第52話




「アン様、素晴らしかったですわ!」



「アンちゃん、頑張ったね。」



 ギルバートのフォローもあり、国王陛下からの褒賞の授与を無事終えた。アンは、ギルバート共にジェフリーとセレナの場所まで戻ってこれた。二人に褒められ、高鳴っていたアンの鼓動は漸く落ち着いてきた。



「アン様、少しお化粧直しに行きませんか?」



 周りの貴族たちは、褒賞を授与された聖女を一目見ようと、ざわざわと落ち着かない。少し喧騒から離れたい、と思っていたアンは、セレナの誘いを有り難く受けた。





◇◇◇◇




「アン様、お疲れではないですか?」



「正直、少し……。」



「緊張するお役目でしたからね。今日は早めにお暇しましょう。」



 セレナの気遣いにホッと安心し、後少しだけ頑張ろう、と意気込む。しかし、少し先を歩いている令嬢達の言葉が耳に入り、一息ついた心に一気に緊張が走った。






「……あの聖女様ですが、どんな偉業を成しても平民なのでしょう?」




「噂では、先程エスコートされていた侯爵家の方と婚約されているのだとか。」




「まぁ!あの聖女様を守られる為に侯爵家の方が平民と婚約を?」




「国の利益の為に、侯爵家の方が犠牲になったという訳ですわね。」





 ここまで聞いて、アンの心と身体は、ピシリと固まる。アンが動けないでいる間に、令嬢達は見えなくなった。




「あの人達!アン様、お気になさらないで下さいね。彼女たち、結婚適齢期なのに婚約者が決まっていないのです。それでアン様をやっかんでいるだけですわ。」



「は、はい。」




 セレナの慰めはその後も続いていたが、アンの頭には入って来なかった。アンの心は冷え続けていた。







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