は自分が足を引っ張るのではないかと考えたのかもしれない。
見極めの
「しかし話を統合すると、無効化スキルはその『神壁』とか言う厄介なものから来ているように思うのだが……どうだね? 」
「俺もそう思います。邪神の力を取り込んだ魔物がそれを張っているのかも、ですね」
「流石に力自体は一部。かなり弱いものと思いますが」
「少なくともスキルが進化する前の隊長の攻撃を無効化するくらいには強力、ということだな」
「私を引き合いに出されると複雑な気分になるが……その通りだな」
「クラウディアの攻撃も無効化されていたのか? 」
俺達の話にライナーが食いつく。
苦々しい顔でライナーを見るが彼は気にしない。
少し考える素振りを見せて両手を上げる。
「ならば俺に出来ることはないな。精々邪魔にならないように見守るくらいのようだ」
今の話で完全に
クラウディア隊長の攻撃が無効化されると知っての事だろう。
強いのは知っていたが、クラウディア隊長の力を再認した。
「無効化スキルに力の上下があるのかはわからない。しかしあるのとないのとでは絶対的な力の差があるのは事実だ」
「無効化スキルが神壁由来のものとなると邪神の強さが反映されているのか、それとも壁の厚さがそのスキルの強さを表しているのか」
「最悪上位スキルがある可能性も考えなければならないな」
「するとわたし達の力で破れるのでしょうか……」
「不安になるのは仕方ないが今の所情報不足。心構えをしておくのは良いが余計に心配する必要もないだろう」
隊長達が考察している。
無効化スキルの上位、か。もしそれがあるのならば確かに厄介だ。
しかし俺は大丈夫だろうと考えている。
何故ならば、恐らくそれを見越して『ロキ』達は俺達に試練を課したのではないかと思うからだ。
なら悲観的になる必要はない。
「しかし何か特徴のようなものがあればいいのですが」
「見た目も通常種と変わらないからな」
「発生する場所も様々。どこに現れるのかわからないというのが恐ろしいですね」
「案外邪神教団がいる所に現れるのかもしれないな」
シグナの言葉に「確かに」と思う。
だがそれだとここに邪神教団がいるということになってしまう。
「流石にそれはないだろう。それだと邪神教団がカエサル王国の軍を
「それにもし軍の目を
クラウディア隊長とライナーが否定的な意見を言うが、シグナは気にせず「予想だ」とだけ言う。
そのような話をしつつ通常種とスキル持ちを倒しながら俺達は十三階層に上がった。
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