『恐竜はどこへ行ったのか?』H.P.ラブクラフト『彼方より:From Beyond』


佐野史郎という俳優がいる。

名優でもあり、クトゥルフ神話の造詣も深い。

日本版クトゥルフの映像化においても

数々の名作を送り出している。


クトゥルフ神話を語る上で

重要人物の一人だ。


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原作はH.P.ラブクラフト短編『彼方より:From Beyond』


屋根裏の研究室で親友の変わり果てた姿を発見。

真相を確かめようと、研究した機械を使い

異次元彼方より呼び出した異形のもの、

その真実を探る・・・といった超短編。


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1994年「世にも奇妙な物語・ 七夕の特別編 」の中の一篇。

「恐竜はどこへ行ったのか?」

松下由樹主演、佐野史郎の怪演が一際光るサスペンス・ホラー。



「自虐症患者の精神メカニズム」の論文に取り組む水谷。

その患者で地下室に隔離されている田口教授と面会する。

彼は研究室で狂気の最中、

自分の体を傷つけここに運び込まれた。

噛み合わない会話は続くうち、教授は拘束衣のまま

なにもない空間に切り裂かれていく。


恐竜はどこへ行ったのか?

古生物学最大の謎について教授が書いた論文のタイトル。

隕石衝突を予知した恐竜は別の次元へ逃げた。

そう唱えた教授の論文は嘲笑のままに黙殺された。


「謎の現象」の真相に迫るため

水谷は教授の元助手から当時の様子を聞く。


その頃、検査の結果

教授の脳内『R領域の極端な肥大化』が確認され。


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非常に丁寧に、原作を周到した作品。

日本を舞台としたクトゥルフ作品は

佐野氏が作る作品はどれも秀逸。


1990年から現在まで続く

「世にも奇妙な物語」シリーズは

クトゥルフ神話との相性も良い。


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原作を同じくする映画として

スチュアート・ゴードン監督作品

『フロム・ビヨンド:From Beyond』がある。


フロム・ビヨンドもそうだが

スチュアート・ゴードン監督は

H.P.ラブクラフト作品の映画を数多く撮っている。

ホラー映画の傑作として熱狂的なファンも多い

『ZOMBIO/死霊のしたたり』シリーズも

H.P.ラブクラフト

『死体蘇生者ハーバート・ウェスト

 :Herbert West–Reanimator』


原作を愛し、その世界を映像として届けてくれた。

ありがたい。


ゴードン監督の映画は

厳格なクトゥルフ神話ファンには「不真面目だ」

「ポンコツだ」と不評を買っている。

お色気シーンも多く、全裸の美女が拝み放題。

80年代のホラー映画事情は察して頂きたい。

映画のストーリーは損なわれることなく、それは

監督の作品の持ち味として楽しみたい。


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佐野氏の日本を舞台にしたクトゥルフ物に

1992年放送の

蔭洲升いんすますおおうかげ』がある。

原作はH.P.ラブクラフト

『インスマスを覆う影:The Shadow Over Innsmouth』

日本になじみ難いの概念等をそぎ落とし、

「忌まわしき故郷への帰還」をメインテーマとした。


こちらのノベライズ版は

『蔭洲升を覆う影』の脚本を担当した

小中千昭の短編集『深淵を歩くもの』にも収録されている。


TBS大ヒットドラマのスタッフが

佐野氏と意気投合して作り上げた力作。

よい関係を築いたあかつきには傑作が生まれる。


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