第47話


 結局、アンのドレスの布地はシルバーとなった。



 ギルバートは、前回のレモンイエローのドレスのようにアンのイメージに合う明るい色合いを希望していたが、アベールより今回は聖女として褒章を貰うのだから聖女らしいドレスにしろ、と一喝されていた。




 それでも、ギルバートは前回同様、自身の色であるアッシュグレーで刺繡を入れるよう注文し、譲らなかった。




「……本当に、聖女様にメロメロなのね。」



 アベールが呆れたように呟いた言葉に、アンは顔を熱くさせていた。





◇◇◇◇




 アベールとのドレスの調整を終え、アンとギルバートは帰りの馬車に乗っていた。ドレスは完成次第、ギルバートの屋敷に届けてくれるということだが、アベールは別れ際「また来てよ!絶対よ!」とアンの両手を強く握り、念押ししていた……またしてもギルバートが、アベールの手を払っていたが。





「ギルバートさん。素敵なドレスをありがとうございます。」



「いや、これくらいはさせてくれ。」




 ギルバートは、そう言うがアンは落ち着かない思いだった。待ち時間、アベールの店に置かれていたドレスの金額を見て、アンは目を見開いた。しかも、あのドレスは既製品なので、アンのようにオーダーメイドであれば、更に金額は跳ね上がる筈だ。



 ドレスが高価な物であると、分かっていたつもりだった。だが、実際に目にすると、理解できていなかったのだとアンの気持ちは沈んでいた。




「アン?」



 元気のないアンに気付いたギルバートが、気遣うように名前を呼んだ。




「疲れたか?」




「い、いえ。」




「慣れないことばかりさせてしまってすまない。」




「そんな……。」




 そんなことはありません、と言いたいのに言い切れなかった。自分は、ギルバートに守ってもらってばかりで、色々な物を貰ってばかりだ。ギルバートを想えば想うほど、何も返すことが出来ない自分が歯痒かった。



 

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