第21話 村の悩みを解決する

 出撃命令が出された俺達は下調べをして準備をする。

 道具と食料を手に持って軍用の馬車に乗った。

 そして目的地である村へと向かったのであった。


「おおお。嘆願たんがん書を出して時間があまり経っていないというのに早速来ていただけるとは。ありがたや、ありがたや~」


 村長に出迎えられた俺達は一先ず家に上がらせてもらった。

 いや避難したというべきか。

 ついて早々村人に囲まれ質問攻めにあったのだ。

 それを村長が一喝いっかつし本題に入るためまねかれたのだが終始しゅうしこの状態。

 さてどうしたものかと考えていると奥さんらしき人が入って来た。


「お爺さん。本題に入らないと」

「おおぉ。そうじゃった、そうじゃった」


 ナイスだ、奥さん。

 早く来たのにこの状態じゃ意味がないからな。

 そう思っていると村長は俺達の方を見た。

 そしてコホンと軽く咳払いをして説明を始めた。


「この村は魔物に襲われない、比較的安全な村じゃったのじゃがつい最近になって大量の魔物が襲ってくるようになったのじゃ」


 そう言い村長が説明を始める。


 最近の事。

 緑の魔物が襲ってきた。今まで魔物被害を受けたことがないこの村の人達は慌てたが、旅でやって来た人がそれを撃退。

 どうしていいかわからない村人は旅人に冒険者ギルドへ依頼をすることを提案された。それに従って冒険者ギルドに依頼したが、一時しのぎにしかならなかったとの事。


「やはり襲ってくるのはゴブリン、いえその緑の魔物だけで? 」

「いやそれが色んな見たことのない魔物ばかりでどう説明したら良いか」


 戸惑とまどいながら村長が言った。

 色んな魔物が混ざっているのか。

 統一性がないとは……。普通の魔物の発生じゃなさそうだ。


「一先ず調査してみます。その山に入り——可能なら間引きしながら原因を調査できればと」

「おおお。これは心強い。よろしくお願い致します」


 終始ありがられた俺達は一先ず山に登った。


 ★


 空から太陽の光が差し込む。

 今まで登って来た山よりも木々の感覚が広く辺りは明るい。

 青々あおあおしい臭いを感じながらもスキルを発動させ注意しながら先に進む。


「さっきの話、どう思う? 」

「ん? どうって……」

「ダンジョンスタンピード、ですか? 」


 流石エリアエル。さっしが良い。


 そう。ダンジョンスタンピード。

 その名の通りダンジョンからモンスターがあふれ出すことを言う。

 主に間引きされなかったダンジョンから魔物があふれる現象なのだが気になる事が一つ。


「この周辺にダンジョンがあったか? 」

「資料にはありませんでしたね」

「ならば最近できたダンジョンか」


 ダンジョンの自然発生。

 確かに魔物がいきなり襲ってきたのならばあり得る。

 けれど原因としては弱い。

 感知を広げながら進むビキニアーマーのシグナに俺は聞く。


「最近できたのなら魔物が溢れるか? 」

「それはダンジョンに聞いてくれ」

「……結局考えるだけでは原因を突き止められない、と言うことか」

「! 来たぞ」


 その一言で全員が構える。

 しかし一向にやってこない。


「……どこら辺にいるかわかるか? 」

「この先1kmくらいだ」

「「せめてもっと近づいてから言ってください (くれ)! 」」


 俺達はシグナにツッコミ、先に進んだ。


 死者のダンジョンを攻略したおかげか彼女達のスキルが向上した。

 それは他のダンジョンを攻略している時に判ったのだが、さっきの様に強くなった彼女達の力は時に混乱をもたらす。

 シグナはまだ可愛い方で、見た目は可愛いが使う魔法は可愛くないエリアエルは、更に魔法を放てなくなってしまった。

 よって最近の彼女の日課にっかは俺と死者のダンジョンへ潜り、俺が素材採取に来ている人達を守りながらエリアエルがストレス発散と言う名の爆撃ばくげきを行うことである。

 素材調達に来ている人達は効率良く魔石を回収できるため嬉しいはずなのだが、彼らの表情は暗い。


 何故ならばもし俺がいなければ、と思ってしまうからだ。


 もし俺が彼らを金剛鉄鋼の神体アダマンタイト絶対守護領域イージスで守らなければ彼らも魔物と同じ運命をたどる訳で。

 そのおかげかよくありがたられる。


「そろそろだ」

「ではこのわたしが……」

「ここは任せろ」


 シグナがそう言い消えるように走った。

 いなくなったと思えば前にいたゴブリンとオークの混成部隊が細切れになっていた。

 それを見て嘆息たんそくしながらシグナに近寄る。


「せめて素材は残しておいてくれ」

「私達は冒険者じゃないんだ。素材は気にしなくてもいいんじゃないのか? 」

「確かに冒険者じゃないが、売れるものは売りたい」

「貧乏性ですね。あれだけお金をもらったのに」


 溜息をつきながらエリアエルが言う。

 確かにそうなのだが、長年みついた考えを変えるには時間が浅い。


「次こそは大量の魔物を見つけて殲滅しましょう! 」


 そう意気込むエリアエルについて行き、先に進む。

 彼女が魔法を放つとこの山ごと無くなりかねない。

 よってシグナが剣で、俺が拳で戦いながら調査した。

 終始エリアエルが不機嫌だったのは言うまでもない。


 ★


「やっぱりあったか」


 巨大な洞窟を見て俺は呟いた。

 エリアエルは俺の言葉に首を傾げて聞いて来る。


「単なる巨大な洞窟どうくつなのでは? 」

「いや多分ダンジョンだ」

「何でわかるんだ? 」

「そうだな。単純な事なんだが……、そもそもこんなデカい――山の上に山をくりぬいたような洞窟があると思うか? 」


 そう言うと気が付いたのか二人は洞窟を見上げた。


 普通に考えよう。

 単に山の途中にある洞窟ならばこんなにもデカくない。

 そして洞窟が出来たとしてもすぐに崩落ほうらくする可能性がある。

 だがこの巨大な洞窟型ダンジョンはがっしりとした入り口をし崩れる様子もない。

 しかも不自然に臭いがしないというのも理由の一つだ。


「で、では攻略しても良いということですね! 」

「そうだな。これを攻略しないとまた被害が出そうだ」

「では行きましょう! 今度こそ殲滅してやりますよ! 」


 意気込む彼女を筆頭ひっとうに俺とシグナは「これは止めれそうにない」と溜息をつきながら中に入った。

 中に入ると魔物は悲鳴を上げることすらできないままに蒸発していき、このダンジョンは攻略された。


 ★


 アダマ達がダンジョンに入っていく中、その様子を見る影が一つある。


「あれはアダマだよね。今中央区にいるはずなのになんでこんな所にいるんだろう」


 短い銀髪に斥候せっこう役が着るようなセパレートの服をした女性——メアリである。


「……しかし英雄殿が来るとは。少し目立ち過ぎたみたいだね。だけど実験は成功。ここは引こうか」


 そう言い彼女は消えるようにその場を去った。

 アダマ達がダンジョンを攻略して出た来たのはその一時間後であった。

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