第38話 クラウディア・カエサル
「ク、ク、ク、クラウディア王女殿下は強き軍人と
「そ、そ、そうだ! 我々のようにな! 」
作戦会議室から移動し途中何度も軍務卿に謝られながらも王城に隣接された訓練場に俺はいる。
軍務卿の話を統合すると彼らの暴走は、どうやら俺とクラウディア隊長の結婚に対する不満から来ているようだ。
王族の
しかし
その当事者である俺は今日知ったことを何故カエサル王国の軍人達が知っている?
まさかとは思うがクラウディア隊長はかなり前から仕込んでいたのか?
「武器をとれ! 」
「いや俺はこの体が武器だ」
「
剣を構えてそう言う軍人に拳を構える。俺の言葉を
チラリと彼らの後ろを見ると大勢の
少し遠くを見ているとクラウディア隊長の声が届く。
「アダマ君。その後ろにいる奴らも戦闘に参加したいようだ。殺さない程度に、しかし存分に戦い給え」
それを聞き後ろの軍人達がざわめいた。
クラウディア隊長の言葉に何やら
戦闘ではなく見学に来ているだけなのに、いきなり戦えと言われて動揺するのは分かる。
というよりも今この場に立っている俺も正直何でここに立っているのかわからない。
「ん? まさかと思うが私の結婚の邪魔を他人任せで出来るとでも思っていたのか? 」
「そ、そのようなことは……」
「ならば戦え! 戦ってその意見を通して見せよ!!! 」
クラウディア隊長が観客に向かって言うと気まずそうな声が返って来た。
あ~、なるほど。この物見見物の軍人達はこの二人に押し付けたわけか。
一人納得していると後ろの軍人達が武器を構えてやってくる。
「わりぃな。俺達にだって負けられない戦いがあるんだ」
「俺達はこれでも試練の塔で前線張ってんだ」
「ガタイが良いだけのデクに負けるはずがねぇ! 」
「では両者良いな? 始め!!! 」
クラウディア隊長の一言で軍人達が襲い掛かって来た。
一人相手に集団で襲い掛かるとは。
この人達にプライドはないのだろうか?
★
スキルを発動させて剣を握る。
「はぁ?! 」
次にかかって来る軍人から一歩引き勢い足払い。
勢いを殺せていない軍人がそのまま転がった。
「もらった!!! 」
その声と一緒に頭に何か感じる。
「ば、化け物……」
砕けていく
「全員でかかれ!
指揮官らしき男に近付き顔面を掴む。地面に叩きつけた後、バックステップで剣戟を
そして戦いは終わりに向かった。
「これでよかったんですか? 」
すると満足そうな顔で大きく頷いた。
「しかしこれほどまでに差があるとは。彼らも
「アダマ君が彼らよりも
「確かにそのようで」
軍務卿とクラウディア隊長の話声が聞こえてくる。
軍務卿は顔を引き
しかしこの口ぶりだと負けるのがわかっていたのだろうか?
ならば何故彼らを止めなかったのだろうか、気になる所である。
「彼らもこれで身の程というものを知ったでしょう」
「この私が
「彼らにも引けない理由があったのでしょう」
「理由? 」
「殿下は昔から人気がありましたので」
「はて。モテた記憶はないのだが」
「……彼らも浮かばれませんな」
軍務卿が溜息をつきながら倒れた部下達を
隊長は自覚がないようだが美人だ。
モテていても不思議ではない。だとすると彼らが俺達に突っかかってきたのもよくわかる。
……やり過ぎたか。
「まぁモテていたとしても私は弱い奴に興味はない! 」
死に
本当に、浮かばれない。
この人達を見ていると俺まで悲しくなってきた。
「しっかしすげぇな。あいつ」
「クラウディアが認めた男ですから普通でないのは分かっていましたが、我が国の精鋭達が形無しとは」
「弱いことはないんだが」
「ライナーも戦ってみますか? 」
「止めとくわ」
ライナー様が答えるとオスケル様は意外そうに目を見開いた。
「戦闘狂の貴方が戦うことを拒否するとか。明日は天変地異ですか? 」
「馬鹿を言うな。手を抜いてあれだぜ? 正直傷一つ付けれる気がしねぇ」
「確かにそうですが……」
「それにあれはなんだ。硬化系のスキルか? にしても頭を
「まさに難関ダンジョンである『死者のダンジョン』を踏破したメンバーの一人、と言うことですね」
「だな。今回は任せて大丈夫そうだ」
兄二人の会話を聞いて大いに満足そうな顔をするクラウディア隊長。
そして軍務卿が気絶している軍人達を叩き起こして退散させた。
俺は見学していたエリアエルやシグナと共に、クラウディア隊長に誘導される形で城内の泊まる部屋に向かった。
★
夕食も終わり自室でのんびりしている。
アルメス王国とはまた違う部屋の
明日から難関ダンジョンに挑むというのに、不自然に落ち着いている自分がいる。
逆にそれが俺を不安にさせる。
落ち着いているがゆえに何かありそうな気配がする。
まぁ気のせいだろうけど。
少し眠気が来たので寝ようとベットに横たわろうとしたらノックの音が聞こえて来た。
返事をするとクラウディア隊長のようだ。
「アダマ君。ちょっと良いかね? 」
「大丈夫ですよ」
俺がそう言うと隊長は真ん中にある椅子に座った。
俺の方を見ると少し口を開いたり閉じたりした後、思い切ったように俺に聞いて来た。
「迷惑だっただろうか? 」
「どれが、ですか? 」
「そこは「何が? 」じゃないのかね? その言い方だと私がいつも迷惑をかけているように聞こえるが」
自覚がないのって恐ろしい!!!
「はぁ。しかし、まぁそうだな。
それを聞き、ここ一番の出来事の事かと思い出す。
しかしこれは返事に困った。
「……せめて事前に、話をして欲しかったというのはありますね」
「その言い方だと結婚には前向きと
「まぁ俺もこの歳ですし。隊長のような美人と結婚できるのなら、むしろありがたいと思います。いつも気兼ねなく話せていますし特に迷惑ではありませんよ。あ、ドッキリはやめてほしいですが」
そう言うと隊長がぽかんとした。
少ししてクスクスと笑いながら俺を見る。
「君は本当に変わっているな」
「……それは
「さて、どうだろう」
そういいながら隊長は立つ。
そして俺に背を向けて手を振った。
「明日一日で塔を攻略するぞ。そして
「はい! 」
俺の返事を背に受けて、隊長は部屋を出て行った。
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