第45話
「祝賀会、ですか?」
いつものように監察官面接を受けに来たアンに、ギルバートは複雑な表情で王家の祝賀会があることを伝えた。
「アンちゃんのおかげで、サイモン殿下が元気になったでしょ。そのお祝いと、アンちゃんへ褒賞を与えたいみたい。」
「ほ、褒賞なんて。」
ジェフリーの説明に、アンは手が震えた。王家からの褒賞なんて恐れ多い。
「ルイス殿下も、サイモン殿下もアンちゃんにとても感謝しているんだ。それに、アンちゃんを守るための意味合いもあるみたい。」
「私を?」
アン以外の聖女たちは、貴族であり、家が後ろ盾となり聖女を守る。だが、平民であるアンに後ろ盾は無く、そのために侯爵家のギルバートと婚約することになったのだ。だが、アンの力は他の聖女の何十倍も強い。
「サイモン殿下のお陰で、革命派を弱体化させることにも成功しているんだ。だけど、アンちゃんが強い力を持っていることで、良くない思いを持って近づいてくる人間がまだいるかもしれない。それで、王家も後ろ盾だと貴族たちに知らしめる目的もあるんだ。」
「な、なるほど……。」
王家が後ろ盾なんて、余計に恐れ多いが、アンが断るようなことは決して出来ないだろう。アンは気持ちを飲み込み、無理矢理納得した。
「アン。」
複雑な表情をしたまま、ギルバートはアンの名を呼んだ。
「こんなことばかりで、申し訳ない。」
「そんな、私は大丈夫です!」
「だが……。」
ギルバートはいつだって、アンの思いを尊重してくれる。アンが最初に願った、「家族と変わらずに暮らしたい」思いをギルバートは大事にしようとする。
「頑張りますよ!……セレナ様にも助けていただけると有難いですが。」
「もちろん!セレナに伝えておくよ!」
ジェフリーは朗らかに笑った。
「アン。」
「ギルバートさん。私、頑張りたいんです。」
ギルバートの隣にいられるように、努力したいと、アンは強く思った。ギルバートと初めに出会った時と違い、アンが大切なのは家族だけでは無くなっていた。
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