第3話

クラントベイホテル、大広間

昼から松田が成金連中を集めて金集めをしていた

「と…言うわけで会社の債権なんて今はナンセンス!今熱いのは小国!小国のスポンサーになればリターンもでかい!海の上のバンガロー、豊か自然、都会の喧騒を忘れらる非日常!これが全て貴方の物!債権のご相談は是非とも我が「ピースカンパニー」へ!」


舞台袖で名城は不思議がっていた

「どうしてあの人はこうも口が上手いの?アレでお金出す神経が分からない」

「カラクリは紛争が起きそうな国の債券をある程度買わせ、裏で武器を流しクーデター派に政権を取らせて債権は紙屑同然」

弟村は関心していた

「でもこれって結構恨まれないんですか?」

「あの人出資金の上限を人によって変えてるんです。それに何方もどこかで見た事ありまん?」

弟村が今日来ている参加者をモニターで見ると納得した

粉飾紛いをしている経営者、ファンドで売り逃げしている投資家、インチキ臭い宗教法人の幹部…

ここに集められたのは正当な金儲けをしている連中ではない、何かしら人に恨まれている成金ばかりだ

「これは社長が集めたんです?」

「あの人にそんな事できるわけないでしょ?私がピックアップして教えてます」

「なるほど…でも社長も騙してる訳ですよね?良く無事でいられますね」

「出資した連中の弱みや悪事を破産と同時にデータを流すのよ、社長は。それになんだか知らないのですが社長は各国の政治家とかにお金渡してるみたい。じゃなかったらとっくに捕まってるわ」

総合商社ピースカンパニーは武器を売るが利益はこの胡散臭い社長が出している、とにかく口が上手いのでコロッと相手を騙す、騙された側も気がついた時は全てを失ってるのでそれどころではない、それに社長の松田はPCでハッキングもするので情報も売り買いと意外と芸達者なのだ。

