第12話 死者のダンジョン 6 アダマ、死す
俺達の前には一つの扉がある。
それは大きく
「これはまた悪趣味な」
「地獄がモチーフでしょうか」
「死者のダンジョンだからな。地獄がモチーフでも違和感がない。
エリアエルに言いながら軽く見上げる。
右上と左上の
「死神か」
ポツリと呟くと二人は「確かに」「そんな雰囲気ですね」と答えた。
単に出た言葉なのだが妙にしっくりくる。
「まぁここで突っ立っていても仕方ない。行くか」
俺が扉に手をやると二人共扉に手を付けた。
そして三人で扉を開けた。
★
草原の外とは異なり中は
暗い中を歩くが全く中が見えないという程ではない。
「思ったよりも綺麗だな」
「骸骨一つ落ちていませんね」
扉の外見が外見だったためにもっとおどろおどろしいものと勘違いしていたが、そうでもない。
「ご登場か」
ぶわっと
部屋が一気に明るくなったと思うとそこには一体の骸骨がいた。
「
「いや違う」
全身から冷や汗が
ヤバい。こいつはヤバい!
本能が、体が逃げろと言う。
だが逃げ場なんかどこにもない。
「……」
灰色のボロボロのマントを
分かる。本能で分かる。
こいつは
考える。
どうやったら生き残れるかを。
だが——。
「!!! 」
「……
最後に映った光景は鎌を振るう骸骨だった。
★
「アダマ! 」
骸骨が鎌を振り上げ、降ろしたかと思うとアダマが「バタリ」と倒れた。
いつの間にか、そこにそれがいたのだ。
その異常な光景に感知すら発動しなかったシグナが声を上げる。
しかしアダマから返事は帰ってこない。
「ふふふ……。奴は死んだ」
「そんなことはない! 」
「死んださ。何せ一日に一回しか使えない即死魔法を使ったのだから」
その骸骨は
それに
「アダマは死なない!!! 霊体絨毯爆撃」
音も出ない爆弾が骸骨を襲う。
少し衝撃で
「嘘っ! ハイ・レイスでも一瞬で消滅するのに?! 」
「ならば物理だ」
驚くエリアエルを通りすがり高速でシグナが
「竜牙光剣!!! 」
シグナが「ドゴン!!! 」と大きな音を立てる。
しかしそれは骸骨から出たものではない。
彼女が骸骨をすり抜けて壁に攻撃が当たった音だった。
すり抜けたことを自覚した瞬間彼女はそこから移動する。
舌打ちをうちながら回り込み、エリアエルを護るように陣取った。
「やはり霊体。でもあれが効かないなんて」
「ふふふ……。絶望する必要はない」
あくまでも上から目線で骸骨が言う。
魔杖を握りしめながらエリアエルは魔物を見上げた。
「我は死神。この世の『死』を
「え?! 」
「な! 」
「さぁ。運命に
こうして二人の絶望的な戦いが、始まった。
★
「……死んだのか? 」
起き上がり周りを見るとそこは森の中だった。
右に左に顔を動かすとちらほら木が見える。
少し歩き移動すると
「森……ではなく山だったか。しかしここは一体――」
「ここは神界と呼ばれる場所じゃよ」
「!!! 」
すぐに振り向き構える。
そこには黒い眼帯をした髪の白い一人の老人がいた。
「……いつの間に」
「その答えは複雑で簡単。いつも
「見たことがないのだが」
「それは少し次元の
なにボケたことを言っているんだ? この
「まだボケとらんわい」
心が読まれた?!
「そりゃぁこれでも神の一柱なんじゃから心の一つくらい読めるわい」
「神?! 」
こんな神様見たことないぞ。
いや神様自体見たことないが。
「いやお主は見たことがあるはずじゃ。例えば……そう。ここに来る前にとかの」
「! 」
自称神の爺さんは
神!
あれが?!
「あれは死神。役割はその名の通り死を運び魂を回収することじゃ」
「なら俺はやっぱり……」
「いやお主はまだ完全に死んどらん。精々仮死状態じゃろう」
「! ならばエリアエル達の所に行かないと! 」
そう言い山を下ろうとすると「まぁ待て」と聞こえて見えない壁にぶつかり転げた。
痛ててて。
結界か?!
だが、痛み?!
「お主のスキルはわしの力の前では通用せんよ」
「早くここから出しやがれ! 」
「わしの頼みを聞いてくれたら出してやろう」
老人は浮きながらゆっくりと俺の方に近寄った。
頼み?
俺は神様が頼むほどの事なんてできないぞ?
「出来るとも。お主にはその素質がある」
「素質? 」
「うむ」
出来る、のか。
簡単に答えるのはどうかと思うが、今は緊急時だ。
了解しよう。
「そうかそうか。了解してくれるか」
「でその頼みとは? 」
「この世界を滅亡から救ってほしいのじゃ」
いや無理だろう。
★
この世界はもうすぐ滅亡する。
自称神はそう言った。
世界滅亡? そんな雰囲気は全然感じないんだが。
「感じないのも無理はない。何せ近い将来起こる滅亡は人為的で、小さな
まさかの人の手によるものだった。
しかしなんで未来予知のようなことができるのにこの
「人の手によるものじゃからの。人の手によって解決してもらいたいのじゃ」
「俺達人からすれば神様に救って欲しいが」
「それをするとなんでも神頼みになってしまうじゃろ? 」
「それで世界が滅亡したら意味ないと思うんだが? 」
「お主からすればたった一つの世界かもしれんが、わしからすれば数多ある世界の一つにすぎぬ。今回も
無責任な。
神様の話を聞きながら山を下りた。
するとそこには多くの――見たことのない魔物があるいており、その更に向こう側を見る黄金に光る巨大な宮殿が見えた。
自称神が振り向き言う。
「さてここでは何度死んでも生き返る。時間もたんまりとある」
「俺はないんだが……」
「ここは外とは時間の流れが違う。幾ら過ごそうが向こうではあまり時間が経っていないから心配いらん」
心配しかない。
「では始めよう。神をも殺せる力を得るために――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます