第11話
ウィリアムは、カレンが流した涙をハンカチで丁寧に拭った。
「・・・カレンは、どうして俺に好きな人がいるなんて思ったの?」
カレンの呼吸が整った頃、しょんぼりと寂しそうにウィリアムは尋ねた。
「だ、だって・・・!」
「だって?」
「・・・今日、ケリーといたでしょう。二人とも楽しそうだったし・・・あの夜のことが無ければ、ウィリアムは私となんて婚約を結ばなくて良かったのにって、私がウィリアムを縛ってしまっているんだって、そう、思って・・・。」
はぁ~~と大きく長い溜め息をついたウィリアムは、カレンを抱き締める腕に力を込めた。俺が悪いな、と小さく呟く声が聞こえた。
「ウィリアム?」
「・・・ケリー嬢には、昔からカレンの好きな物を教えて貰っていたんだ。小説とか、花とか、食べ物とか・・・。」
恥ずかしそうに目を伏せて話すウィリアムを見て、カレンは目を丸くした。だから好きな花を贈ってくれたり、観劇の題目もカレンが好きな小説のものだったのか。それに、ウィリアムと呑みに行く場所はいつだってご飯が美味しい場所だった。
「そ、そうだったの・・・じゃあ、ケリーのことは好きじゃないの?」
「うん、俺はカレンが好きなんだよ。」
ウィリアムに繰り返し愛を囁かれ、カレンは漸く自分の勘違いに気付き顔を熱くした。勝手に思い込んで、勝手に泣いて、勝手に駄々を捏ねて。恥ずかしさから、ウィリアムの肩口に顔を埋めて、ごめんね、と小さく謝る。ウィリアムは首を振り、カレンの頭を撫でた。
「・・・妬いてくれたんだよね?」
「ち、ちがっ!」
耳元で囁かれ、声を上げた。至近距離で視線がぶつかると、ウィリアムは嬉しそうに微笑み、カレンは鼓動が早くなるのを感じた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます