第41話




 ルイスの合図により、アン達はそこまで聞いて退室した。使用人たちも退室させ、ルイスとサイモン、二人だけの空間になり、ルイスはまた話し始めた。





「……サイモンにとっては、今更と思うかもしれない。時間が掛かってしまったが、漸く母上を罰する手筈が整ったんだ。」



 ルイスは、辛そうに言葉を紡いだ。



「え……。」




「混乱を招くから、国民への説明は出来ないが……療養を建前にして、実際には北の辺境にある王家所有の塔に、幽閉することが決まった。」




「そんな、兄上の、」



 母上なのに、というサイモンの言葉を、ルイスは制止し首を振った。そして、いつもの自信満々の笑顔とは違う、悲しげな笑みを浮かべた。







「俺の家族は、弟のサイモンと、サイモンの母上だけだ。」



 二人だけで、幼い頃のように抱き合い、涙を流した。長い間、拗れた兄弟関係が、漸く修復した瞬間だった。






◇◇◇◇




「ほんと、私に感謝してほしいですよ。」




 ロナルドが横柄な口調で言い放つ。隣室に待機することになったアン達だが、ロナルドは壁を隔てたこの場所で、サイモンの症状を軽減するために魔力を使っているのだ。





「ここまで離れて、魔力を使えるのなんて、この国で私だけなのですから。」




 ロナルドはいつも尊大な態度を取るが、実際にロナルドの言う通りではあるのだ。




「ロナルドさん、癒しの力、使いましょうか。」




「……正直、お願いしたいですが、話が終わればサイモン殿下の治療を頼まれるでしょう。」



 力を温存しておいて下さい、と言われ、アンは落ち着かない気持ちのまま、椅子に座った。





「……ルイス殿下と、サイモン殿下、大丈夫でしょうか。」




「ああ。もう大丈夫だろう。アンのおかげだ。」




 心配そうに眉を寄せるアンの背中に、ギルバートが手を添えた。




「……アン。あまり遠くに行かないように。」



 アンは不思議そうに首を傾げている。








「……イチャイチャするのは、私の見えないところでして頂けますか。」



 苦戦しているロナルドが、腹の底から出したような低く重い声に、アンもギルバートも頬を緩めた。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る