第8話 剰余算の処理と、お相手と、ニワトリ

 今日は割り算と掛け算の処理。


 int sum,flag; /*合計とフラグ*/


 for(i=0;i<j;i++){ /*項目の数だけループ*/

  flag=item[i]; /*フラグ読み込み*/

  if(flag==999999993 || flag==999999994){ /*乗除算記号か調べる*/

   if(i==0) /*最初に剰余算記号はエラー*/

    return(-1); /*エラー終了*/

   if(item[i-1]>=999999990) /*前が記号はエラー*/

    return(-1); /*エラー終了*/

   sum=item[i-1]; /*剰余算の元の数字*/

   item[i-1]=999999990; /*処理済み*/

   i++;

   if(item[i]==999999990) i++; /*マイナスの処理で出た空白をスキップ*/


   if(flag==999999993) sum=sum*item[i]; /*掛け算*/

   else sum=sum/item[i]; /*割り算*/

   item[i]=sum; /*計算結果を格納*/

  }

 }



 今日のノルマ達成。

 何がややこしいかというとエラー処理。

 たぶん抜けがありそうな予感がする。

 もう、校舎裏に男の子から呼び出されたら、友達宛てのラブレター渡されるぐらい確実。


 でも、プログラムはバージョンアップして、出来上がっていくものなのよ。

 今日はビュートが来ない。

 あんな奴でも来ないと寂しく感じるものなのね。

 結婚を承諾したけど、あれは前世の記憶が甦る前。

 ノーカンだと言ってもいい。


 それに年齢から考えるとお相手としてビュートの歳が一番近い。

 10歳差ぐらいは許容範囲だけど、なるべくなら同年代の方がいい。


「考え事?」

「お母さん。あのね、お相手としてビュートはどうなのかなと」

「やめた方がいいね。亭主が冒険者やっていると毎日が地獄よ」

「何で?」

「何時死ぬか分からないし、安定した収入もないでしょう。何時死ぬんじゃないかと、ハラハラしながら過ごすのは大変よ。農夫の女房でも大変だけど」

「そうなの」

「息子が2人以上いると、あぶれた子は、冒険者になるしかない。息子の無事な帰りを待つ母親の気持ちは大変よ」


 死亡率かぁ。

 平均寿命も低いんでしょうね。


 村の人が職人か商人になりたがるわけだわ。

 でも、腕の悪い職人は食べてはいけない。

 読み書きそろばんができない商人も同様ね。

 学校がないから、勉強も大変。

 見習いになるにもある程度の下地は要る。


「うちはそういう意味ではあと3人ぐらい子供ができても大丈夫ね」

「何言い出すんだい、この子は」


 母さんの顔が真っ赤だ。


「だって母さん、まだ26でしょ」

「嫌だね。親をからかって」


 私が早めに独立したほうが良いのかな。

 加減算の魔道具作りで食べていくことはできる。

 いまプログラムしている加減剰余算の魔道具が完成すれば、もっと稼げるわ。


「独立しようかなぁ」

「家を出て行くのかい。悪い男が出来たんじゃないだろうね」

「独立と言っても村からは出て行かないわよ」

「なら、いいわ。好きにやりなさい。魔道具職人でも食べていけそうだからね」


 こんなので良いのかな。

 いろいろと物足りないのは事実。

 前世並みの便利さと衣食住生活を、できることなら実現したい。


 でも大発明を何度もすると、魔女扱いされるかもしれない。

 いらぬ輩をおびき寄せるかもしれないし。


 私は金の卵を産むニワトリだけど、ニワトリの身分になったら、たぶん尊厳は守られない。

 都会は都会で危険だわ。

 まだ村の方が安心できる。


 とにかく成人年齢の15歳までは、あと3年ある。

 それまでに何か良いアイデアが浮かぶかもしれない。


 ビュートとの関係も考えないといけないのかな。

 プロポーズを受けたけど、あの文字が読めるわけはない。

 結婚するかの主導権はこっちにある。


 ビュートはいい人なんだけどね。


「母さんは欲しい物ってある?」

「そうだねぇ。健康だけかしら」


 医者の領分を侵すのは不味い。

 薬師も同様ね。


 治療の魔道具はたぶん魔女認定される。

 なんでこう制約が多いのよ。

 どんな身分になったら制約が掛からなくなるの。


 話に聞く魔法学園の教授。

 それとも貴族。

 どっちも無理そう。


 たぶん貴族にならないと無理ね。

 貴族のお妾さんルートはニワトリに進んでなるようなもの。

 貴族の正室になるのはかなり無理ゲーだわ。


 村で大人しく、魔道具職人かなぁ。

 それだと豊かな老後は望めない。

 子供ができてその子供が冒険者になって死ぬのも嫌。

 この村の人間だって死んで欲しい人は一人もいない。


 世界を変えるような力はある。

 ないのは覚悟だけ。

 血塗られた道を歩くのは嫌。


 結局、何かを成すには何かを諦めないといけないのかな。

 私の環境は村人としては恵まれている。

 雑貨屋がある限り、他の村人よりずっと有利。

 読み書きそろばんができるのは、雑貨屋に生まれたおかげだから。


 贅沢を言ったらばちが当たるのかな。

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