盛大な拍手が聞こえ壇上から松田が降りてきた

「はぁ〜疲れた、みんななんでこんなにお金が欲しいんだろうね」

「社長だって好きでしょ?お金」

「めっちゃ好き!」

「これでいくら儲けたんです?」

「んーーーー…ざっとこんなもん」

スマホの画面を2人に見せた

「えぇ!」「えっ!」

名城、弟村は驚愕していた

「社長?失礼ですが…その道の方が才能あると思います」

「そう思う?!やっぱり?!いやー弟村は僕を分かってるねぇ!ねぇ!椿ちゃん!」

「武器商人なんてやめてしまえばよろしいのでは?」

名城が松田の汗を拭きながら言った

「うーん?刺激欲しくない?だってさ?「投資家です。」って言うより「武器商人」って言った方がモテそうじゃん!こう…危険な男的な」

「社長は充分危険な男ですよ、人を怒らせたり恨まれたりと」

「おぉ!やった!褒められた!椿ちゃん僕頑張ったから今日こそ六松原のレッドドラゴンに行っていい?」

六松原とは都心のど真ん中の繁華街、神座町程ではないが男の欲望の街である

レッドドラゴンはその一角にあるセクシー女優が在籍しているキャバクラだ

松田は日本に来る度に行きたがるがいつも邪魔(仕事や厄介事)が入っていけない

「まぁここ3.4日ホテルで缶詰でしたから私と弟村さん同席であればいいですよ」

「ホントに!やった!僕お金持ってるからなぁ〜モテても椿ちゃん妬かないでね!」

社長をガン無視して弟村に話しかけた

「もしかして弟村さん予定ありました?」

「俺は予定なんてないですから、護衛兼運転手ですし」

「付き合わせてしまってすみません…」

ホテルのコンシェルジュが名城に話しかけた

「お忙しい所すみません、松田様にお客様がいらしてますが…」

「うん、帰ってもらって…ゲフッ」

松田が炭酸水を飲みながら答えたが

「すみませんこんなんで…お客さんとは何方です?」

「えっと…「WCS」と申せば伝わると申しておりました、今ロビーにてお待ちになっております」

「本当ですか?本当にWCSと?」

「はい、左様でございます」

WCS 通称 「Wild Cards」世界最強の呼び名の傭兵軍団だ、ピースカンパニーのお得意様でよく武器を卸している

「なんであの人が?」

「さぁ?何故でしょうね」

「弟村〜なんか心あたりある?」

「ないですね、大方怒らせたりしたんじゃないですか?」

「ロビーまで来てるのかぁ…僕が居ることモロバレだね…なんで?まぁいいや、昼飯ついでで会うか、個室があるお店はどこなら空いてる?」

「少々お待ちください」

コンシェルジュがタブレット端末で調べだした

「松田様、申し訳ございません…個室の店舗が四星飯店、懐石 祭、ともに埋まっておりまして…」

「えーーー他ないの?ちょっと込み入った話になるから個室がいいんだよ」

「社長、コンシェルジュの方が困っております、あまり無理を申すのはお辞めください」

名城が窘めた

「ーーん、あ!比較的席数が少ないお店どこ?」

「それですと18階の鉄板焼き から司なんていかがでしょう?」

「そこでいいよー、でも貸切ね」

コンシェルジュも「え?」

と顔に出てしまった

「社長、人を困らせるのはいけませんよ!少しは自重してください!」

「だって…どうせ他人に聞かれたらダメな話じゃん!ねぇ?1日の売上はいくらなの?2時間だけでも貸切にしてくれたら向こう5日分の売上払うよ」

コンシェルジュは困惑しっぱなしだ

「はい!行くよー!椿ちゃん、いくらか現金用意して」

こうなったらもう聞かないのを名城は知ってる

「松田様!お辞めください!」

「いーからいーから僕に任せてよ」



18階は懐石 祭、鉄板焼き から司、BARと店舗があり松田一行はから司に直行した

店に入るなり

「はーーーい!皆さん!お食事辞めて僕の話聞いて下さーーーい、今から僕がこの店を借りますので皆さん退席してくださーい!」

コンシェルジュはもう混乱状態だ

「松田様、松田様どうか…どうかお辞め…」

「理不尽なお願いなのは百も承知でーす!なので今頼まれてるオーダー会計は僕がぜーー〜んぶ払います、そしてホテル宿泊の方は埋め合わせに今日これからホテル内でお食事した人はみんな僕の部屋に会計つけていいですよー、宿泊してない人はこの名城からお金もらって帰ってね」

