第34話 襲撃される村

 俺達は日をまたいでカエサル王国に入った。

 カエサル王国へ入るのに時間がかかったのは山を一つ越えなければならなかったからだ。

 またそこから村を中継しカエサル王国に向かったのだ。


「今思えばあっけなかったな」


 クラウディア隊長がそう言い全員が頷く。


 俺達は山を通りそして村へ向かった。

 山は山賊のたまり場のようなところで、通常山を通る貴族の馬車などいない。しかし国の上層部は「このメンバーなら大丈夫だろう」とでも考えたのだろう。

 山賊のたまり場に足を踏み入れた俺達は当然のごとく襲撃されたのだが、相手が姿を現した瞬間き者になった。

 そうした襲撃を数回り返し、山の魔物を撃退しながら進んだのだが、止まっては進んでを繰り返したため速度が落ちた。


 結果として一度国境付近にある村に泊まらせてもらいカエサル王国に入ったのだ。


「後一つ村を通れば南区に入る。そしてその向こうが中央区になるからもう少しだな」


 隊長も疲れているようだ。声にいつもの覇気はきがない。周りを見ると皆同じようで顔に疲れが見えた。

 しかしそれもわかるというもの。

 カエサル王国に入り幾つか小さな村を経由けいゆし南区に向かっているのだが、この長旅も少し疲れて来た。


 俺はあまり馬車に乗ったことはない。

 精々冒険者として依頼をこなすために移動のため使っていたくらいだ。

 なので国を跨ぐ長距離移動なんてしたことがない。

 体力は大丈夫なのだが代わり映えしない馬車の中にずっといるというのは中々に疲れる。


 加えて隊長からすれば元より乗り気ではない帰郷ききょうだ。

 俺達よりも気分は落ちているだろう。


 そう思っていた時シグナが何かに気が付いた。


「!!! この先で戦闘が行われている! 」


 その言葉で全員の顔から疲れが吹き飛んだ。


 隊長が言った通りシグナの索敵さくてき範囲は非常に広い。

 それこそ斥候せっこういらずと思えるほどに。


「どの辺だ? 」

「ここから少し先に行った所だ」


 隊長がそれを聞き走るかごの扉をとばし開けて外の出た。

 御者ぎょしゃに話に行ったようだ。

 早い判断だがいつも豪快ごうかいに外に出るな、と思いながらも俺はスキルを発動させて馬車三台を防御範囲に入れる。

 エリアエルも魔杖を手に取るが俺とシグナがそれを止めた。


「……私が一撃で仕留めていいと思うのですが」

「「エリアエルがやると村ごと吹き飛ぶ」」


 俺達が言うと不満そうな顔をして杖を戻すエリアエル。

 馬車に詰め込まれてストレスがまっているのは分かるが、エリアエルがやるとどちらが襲撃者かわからなくなってしまう。

 ここがぐっと我慢してもらおう。


いそがせた」


 隊長が籠に入ってきていう。

 扉を閉めた瞬間馬車が加速した。


 ★


 着くと馬車から飛び降りて村へ入る。


「私が行く」


 金属音が遠くからする中シグナが真っ先に走って行った。

 俺も続いて竜鱗ドラゴンスケイルを発動させ、周りに大きな竜鱗りゅうりんを出現させた。

 これは一つ一つが自動で動く強固な竜鱗。自分の意志で動かすことができ、またその動かせる範囲はとても広い。

 だがこれだけだともしやぶられる可能性がある。

 よって別のスキルを同時に発動させて防御を確実なものとする。


絶対守護領域イージス金剛鉄鋼の神体アダマンタイト


 俺を体を中心に絶対守護領域イージスが展開される。

 竜鱗ドラゴンスケイルは俺の体の一部と認識されるようで、鱗は絶対守護領域イージスを展開する。

 さらに金剛鉄鋼の神体アダマンタイトの効果が付与され傷のつかない堅牢けんろうな守護領域が出来上がった。

 それに指示を出し村全体をおおう。


「な、なんだ?! 」

うろこ? 」

「上にも鱗が浮いているぞ! 」


 賊とおぼしき人達の声が聞こえてくる。

 早く行かないとっ!

 展開を確認した俺はシグナの方へ走って行く。


「きゃぁぁぁぁ! 」

「抵抗するな。抵抗したらただじゃ済まねぇ! 」

「止めてぇ! 」

「くそっ! こいつ……って近寄れねぇ?! 」

「なんだこれは! 鱗が邪魔をして! 」


 竜鱗ドラゴンスケイルが正常に動いているようだ。

 安心して更に進む。

 すると賊達の困惑の声が聞こえて来た。


「お頭がやられ……」

「おい何が?! 」

「また一人やられたっ! なにが起こってい……」


 聞こえてくる声が止まった。

 シグナがいるところに着くと無残に首を落とされた賊達が転がっていた。


「シグナ」

「おお、アダマか。これで終わりだ」

「くそっ、こんなはずじゃぁ」

「死ね」


 彼女が最後の一人を手にかけようとした瞬間その男は一本の短剣を脚に刺した。

 その光景に驚きながらも首を落とそうとするシグナ。

 しかし賊の男の様子が変わる。


「うがががが……」


 バキ、バキバキと言う音を立てながら賊がちゅうに浮く。

 その間にクラウディア隊長とエリアエルが到着した。


「何だあれは? 」

「前に出て来た魔人に似ていますが」

「いやもっと邪悪なものに感じるぞ」


 賊だったものは体から黒いもや噴出ふんしゅつしていた。

 そして背中から三対の腕を生やしてこちらを見る。


「Grurururu……」


 その様子を見て俺達は構える。

 カイトの時とは全く違う感じを受けるな。

 どちらかと言うと、もっと魔物よりな雰囲気を受ける。

 しかし、関係ない。


「一撃で仕留める! 」


 すぐに懐へ入り腹に一撃を入れる。


「Gag……a……」


 体に風穴を開けたそれが膝をつき、そしてはいになるかのように消えていった。


 ★


「……シグナ。この村を助けてくれたのは純粋に嬉しいのだが一つ良いだろうか? 」


 クラウディア隊長が少し真面目な顔をしてシグナにいう。

 真顔で見られたシグナはサッと顔をらして気まずそうにする。

 しかし隊長の言葉は止まってくれない。


「せめて一人残してくれたら嬉しかったのだが」

「そ、それは仕方ないっ。きょうが乗った……じゃなくて村人が危険にさらされていたんだから」

「確かにそうだが……、いやそうだな。礼を言おう」


 クラウディア隊長が肩を叩いてニコリを笑顔を作ってシグナにいう。


 もしかしたら襲ってきた賊が組織的なものかもしれない。そう考えるとクラウディア隊長の言いたいことはよくわかる。

 しかしやり過ぎた感はあるがシグナの行動はめられるべきだ。


 そう思いながらもこちらをおびえて見てくる村人達の方を俺達が向いた。


「さて諸君しょくん。私はカエサル王国第一王女『クラウディア・カエサル』である。訳あってアルメス王国からの帰国中諸君らの村が襲撃されている所に出くわしたのだが、状況を説明してほしい」

「わ、私がこの村の村長です。私の家で説明を……」


 そう言い出て来たのは初老に入った一人の男性だった。


———

 後書き


 こここまで読んでいただきありがとうございます!!!


 面白く感じていただければ、是非とも「フォロー」や目次下部にある「★評価」をぽちっとよろしくお願いします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る