第12話 必勝法と、援軍と、担保

 村長さんと盗賊のかしらによる数当ての賭けが始まった。

 村長さんには私から必勝法の魔道具を渡してある。


 その魔法はこうよ。


#include <stdio.h>

#include <string.h>


void main(void)

{

 char str[4];

 int ans,max=1000,min=1;

 ans=(max+min)/2;

 printf("答えは%d\n",ans);


 while(1){

  scanf("%s",str);

  if(strcmp(str,"上")==0) min=ans;

  if(strcmp(str,"下")==0) max=ans;

  if(strcmp(str,"当")==0) break;

  ans=(max+min)/2;

  printf("答えは%d\n",ans);

 }

}



 これはバイナリーサーチという手法で、上か下かで数を探し出す場合に使われる。

 よく使われるプログラム手法のひとつ。


 最短回数で数を割り出すわ。

 問題は空中に表示される数字をどう誤魔化すかということだけど、村長さんには本を持って貰ったわ。

 スペルブックに使う本で、買ってきた時は背表紙には何も書いてない。

 このダミーの本の背表紙に占いと書いてもらった。


 これなら相手は占いをしていると思うでしょう。

 実際は魔道具から答えを受け取っているのだけど。


 とうぜん村長さんに勝ちが多くなる。

 イカサマしていないと思わせるために、勝ち負けの金額が同じになるように、手加減してほしいと言ってある。


 勝負は白熱した。

 勝ち負けが良い感じに調整されているからね。


 気がかりは援軍の冒険者が遅れないかということ。

 盗賊がしびれをきらして、暴れ出したら元も子もない。


 賭の方は安心して見てられる。

 バイナリーサーチは最短回数だから、負け続けることは考えられない。


 突如村人達が左右割れて鎧を着けた冒険者6人が現れた。


「騙したな」


 激昂する盗賊のかしら


「援軍を呼ばないとは言ってない」


 勝ち誇った顔で答える村長さん。


 冒険者は剣を抜くとかしらに向かって、振り下ろした。

 剣を抜いて受けるかしら


「ふん」


 冒険者は鼻で笑うと、かしらを蹴飛ばした。

 冒険者さん、強い。

 私は思わず歓声を上げた。

 村人も同様よ。


 戦いはものの10分ぐらいで終わった。


「盗賊としては強い方だが、俺達の敵じゃないな」


 冒険者さんがそう締めくくる。

 盗賊達は誰も死んでないのが、実力の差を表しているような気がする。

 盗賊達は武装解除してロープに縛られ、荷馬車に放り込まれた。


 何とかなって良かった。

 だが、村長さんの顔が暗い。


「村長さん、何かあったの?」

「申し訳ない。ニーナちゃんには迷惑を掛ける……」


 村長さんの歯切れが悪い。


「言って」

「冒険者の支払いが高くついた。盗賊の実力が分からなかったから、冒険者ギルドにいた一番の腕利きを雇っただけだ。伝令は責められない。本隊がいる場合もあったからな」


「いくらなの?」

「金貨70枚だ。ニーナちゃんの魔道具には期待している。余分な金がそこからしか捻出できない」

「何年も掛かりそう」

「それで本当に申し訳ない。魔道具の将来の生産を担保に冒険者ギルドに借金したわけだが……」


 村長さん歯切れがまた悪くなった。


「何個作ればいいの?」

「そうじゃないんだ。借金を返し終えるまで、担保は、ニーナちゃん君だ」

「えっ、私?」


 私、担保にされちゃうの。


「もちろん断ってくれてもいい。だが、そうなると他の村人何十人が担保になって、街で働かないといけない」

「そんなことしたら、村が崩壊するよね」

「そうだが。それはそれで仕方ない」

「分かった。冒険者ギルドの担保となって働くよ。どこで働けばいいの」


「ニーナなら魔道具を作る傍ら、ギルドの受付嬢との話だ」

「ニーナ、行くな。代わりに俺が担保になる」


 話を聞いていたビュートが泣きながらそう言った。


「ビュート、仕方ないの。でも担保となっていた年月は、お金に換算して村に賃金を要求します」

「そうだな。それぐらいは村としてさせてもらう」

「ニーナ、俺、冒険者になる。そして毎日、生活依頼をこなして、受付のニーナに会いに行く。そうすれば寂しくないだろう」

「ビュート、ありがとう」


 私は担保になった。

 別に奴隷というわけではない。

 ただ、この場合、村が破産すると、借金が降り掛かって来る。

 契約社員+連帯保証人が近いかな。

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