弁士登場 3 *
共鳴の歓声や拍手がおさまると、パシオンは、愕然としているペロピダスを真っすぐに見て、声のトーンを変え、穏やかにいいきかせるように述べた。
「三弟ぎみの事は、心からお悔やみ申し上げます。
しかし、真剣勝負に命の危険はつきもの。
ダリウス小隊長も武人であり剣士であられた以上、それは十分承知の上で、挑戦を受けられたはず。
何度も申し上げますが、同盟軍兵士でない踊り子には、
ダリウス小隊長は、
これはお互いの命を張った勝負を受けた、ということに
承知の上で命を張り、正々堂々とふたりの剣士が戦った。
結果、片方が敗れ、不幸にも命を失ったとしても、そのことで勝った方をとがめられるしょうか?
聡明かつ公平なるテバイ軍総司令官ペロピダスさまならば、ご
弁論を終えたパシオン小隊長は、再び胸に片手をあて、深くゆっくりと一礼した。
そして、皆が気をのまれて、しんと静まり返った中を静かに引き下がっていった。
コリントス軍第
(おっしゃぁ――っ、弁論誘導も、足止め時間稼ぎも、うまくいったぞ!
ヘッヘー、やっぱ俺って天才かも。
こんなところで思いがけず、ダリウスを倒してくれるなんて、どこの誰か知らないがあの踊り子は最高だなっ。
クレオンブロトス王の
あとは、すぐに後を追わせたうちの部隊の連中が、逃げたふたりをうまく確保して、我々が保護してやれば完璧だ。
あ、あの踊り子が男だってこと、部隊の連中に言ってないや……ま、なんとかなるっしょ。
とっさにいい機転をきかせたって、ペイレネさまにすっごく褒めてもらえるぞー。
俺への好感度も爆上がりだ。ああ、ペイレネさまぁ♡)
などと考えていたことは、本人しか知らない。
パシオンの巧みな弁舌に、ついつい聞き入ってしまっていたアルヴィが、はっと我に返った。
棚から
重大で深刻な事態を……踊り子がティリオンだった事を耳打ちした。
フレイウスの表情と顔色が、さっと大きく変わった。
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作者はとっておきの良い声で「聡明かつ公平なる読者さまならば、ご
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どうぞよろしくお願いいたします。 m(__)m
人物紹介
● ペロピダス(32歳)……レウクトラ戦線、テバイ軍総司令官。
女好き。スパルタのアフロディア姫に熱を上げている。
● ダリウス(28歳)……ペロピダスの三弟。熊のような巨漢。『レウクトラの戦い』で、スパルタのクレオンブロトス王に右腕を斬り落とされ、隻腕。
踊り子ティリオンと対決し、死亡。
● フレイウス(26歳)……レウクトラ戦線、アテナイ軍総司令官。
『アテナイの氷の剣士』と異名をとる剣の達人。ティリオンの『第一の近臣』
● ギルフィとアルヴィ(19歳)……双子でフレイウスの部下。アテナイ軍士官。
アテナイでは、ティリオンの近臣だった。
● マイアン(27歳)……アテナイ軍の軍医。心配性で気が弱い。
アテナイでは、ティリオンの近臣だった。
● プロクテーテス(40代後半?)……レウクトラ戦線、コリントス軍総司令官。
恐ろしく太っていて、汗かき。食べることと、ハグが大好き。
● ペイレネ(21歳)……レウクトラ戦線、コリントス軍副司令官。
プロクテーテスの娘。
かつて、スパルタで人質時代を過ごしたことがあり、クレオンブロトス王と恋仲だった。
● パシオン(28歳)……コリントス軍第
良い声をしていて、話すのが好きで得意。
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