運命

私は関川愛娘、どこにでもいるような普通な中学3年生だ。趣味はちょっと幼いと思うかも知れないが少女漫画を見ること。

 そんな私はいま人生最大の危機に瀕していた。


「あれ?ない、筆入れ、、、あっそうだ」


(昨日夜どうしても不安で夜勉強したままだったんだ)


そう。今日は受験日なのに筆入れを忘れてしまったのだ。

 こういうときはどうしたらいいのだろか。

 中学でクラスに全くといっていいほど馴染めてなかったせいで友達なんていないし、受験会場の先生に言えば貸してもらえるのだろうか?いや貸してもらえたとしてもきっと先生達からの印象は悪いものになってしまうだろう。

 

(こんなことなら友達作っておけばよかったな)


「そこの君・・・」

 

あたふたしていたら知らない男の人がこちらに近寄ってくる。


(どうしよう、知らない一人に声かけられた、これってカツアゲやつなのかな)


「あっ、えっと、、、すいません。お金なら持ってないです。」


なんとか怯えながらも言葉を絞り出す。

 すると男の人から意外な返答が返ってくる。


「あ~ごめんね!急に話しかけられたら怖いよね、別にカツアゲとかナンパとかじゃないから大丈夫!」


ならば何のために話しかけてきたと言うのだろうか?たま

 疑問に思いながら愛娘はその男からの返答を待つ。


「いやなんか困ってそうだったからなんか手伝えることないかな~って思ったんだけど、迷惑だったかな?」


(あっ、これはきっと運命だ)


一般的に見ればそこまで感じるなんて異常だと思うだろうが愛娘は違った。

 いつも少女漫画を読んでいるせいで運命というものに憧れてきたというものもあるがそれだけではない。

 家庭内でも決して仲がよいわけではなく家族とは最低限の関わりしかもたず、学校では先ほどの説明通り友達など今の今までいたことがない。

 今まで人からの優しさを受けたことのない愛娘にとってこのシチュエーションは愛娘からしてみれば運命だと思ってしまうのも必然なのかも知れない。

 その後、その男の人が走って家から筆入れを持ってきて貸してくれ無事に受験を終えることができた。


(名前も聞けなかったな、でも大丈夫、だってこれは運命なんだからきっと近いうちに会えるよね、そうじゃないとおかしいもんね。運命なんだから。)






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