第10話 死者のダンジョン 4 vs 死せる竜騎士 《デス・ドラグナイト》
「魔力は大丈夫か? 」
「問題ありません。それよりもアダマの傷の方が気になるのですが」
「このくらい問題ない。まだ冒険者になりたての頃はこのくらい日常
門を見上げながら俺はエリアエルに答えた。
「あれだけハイペースで進めたんだ。本当に大丈夫か? 」
「くどいですね。しかし不安ならば答えましょう。わたしこれでも魔力回復スピードが異常なまでに速いのです」
「……あれだけ連発してもう回復したというのならば、それは「異常に速い」では収まらないと思うのだが」
「あのピエロの攻撃を喰らって死ななかったアダマにだけは言われたくないですね」
「アダマ。一本取られたな」
シグナが笑いながらそう言った。
今俺の腕はあのピエロの攻撃のおかげで服が
しかし大量出血という程ではないし、心なしか傷が塞がってきている気がする。
正直あの時は危ないと思った。
あのピエロ。レッサー・ドラゴンなんて
恐らく俺が知っている中でも最強の部類だろう。
が俺の腕はそれを受けて無くなるどころか皮膚が少し破けた程度だ。
……俺の『超硬化』、本当に『超硬化』か?
聞いたことのある『硬化』の上位スキルとは硬さ違う気がするんだが。
超火力の範囲魔法をぶっ放すエリアエルを
少し悲しくなっているとエリアエルの声が聞こえてくる。
顔を下に向けると服を引っ張っていた。
「そろそろ行きませんか? 」
「私もエリアエルの意見に賛成だ。出来れば今日中に攻略したいからな」
「食料か」
俺が言うとシグナが頷く。
今日は十階層で帰る予定だったため食料をあまり持ってきていない。
なので——。
「行くか」
そう言い扉に目をやった。
嫌な予感しかない。
しかし行くしかない。
気を引き
そして俺達は扉を開けた。
★
中は広い
しかし広さが十階層のそれとは全然違う。
はて。十階層のボス部屋何個分だろうか。
そう不思議に思いながらも不自然に明るい中を行く。
「もういるな」
シグナの言葉に再度気を引き締め直す。
だが『範囲防御』がかかっているか、感覚的に確認し、周りを見る。
攻撃が飛んでくる様子はない。
しかし「Grurururu」という声が聞こえて来た。
「ドラゴンか」
正面を見てそれに気が付く。
普通のドラゴンではない。体がすでに
見たことのない魔物だ。もし腐肉の魔物をゾンビと言うのなら、このドラゴンは差し詰めデス・ドラゴンかドラゴン・ゾンビと言ったところだろうか。
そう分析しているともう一体の魔物を発見した。
騎士である。
しかしやはりこの騎士も腐肉となっている。スケルトン・ナイトではないゾンビ・ナイトか?
そう思っているとその魔物は俺達に気が付き赤い目をこちらにやった。
魔物はピリつくような殺気を放つ。
そしてドラゴンに――乗った。
「
「まさか! アンデットがか!!! 」
「皆さん注意してください! 」
エリアエルの言葉で俺は我に返り拳を構え、横でシグナは魔法剣を構えていた。
注意を払いながら動きを見逃さないように注意を払う。
しかし俺達の注意は無意味だったようだ。
「飛んだ?! 」
「腐っても
「打ち落とします。落とした後は任せましたよ」
エリアエルはそう言いながら空中に魔杖を
魔法が発動されたのだろう。上空から異常な
しかし――スキルの影響で――すぐに引く。
だが——。
「
「あの範囲を?! 」
エリアエルの攻撃魔法は全て広範囲だ。
それを大きく
そして俺の後ろに向かって高速で急降下してくる。
「やらせるか、よっ!!! 」
ゴン!!!
すぐにエリアエルの元へ戻り迫るドラゴンを殴り飛ばす。
ドンドンドン!!!
バウンドしながら二体は離れるが、すぐにドラゴンが体勢を整え
「ならば! 」
タタタタタ。
とシグナが『壁渡り』で壁を
そこから勢い付いたのか『空歩』で空を
キン!!!
彼女の一撃をドラゴンが避けて騎士が大剣で受け止める。
ドラゴンの顔が彼女に向き、炎を吐いた。
「~~~!!! 」
「シグナ! 」
彼女は落ちながらも空歩で衝撃を
あのドラゴンのブレスは『超硬化』を超える攻撃力を持っていないようだ。
シグナを範囲防御で守れて一安心。
彼女は剣を構え上空を見ながら俺にお礼を言う。
「超硬化様々だな」
「ブレスは大丈夫みたいだが他の攻撃はわからない。出来る限り避けてくれ」
「了解」
十九階層の魔物よりもボスが弱いとは思わない。
ドラゴンならば攻撃方法は爪と牙、あとは尻尾か。
騎士ならば大剣から攻撃……。
考えているとエリアエルが空中に向かって範囲魔法を打ち込んでいる。
しかしそれを
このままだとジリ
エリアエルならば今使わない隠し玉を持っている可能性があるな。
使うのを
ならばそれにかけよう!
「! 降りて来た。私が! 」
「まて。俺が行く! 」
幾度となく打ち落とそうとしているエリアエルを邪魔に思ったのか
受け止めようとするシグナを引き
「ふん!!! 」
降りて来るドラゴンに
吹き飛ぶドラゴンの背中に乗って、抱きかかえるように羽根を
「エリアエル! 何かこいつを倒す魔法は無いか! 」
暴れるドラゴンに揺られながら叫ぶと彼女が答える。
「あ、ありますが……」
「ならば俺事打て!!! 」
「だ、ダメです。流石のアダマも耐えれません! 」
「このままジリ貧になるくらいなら一か八かにかける! さぁ早く! 」
「あぁもう! 知りませんよ! 」
危険を感じたのかドラゴンの動きが激しくなる。
落ちた騎士も戻り俺の体を斬りつけていた。
い、いてぇ。攻撃は騎士の方だったか。
だがもう遅い。
「アダマ、死なないでくださいね。……
声と共に上を見る。
そこには巨大な赤い魔法陣が描かれていた。
魔法陣の中心には小さな、しかし俺のところまで伝わる熱を
そしてそれは、ゆっくりと降りて来た。
あ、これ死んだ。
———
後書き
こここまで読んでいただきありがとうございます!!!
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