第51話



「アン様!」



 会場に辿り着くと、すぐにセレナとジェフリーが寄って来てくれる。




「セレナ様!ジェフリーさん!」



 アンも笑顔を見せ、二人へ挨拶した。




「今日のドレスも、とても素敵ですわ。聖女様らしい色合いですね。」



「アンちゃんによく似合ってるね。」



「セレナ様もジェフリーさんも、ありがとうございます。」



 にっこりと笑うアンに、セレナもジェフリーも安心したように表情を緩めた。



「アン様。不安もあるかと思いますが、私も近くにおりますからね。」



「セレナ様、ありがとうございます。ふふふ、心強いです!」




 アンがセレナと言葉を交わしていると、王族の席に、ルイスとサイモン、そして国王陛下が現れた。国王は出席者へお礼を述べた後、サイモンの病の件を説明した。




「先日まで、第二王子であるサイモンが病に罹っていた。」



 明るく賑わっていた会場は、一変してざわざわと不穏な空気に包まれた。




「しかし、現在は完治しており、公務も滞りなく行っている。……本日はサイモンの治療に尽力した者たちに褒賞を与えたい。」



 神殿の代表としてグレッグ、魔術協会の代表としてロナルド、そして聖女アンの名前が呼ばれた。



 周りの貴族たちは、アンに注目した。多数の視線に晒されたアンは緊張から、鼓動が速くなり、足が上手く動かなくなるが、背中を押してくれたのはやはりギルバートだった。



「アン。エスコートさせてくれ。」



「は、はい。」



 隣にいたセレナとジェフリーも、小声で「頑張れ。」「頑張って下さいませ。」と声を掛けてくれる。アンは俯くことなく前に進んだ。

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