第34話



「アン様、お疲れ様でした。」




「とっても気持ち良かったです!ありがとうございました。」



 侍女達に、メイクを落としてもらい、入浴後のマッサージまでしてもらって、極楽気分のアンは後はもう眠るだけ、となった。だが。




(ギルバートさん、寝る前に会いたいな。)




「アン様?どうかされましたか?」




「えっと、あの。」




 先程、ギルバートは今から仕事をすると言っていた。会いに行ったら邪魔になってしまうかもしれない。そう思うと、口ごもってしまった。




「アン様。」



 そんなアンの心情を察した有能な侍女はにっこり笑った。



「今からギルバート様にお茶をお持ちするんです。宜しければ、ギルバート様と一緒にお茶しませんか?」




「・・・っ!はい!」



 アンの満面の笑顔に、侍女も嬉しそうに頷いた。






◇◇◇




 侍女がお茶を持ち、ギルバートの部屋に入室する後ろをアンは着いていく。




「ギルバート様。休憩なさってください。」




「ああ。・・・・・・・・・っ!」




 書類に目を通していたギルバートが顔を上げ、アンの姿を見つけ、目を見開いた。





「眠る前のカモミールティーです。ギルバート様が休憩なさらないと、アン様もお茶を飲めませんよ。」




 ギルバートが小さく溜め息をつくのを、アンは聞き逃さなかった。



「あの、やっぱり私、戻ります。」



 ギルバートの邪魔をしてしまった、としょんぼりするアンの顔を見て、侍女はギルバートをキッと睨む。ギルバートは、侍女に戻るよう合図し、アンに声を掛けた。




「アン。一緒に飲んでくれないか。」




「でも・・・お仕事の邪魔に・・・。」



 今にも部屋を出そうなアンを、ギルバートは引き止めた。




「邪魔ではない。」



 おいで、とギルバートが腰かける二人用のソファの隣を示され、アンはおずおずと小さく座った。




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