第44話 女王の想い
「もう踏破したのですか?! 」
王族のみが使う
「母上。これが何よりの証拠です」
そう言いクラウディア隊長は剣と鞭を取り出した。
普通女王がいる所で持ちだすものじゃないが、証拠としては十分だ。
隊長はよく取り上げられなかったな。
そう思っていると女王が剣と鞭を手に取った。
そして何やら確認のようなことをしている。
「……朝クラウディア達が塔に入っている事は確認しています。この剣と鞭の質を考えても踏破したと考えるのが妥当だと思います。しかし、早すぎます。一体どんな
首を傾げるグローリア女王にダンジョンであったことを話す隊長。
別に隠すほどのものでもないからな。
そのまま嘘偽りなく話すのが一番だろう。
「神々の試練、ですか」
が
気持ちは分かる。
俺も何も知らない状態でその話を聞けば同じ表情をしていただろう。
しかし女王陛下は少し違ったようで、すぐに
そして少し顔を上げてクラウディア隊長に向いた。
「その試練は何度もできるのですか? 」
「無理だろう。何せ私のスキルが覚醒した所でその自称神とやらは脱出したのだから」
「それは残念です」
「まさかとは思いますが、その神々の試練をカエサル王国の軍にやらせるつもりだったのですか? 」
「強くなれるのならば最適だと思いませんか? 」
「強くなれれば、ですね。普通の兵ならば受けるだけでも再起不能になるでしょう」
「どの道無理と言うことですか」
残念そうに言うグローリア女王陛下。
知らない所で命拾いをしたカエサル王国の兵達。
指示を出す方は良いかもしれないが、受ける側からすれば迷惑この上ない試練だな。
女王陛下は少し落ち着いて俺達の方を向く。
「その連鎖式の転移罠は今後も発生する可能性は? 」
「アダマ君」
「ハッ! 無いと思われます」
「それは何故? 」
「まずあの罠自体が自称神『ロキ』の手によることである可能性が高いから。そしてダンジョンコアを
それを聞き満足そうに女王は頷いた。
俺は続ける。
「尚、ダンジョンコア掌握に伴って各階層に帰還用転移魔法陣を増やしました。これで塔内の活動が簡便になるでしょう」
「それは良きことです」
「しかしながら我々は正規ルートでダンジョンを攻略しておりません。よって再度塔に入る許可を頂ければと」
俺の言葉を聞いて頷き了解する女王。
俺達の提案を予想していたようだ。
更に女王が何か言おうとした瞬間扉が開いた。
「クラウディア! 帰って来たか! 」
いきなり入って来たライナー様を見て俺達はポカーンとする。
気を取り戻してチラリとクラウディア隊長やグローリア女王陛下を見ると、頭を抱えていた。
「ライナー。この部屋を使う者が私達しかいないからといって
「兄上。その
「身内しか使わないんだ。気にする必要がどこにある」
「ライナー。どのような部屋であってもノックをするのは当たり前ですよ」
ライナー様の後ろからオスケル様の声が聞こえてくる。
後ろから姿を現したオスケル様もどこか疲れた表情をしていた。
しかし彼らを立たせた状態ではいかないと女王も思ったのだろう。
すぐに指示を出し専用の椅子を持ってこさせた。
「で、塔はどうだったんだ? 」
何故かライナー様は俺に聞く。
クラウディア隊長に目線を送り聞くが「そのまま話しても構わない」返って来たのでそのまま話す。
すると大きな声で笑いながら言った。
「規格外とはこのことだな! 」
「……規格外と言う言葉で収まるのでしょうか? 疑いたくありませんが嘘をついていると考えた方が現実的ですが」
「嘘を言ってもバレるんだ。それをこのメンバーが、クラウディアが言うか? 」
「ですがライナー。今朝出発したばかりですよ? 」
オスケル様の意見は尤もだ。
そこにクラウディア隊長が言葉を付け加えた。
「その話もにわかに信じがたいですが、納得は出来ます。超常的存在によって試練を与えられ乗り越える。そして褒美として最上階へ行くというのならば。信じがたいですが」
二度言ったな。
納得は出来るが信じていない、と言ったところだろうか。
少し疑ってかかるオスケル様とは逆にライナー様は完全に信じきっている様子だ。
考え無しなのではなく、恐らく「バレる嘘をわざわざつかないだろう」と確信しているようだ。
「まだ疑ってるのか兄上。どの道確認のために再度登らなきゃならんのだ。その時確認すればいいだろうに」
「……そうは言いますが、現実的ではありません」
「時には説明のつかない事も起こるということだろう。母上! 」
「何ですか、ライナー」
「再度塔を登るんだろ? 」
「ええ。今その話をしていた所です」
「ならば俺が行こう! 」
「「「!!! 」」」
王子自ら塔を登る?!
いやクラウディア隊長の事があるから今更か。
「良いでしょう。この任をライナーに頼もうと考えていた所です」
「よし! 」
「ならば私も行きましょう」
「ダメです、オスケル」
「何故ですか、母上」
「貴方はこの国の第一王子。無暗に命の危険がある所へ向かわせるわけにはいきません」
「と言うことだ兄上。俺が確認してくるから安心しな」
「……次期国王はライナーに任せたいと常々思っていたのですが」
「国内の貴族がそれを許さないのはオスケル。貴方も知っているでしょう? 」
「ぐぅ……」
グローリア女王陛下の言葉にオスケル様が机に突っ
それを見ながら女王陛下はゆっくりと口を開いた。
「私としてはライナー、そしてクラウディアに塔へ登ってほしくありません」
それを聞き浮かれるライナー様がピタリと止まった。
「どこに我が子を危険に
「ああ。約束しよう」
「そうだな。ま、それに俺達にはアダマがいるし、大丈夫だろうよ」
良い笑顔でライナー様が俺を見る。
これは責任重大だな。
俺も笑顔で返すとグローリア女王陛下の声が聞こえて来た。
「
女王の、母としての想いが
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