第9話 足し算と、スプレー魔道具と、ビュートのうっぷん
足し算の処理を作る。
sum=0; /*合計をゼロに*/
for(i=0;i<j;i++){ /*項目の数だけループ*/
if(item[i]<=999999990) sum=sum+item[i]; /*足し算*/
}
printf("%s=%d",str,sum); /*答えを表示*/
while(1){ /*無限ループ*/
if(kbhit()) break; /*何か入力されたら止める*/
}
return(0); /*正常終了*/
今回のは短かった。
とりあえず電卓魔法が終わった。
改良点は色々とある。
数式を一度に入力するんじゃなくて、1項目ずつ入力とか。
数値を小数点対応にするとか。
こういうのはバージョンアップしていけばいい。
たたき台を作るのが肝心。
改良は容易い。
二日ぶりに興奮した様子でビュートが店にやって来た。
「あの武器凄いよ。ゴブリンリーダーも倒せた」
ちょっと調子に乗っているな。
このままだと死ぬ未来しか見えない。
「あれの代金を貰ってなかったわね。金貨1枚よ」
「ちょっと、そんなのあんまりだ」
「私の言うことを聞くなら、ツケにしておくわ」
「なんだ。言ってみろ」
不満そうなビュート。
「ここぞという時にしか使わないこと」
「えー」
「あれは切り札として渡したのよ。常に使うなら切り札とは言えない」
「切り札、ちょっと格好いいかも。ロマンだ」
「守れる?」
「うん」
「ビュートが憎くて言っているんじゃないわ。怪我をする確率を減らすためよ。痛いのは嫌でしょう」
「普段から使っていた方が怪我をしないんじゃない」
「偶然、ゴブリンが瞬きして目をつぶったらどう?」
「考えなかった。でも、切り札として使っても、いつかは破られるんだね」
「ええ、切り札はいくつも持つものよ」
「じゃあ、二つ目の切り札を作って」
「しばらく様子を見て、言いつけを守っていたら、作ってあげるわ」
「きっとだよ。じゃあ、目潰しの魔道具を何個も作ってもらうのは駄目か」
「何個も要らないでしょう」
「いま男の子達とパーティを組んで、ゴブリンを討伐しているんだ。みんなが欲しがるんだよ」
「駄目よ、渡せないわ。切り札を渡すのは信用した人だけ。お眼鏡に叶った人だけにしか作らない。職人の矜持よ」
「なんか恰好良い」
「1流の職人は自分が作った作品を使わせる人を選ぶの」
「分かった。みんな納得すると思う」
切り札はさておき、ふだん使いの魔道具が必要だわ。
そうすれば死亡率が低くなる。
性能が良過ぎても魔女認定されない物。
フラッシュは便利だけど同士討ちの危険があるわ。
唐辛子スプレーなんてどうかしら。
extern MAGIC *magic_make(char *obj,int obj_size,int imege);
extern void magic_spray(MAGIC *mp);
extern int mclose(MAGIC *mp);
char powder[10]; /*粉*/
void main(void)
{
MAGIC *mp; /*魔法定義*/
mp=magic_make(powder,sizeof(powder),IMAGEPOWDER); /*粉を魔法として登録*/
magic_spray(mp); /*粉を吹きつける*/
mclose(mp); /*魔法終わり処理*/
}
粉を掛ける魔道具。
唐辛子みたいな粉末だと目潰し。
鼻を馬鹿にする粉だと嗅覚を潰せるわ。
毒の粉末も可能ね。
でも大した魔道具ではない。
粉なら手で握って投げつける事も出来る。
魔道具は必ずしも必要ではない。
ただ手で投げるのは訓練がいる。
粉は投げたのでは遠くに飛ばない。
たぶん粉を使う人はカプセルか目が粗い布の袋を使うのでしょうね。
ビュートの家にスプレー魔道具を10個作って持っていった。
「ビュート、遊んでないで、もっと畑仕事やりな」
ビュートを叱るおばさんの声が聞こえた。
「そんなことしたって俺にはなんの得にもならない」
「この家にいる限りは家族なんだよ。家族のために骨を折るのは当然さ」
「じゃあ、俺がこの家を出て行く時は冒険者になるための道具を揃えてくれるのかよ。家族なんだろ」
「屁理屈を言うんじゃない」
「俺なんか死んだ方がいいって言うんだな。こんな家出てってやる」
入るのをちゅうちょしていた私の前をビュートが通り過ぎた。
私はなんて声を掛けたらいいのか分からずに、立ちすくんだ。
とりあえず、ビュートの家に入る。
「おばさん」
「ニーナちゃんかい。みっともない所を見せちまったね」
「ビュートはあとで私がなだめてみる。でもおばさんもビュートの生存確率を上げるために何かしてあげないと」
「ニーナちゃんだから、言うけど。この村出身の冒険者パーティに入れて貰えるように手紙を書いてもらって、承諾を得たんだよ」
「何で言ってあげないの」
「甘えが出るからさ。相手の冒険者には同じ村の出身だと言わないよう言ってある。どんな仕事でも下積みは大変だよ」
「おばさん、私余分なことをしたかも」
「いいんだよ。ゴブリン退治は、ビュートがやりたかったから、やり始めた。違うかい?」
「ううん」
「じゃあ、いいさ。ビュートは畑仕事をちゃんとやってから、ゴブリン退治をするべきなんだよ」
確かにそう。
私も雑貨屋の仕事に支障が出ないように魔道具作りをやっている。
でもそれは大人だから。
「ビュートを探してくるね」
たぶんあそこよ。
私は石碑の所に行った。
ビュートがやさぐれていた。
「ビュート、自分の役割を果たせない人は冒険者になるべきじゃない」
「ニーナもそんな事を言うんだ」
「野営する時に、別の仕事の楽しみにかまけて、見張りをしくじったら、人が死ぬんだよ」
「そんな事しないさ」
「でもいま、つらい畑作業から逃れてゴブリン討伐をしている。どこが違うの。冒険者の仕事も畑仕事みたいな地味な作業はたぶんいっぱいある」
「そうかな」
「おばさんと話し合ってみて」
「そうする」
「これは粉を吹きつける魔道具。使ったら感想を言って」
私は作ったスプレー魔道具10個を渡した。
「ありがと。みんな喜ぶよ」
世話が掛かるったらないわね。
明日はいよいよ村長さんに、電卓魔道具を見せる予定。
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