第43話
「アン。おはよう。」
デート当日。迎えに来たギルバートは、いつものきっちりした仕事着とは違い、緩めの白いシャツと黒いスラックス姿で現れた。アンは、ジェフリーの妻セレナが見立ててくれた遠乗りでも大丈夫なような動きやすいタイプのドレスを身に着けていた。
(いつもと違うギルバートさん……)
あまりに素敵すぎて、目も合わせられないアンの気持ちを知ってか知らずか、ギルバートはアンの母スーザンに挨拶している。因みにアンの父、トーマスは愛娘のデートに拗ねてしまい、奥に引っ込んで出てこない。
「アン、行こう。」
表に出ると、アンの護衛たちがギルバートの馬と一緒に待ってくれていた。初めて馬に乗るアンは、乗り方も分からなかったが、先に馬に乗ったギルバートが「おいで」とアンの手を引き、持ち上げてくれる。横乗りで座ると、ギルバートの体にぴたりと密着する。
(ち、近い~~!!)
スーザンが気を付けてね、と笑顔で見送ってくれているが、上手く返せないまま、出発した。護衛たちは、随分距離を取って、着いて来ている。
「折角のデートだからな。護衛たちには少し離れてもらった。」
何でもないように涼しい顔をして話すギルバートに、アンは少し悔しくなった。
「アン?」
名前を呼ぶ声すら、甘く感じてしまう。
「うぅ……思った以上に近くて。」
「嫌か?」
悲しげに聞かれ、アンは思わず「嫌じゃないです!」と声を上げる。すると、ギルバートは悪戯が成功したかのように、口元を緩める。
「~~っ!!ギルバートさん!ずるいです!」
顔を赤く染めたアンを見て、ギルバートはまた口元を緩める。「すまない。浮かれてる。」と耳元で囁かれると、余計にドキドキして、胸が苦しくなる。
「……私ばっかり、ドキドキして、ずるいです。」
ギルバートの胸に顔を埋めたアンは、ギルバートの耳が赤く染まっていることに気付かなかった。
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