第12話




「・・・ずっと好きだったって、どういうこと?」




 ウィリアムの胸の中で閉じ込められたまま、カレンは尋ねた。





「・・・初めて会ったときから好きだった。」




「初めてって・・・あんな小さな頃から?」




「ああ。七歳の時に茶会で会った時からずっと好きだったよ。」




「あの頃から貴方、意地悪ばっかりだったじゃない。」



 口を尖らしたカレンに、ウィリアムは悲しそうな顔をして、ごめん、と繰り返した。




「いっぱい意地悪してごめん。酷いことしてごめん。」




「ウィリアム・・・。」




「幼いときから、カレンは本が好きで、どうしても俺の方を見て欲しくて意地悪してた。意地悪してる間は俺の方を見てくれるって、そう思って。」




「・・・うん。」




「学生時代も、カレンと上手く話せなくって。同級生の中には、カレンのこと可愛いって言ってる奴も結構いたんだ。そいつらがカレンに近寄れないよう必死で阻止した。」





「・・・貴方、そんなことしてたの?」



 思わず呆れた声が出ると、ウィリアムは眉を寄せ「だって俺のカレンなのに。」と呟いた。




「近衛騎士になってからは、殿下からの命で、令嬢の聞き取りは俺の業務になった。変な噂になってるのは分かってた。だけど、女性との関わり方が分かれば、カレンともっと仲良くなれるかもしれないって思って。それに・・・。」




「それに?」




「俺が他の令嬢と話してたら、カレンが俺を見てくれるから。」




「なっ・・・!」




 ウィリアムが令嬢にチヤホヤされている間、いつも目で追っていたことがバレていて、カレンは言葉を失った。




「あの夜のこともごめん。本当は何も無かったんだ。」




「え!」




「だけど、何かあったと思ってくれたらカレンと婚約出来るかもって思って。カレンのご両親が縁談話探してるって聞いて焦ってしまったんだ。」




 騙してしまってごめん、と謝るウィリアムに、カレンは呆れはしたが怒りは沸かなかった。自分とそれ程婚約したいと思ってくれたのかと思うと、じわじわと心が満たされた。







「ねぇ、カレン?」




 両頬に手を添えられ、視線を無理矢理合わせられる。




「ウィリアム・・・。」




「カレンは、俺のこと好き?」




 ウィリアムの綺麗な瞳にじっと見つめられ、カレンは逃げられない。





「・・・わ、わからない、けど。」





「けど?」









「・・・ウィリアムが他の子と仲良くしたり、他の子と結婚するのはいや。」




 他の令嬢達やケリーと仲良くしているのを見た時、ウィリアムが自分以外の人と結婚するのかと想像した時、心が切り裂かれるような痛みに襲われた。


 ウィリアムは、カレンの答えに満面の笑顔を見せた。









「それはね、カレン。」



 大好きって言うんだよ、と囁かれ、優しく口付けられた。

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