第33話 一方その頃邪神教団はと言うと
「
「しかしドク。これも邪神様へ
白衣を着た男が不満げな顔をし黒い法衣を着た男性の言葉を止める。
彼は邪神教団の一員のドク。
「確かに試練の塔は隠れるのに都合は良いが、この広さをどうにかして欲しいな。その内このダンジョン内部を
一人考え呟きながら先に進む。
ここは試練の塔十三階層の平野エリア。
彼らは先に見える大きな白い建物に向かって足を進めた。
★
「ドク。次の実験なのですが……」
「次はダンジョンだ」
それを聞き男は少し意外そうな顔をする。
それを見て少しムッとするも事情を説明した。
「イビルガルドの奴らが進めろとうるさいんだよ」
「それで」
「非常に不本意だが」
そう言いながらドクは建物の中を歩く。
白い建物の中は外よりも暗い。
魔法の光で照らされているとはいえわざと暗くしたかのような暗さだ。
ドク達が進んでいると一つの部屋に
鍵を開け中に入ると暗闇が彼らを襲う。
同時に中から悲鳴や泣き声、叫び声がドク達の耳に入るが気にせず進む。
ドク達は多くの
鉄格子の向こうには鉄格子をガシャン、ガシャンと揺らしてドク達に叫ぶ者や肩を落として何も言わない者、死んでいるかのように横になり顔には生気が見られない者など様々な人がいた。
しかしドクはそれらを気にせず先に進む。
そして一つの部屋に辿り着いた。
「! これはこれはドクター・フォーシャ。お帰りで」
「あぁ。吾輩がいなかった間、何もなかったか? 」
「それがドクター・フォーシャ! 聞いてください! 」
「どうした? 君が慌てるということは何か重大なことでもあったのか? 」
ドクことドクター・フォーシャが研究員の反応に興味を示す。
今まで他の教団員との温度差が激しいが後ろにいる男達がそれを気にしている様子はない。
彼らにとってこれも慣れたこと。
ドクター・フォーシャは様々な分野で優秀だが、研究のこと以外に
「それがドク。ドクが行っていたダンジョンの研究! 進展がありましたよ! 」
「あれか? 吾輩にとってあれは
「ええ! しかし流石ドクター・フォーシャでございます! 」
研究者の言葉に喜ぶドク。
前の会合でダンジョンの成果を盾にメアリ達に詰め寄ったのをすでに忘れているようだ。
「ドクター・フォーシャの指示通り実験体に二週間ほど食事を与えないとダンジョンにゴブリンが発生しました! 」
「やはりそうか。これでダンジョン解明に一歩進んだということだな」
ドクは研究員に任せていた結果に喜びながらも大きく頷いた。
ドクター・フォーシャの専門は生物系学問で特に人について研究をしている。
今回はその観点から「何故ダンジョンにて魔物は発生するのか」というテーマを暇つぶしに研究していた。
ドクとてダンジョンコアを
しかしながら魔物の発生自体を制御できるわけではない。
そこで生まれたのがこのテーマだ。
研究結果は良好。
彼の予想通りに人に食事を与えないとゴブリンが発生した。
「しかしドクター・フォーシャ。私もサブテーマとして
「簡単なことだよ。もしこのダンジョンと言う存在が人の欲望を表しているのではないのかと考えただけだ」
それを聞き研究員は理解するが、まだ少しピンと来ていない様子。
その顔を見てドクはテンポ早く彼に言う。
「ダンジョンの外でも中でもゴブリンの行動原理は何だと思う? そもそも何故ゴブリンといった弱小魔物が人を襲う? 」
「襲わないといけない理由があるから、でしょうか」
「その通り。ゴブリンという魔物は非常にわかりやすい。奴らは他の魔物よりも
「
「そう! 飢えだ。もっと言うのなら飢餓感。食欲に性欲。彼らは弱小故に、魔物ならば強く出るはずの戦闘欲よりもそれらが前に出る。よって私は仮説を立てた。「人の欲が魔物を発生させているのではないか」、とね」
ニヤリと研究員を見上げて締めくくる。
研究員はそれに感動し彼を
感動も
ドクに見せると彼は腰を降ろしてパラパラ
「ダンジョンの魔物を外に出すことも成功。人為的に魔物を増やすことにも成功。あとは吾輩の
そう言いながらもドクは資料をパラパラ捲る。
今日もこの研究所から悲鳴は止まない。
★
所変わってカエサル王国王城女王の
そこでは大量の資料が置いてある机で一人の女性が書類に目を通していた。黒い瞳で資料を読む彼女は並行して帰って来る娘に考えを寄せていた。そしてそれを楽しみにし
長く黒い髪が書類を
彼女が次の書類に目を移そうとした時激しいノックの音が部屋に響く。
その荒々しいノックを気にせずに返事をすると一人の文官が入って来た。
「グローリア女王陛下! 指名手配犯『カウツ・フォーシャ』が確認されました! 」
「なんだと!!! 」
それを聞き驚き立ち上がる。
カウツ・フォーシャ。彼は邪神教団で『ドク』もしくは『ドクター・フォーシャ』と呼ばれている人物である。
この国の元研究員で元
ドクは元々この国の優秀な研究者だった。
しかしながらその危険
だが邪神教団の手によって彼は処刑寸前で逃がされた。
そのこともあって女王グローリアにとって
今まで発見すらできなかった彼を見つけることができ少し嬉しく思うも一瞬。
(このタイミングで、ですか)
と思い少し表情を暗くする。
そしてグローリアはすぐに会議を開いて対策を
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