『ヒッチャー: The Hitcher』1986年


ルトガー・ハウアー(Rutger Hauer)

2019年7月 惜しまれつつ この世を去る(享年75歳)


現在、往年の名作に名を連ねる作品となったが

公開当時の『ヒッチャー: The Hitcher』は酷評の嵐だった。


そんな中、スティーブン・キングは本作を大絶賛した。

登場するシリアルキラーであるジョン・ライダーに

自身が求めていた「闇の存在=黒衣の男」の根幹を見出した。


1999年に放送された『悪魔の嵐 :Storm of the Century』では

登場した「謎の男=黒衣の男」は

まさに「ヒッチャー」のジョン・ライダー!

どんな形であれ、かのジョン・ライダーが返ってきた・・・

二重に島の人間が逃げらないのは道理だったのだ。


スティーブン・キングと『ヒッチャー: The Hitcher』は

全くもって関連性はない。

ルトガー・ハウアーのジョン・ライダーは

スティーブン・キングの中で

大きな存在となっていたに違いない。

思い描いた闇の存在=黒衣の男を見てしまった。


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『ヒッチャー: The Hitcher』


豪雨の中、砂漠地帯のフリーウェイを走る車。

車の長距離陸送中のジム・ハルジー。

道中、一人のヒッチハイカーを拾う。

ジョン・ライダーと名乗るヒッチハイカー。

目的地も言わず、先程ヒッチハイクした車の持ち主を殺し、

ジムも殺すつもりだと言う。


「俺を止めてみろ・・・」


隙をみてジョン・ライダーを車から放り出すことに成功し

歓喜するジム・ハルジーだが、

翌朝、ジョン・ライダーを乗せた

家族連れのワゴン車が、追い越していく。

停車したワゴン車の中では、惨殺された家族の姿。

ジョン・ライダーの姿はなかった。


35ミリフィルムのザラついた質感が絶妙だ。

イリノイからテキサスにかけての

砂埃すなぼこり舞う荒涼とした土地

ー砂漠地帯によく似合う。


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徹底的にその目的は見えない。

抽象的な存在としてのジョン・ライダー。

惨殺死体を大量に積み上げていくが

特別、虐殺行為を楽しむ様子もない。

淡々と『惨劇』をもたらす存在としてだけ

描かれている。


とあるきっかけにより警察の聴取を受けるシーンがある。

名乗った「ジョン・ライダー」という名前は

元々『身元不明の遺体』を指す名前だ。

出身地は『ディズニーランド』

身分証明書もない。

指紋認証のデータベースにもない。

完全なる『身元不明』


防音のマジックミラー越しに見ているジム・ハルジーが

「ジョン・ライダー・・・」と呟く。

それに返事をするように、見えるはずのない

ジム・ハルジーを見るジョン・ライダー。


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ジョン・ライダーの神出鬼没さ。

殺戮の様は、とても人の成せる技とは思えない。


その存在は『災厄』そのものだ。


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冒頭シーン。

ジム・ハルジーは陸送中の車内で

居眠り運転をしていた。

危うく事故を起こしそうになり・・・・


覚醒して、そしてジョン・ライダーを乗せる。


実は居眠り運転で、

既に事故死していたのではないか?


ジョン・ライダーは

今まさに死した魂をいざな

死神の役目だったのではないか。


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スティーブン・キングの「闇=邪神」を象徴する

「黒衣の男」はいくつかの姿で

作品に登場する。


その中の一体、

「IT」のピエロ姿で有名なペニーワイズは

自分の住処を遊園地として構築している。

ジョン・ライダーの出身地は

「ディズニーランド」なのだ。

「悪魔の嵐」の中の

ジョン・ライダーそのものだった。


ジョン・ライダーは左手の薬指に

指輪をしている。

日常の中では「結婚指輪」と見るが、

太古の昔、邪神の秘儀として

左手の薬指は「邪神との契約」を表す。


「闇=黒衣の男」は

様々な「災厄」をもたらす存在。

「災厄」自体といってよい。


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後年、

ジョン・ライダーを演じたルトガー・ハウアーは

スティーブン・キングの「呪われた町」で

黒衣の男を演じている。













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