第25話 私のアイコン捨てました

月曜の朝、始業前のオフィスはいつもより少し賑やかだ。


「週末ユニバに行ってきたんだ」

「とってもカワイイ服買っちゃったの」

「子どもの相手してたら筋肉痛で」

などなど。

楽しかった休日の話で社員たちが盛り上がっていた。


「おはようございまーす!」


いつもより大きな聞き慣れた声に、若手社員と談笑していた石堂が振り向きながら返事をする。


「おはよう!佐和ちゃん、今日は元気だな……って、誰?え!佐和ちゃん?!どうしたんだ、それ!?」


そこには栗色のショートヘアの佐和が立っていた。


「か、髪、切っちゃったの?」

「はい」

「え、な、何でまた?」

「はい、なんかめんどくさくなっちゃって」

「もしかしてメガネも?」

「はい、コンタクトにしました」


長い黒髪とメガネ。小さい頃からの彼女自身のアイコンを捨てた佐和だった。


意外なことに大変身を遂げたその姿は好評で、

「佐和さん、ステキ」

「やべぇ、惚れたかも……」

「富永、イケてるぞ」

と社員たちから称賛の声が上がった。


ざわめく事務所の中、佐和は部長の元に歩み寄るとスッと一通の封筒を手渡した。


「ん、何だ?えっ!退職願!?」


「「「えーっ!!」」」


再びフロアに衝撃が走った。

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