名城がカバンから現金を出した

日本円がカバンから出され利用客はあれよあれよと持って言った

「さて…次はお店の迷惑料だね」

そういい小切手を書出した

「これでいい?」

コンシェルジュ、レストラン支配人、料理長は金額を見て腰を抜かした

「足りない?もう少し払おうか?」

「いえ!松田様!ご自由にお使いください!」

深々とお辞儀をした


「あっそ、やったね!」

名城、弟村は頭抑えていた

「社長がどれだけ稼いでも何故金がないのか良く分かりました」

「まぁ…あの人なりの侘び料なんでしょう」


「じゃお肉食べようかな!」

「社長?WCsの方が…」

「あ!忘れてた!じゃあここ案内してよ」

全くもって本末転倒だ

ーーーーーーーーーーーーーーーーー


「お待たせしました、18階、鉄板 から司で松田様がお待ちになられています」


「分かりました、ご親切にどうも。昼から肉ですか…相変わらずですね」


少々パーマががった髪をソフトモヒカンにし薄色サングラスでジャケットスタイルの男

名前は「佐原 了茶(サハラ アラタ)」その男こそ世界最強と噂されるWild CardsのCEOである

佐原は付き人2名を連れてエレベーターに向かった

「CEO、今回件は彼が絡んでいると?」

「証拠もありますし…もう揺さぶりも必要ないのでは?」

付き人2人が佐原に問いかけた

「あそこの社長はなかなかの曲者なのよ、あれを敵に回すと厄介な事が増える」

「そのような人間には思えないですね…」

「人は見かけや行動によらないって事だよ」


18階にエレベーターが到着、エレベーターホール正面 鉄板焼き から司の暖簾をくぐると支配人が出てきた

「松田様のお連れ様ですね、伺っております、どうぞ中へ」

「君たちは店の外で待ってなさい、すぐ終わるから」

「了解です!」

「了解」


店内は肉が焼ける音、香りが丁度良い塩梅だった

「どんどん焼いてね!僕は次ねぇ…お!CEO!こっちこっち!椿ちゃんも弟村もじゃんじゃん頼んでいいよ!」

「お昼から良く食べますねぇ」

「昼夜関係ないよ、僕は食べたい時ガッツリ食べる。アクシデントがあると嫌だからね」

「今日はアポも取らずにすみません、可及的速やか事案でして…社長が偶然にも日本に居ると聞きましてね、馳せ参じました」

佐原は傭兵軍団のトップとは思えないくらい立ち振る舞いが紳士だ

「ふぉんとぉは…ゴクンっ!僕アポがない人とは会わないんだけどCEOの頼みなら仕方ないね」

相変わらず口にものが入ったまま喋る、立場がそう変わらないがこちらの方は遥かにだらしない

「佐原様、今日はどのようなご要件でしょうか?」

名城が尋ねた

「ちょっと…ここではお話にくい内容というか」

佐原が含みがあるように答えた

「美味い!シェフ、ちょっと席外してくれる?あ!お肉は置いといてね、僕自分で焼くから」

あれだけの金額を払った相手だ、料理人、支配人、給仕係と下がってこの場には松田、名城、弟村、佐原だけになった

「人払いありがとうございます、こちらをご覧頂いてよろしいでしょうか?」

佐原が何枚かの写真を出した

「先日ウチの息のかかった部隊がメキシコで襲撃され全滅しました、ご覧の通り全員眉間を撃たられるか首を切られるかのやり口です」

「うわぁ痛そうだねぇ…椿ちゃん、弟村もほら?見なよ!」

「私は結構です」

「食事中によく見られますね」

「で、これがどうしたの?ウチと関係あるの?」

松田はワインを飲み干しながら言った

「社長は日本に来る前メキシコにいましたよね?」

「どうだったかな?僕過去の事は忘れる主義なんよ、常に明日を見据えてるからね」

「そこはとぼけないで結構、裏も取れています。それでね社長?現場に髪の毛が落ちてたんですよ?銀髪の髪が…社長ご自慢のメイドさんも綺麗な髪の毛ですね」

「?あぁ椿ちゃんのあれね?あれウィッグだから」

「ゲフンゲフン!」

弟村がむせてた

「はっはっは…社長は相変わらず冗談がお好きだ」

佐原も呆れながら笑った

「あのね?椿ちゃんは重いおもーい白血病?になってね、髪の毛ないの」

平然と言い切った

「社長…この期に及んでそんな言い訳…」

「…言い訳って言うなら佐原さん、それはそちらが証明しなきゃならないんじゃない?」

珍しく松田が真面目な顔をした

「もちろん椿ちゃんのウィッグを提出なんてさせないよ?女性のオシャレの権利を奪う事に僕は断固抗議する」

「そう来ましたか…では質問を変えます、メキシコで商談以外に自慢のメイドさんは何をしていました?」

「ずっと僕が世話してた」

「はっ?社長が?」

「うん、椿ちゃんはほらなんだっけ、そう!白血なんちゃらだから僕が看病してたの」

「そんな言い訳私が信じると?銀髪の黒ずくめの女の目撃情報も出ているんですよ」

「あれ?あれれれ?部隊は全滅じゃなかったの?生き残ったりしてたの?さっきと話し違うじゃん、それにさ?この世には3人くらいそっくりさんがいるって言うでしょ?その3人じゃない?たぶん」

「わかりました…社長、はっきり言ってこれは警告です、次に襲撃されて銀髪の女の目撃情報が上がったら我々は実力行使しますよ、いいですね?」

佐原がサングラスを指で直しながら言い放った

「好きにすればぁ?ウチ関係ないし」

「今日はこれで失礼しますよ、次は温和に話し合えるといいですね」

佐原は何も食べずに席を立った

「何も食べないのー?」

「結構、貴方にご馳走様になると後が怖いので、それでは…御機嫌よう」

そう言って店を後にした

「社長…ご迷惑お掛けして…」

「ん?いーのいーの、僕は社員を守る立場だからね!すみませーーーん!もう済んだからこっちきて大丈夫よ!ガーリックライスを僕と弟村にお願いね?椿ちゃんはニンニク嫌でしょ?デザートでも食べる?」

「…結構です…」

「あぁ、そう…じゃあルームサービスにしようか、すみませーーーん!ガーリックライスキャンセルで!お会計…」

「社長もう払ってましたよ?小切手で」

弟村が指摘した

「あれ?そうだっけ?でも今飲み食いしたからその分は…」

支配人が慌ててきた

「松田様、お代は結構ですよ!充分過ぎる程頂いております!」

「んーじゃあチップならいいか、はいこれ、ご馳走様さまー、2人とも部屋帰るよー」

この人の金銭感覚は根本からおかしい


ーーーーーーーーーーーーーーーー


1638号室に戻った3人

松田から卓に付き弟村、名城の順で部屋に入った

「で椿ちゃん、メキシコで何してたの?」

「私はお暇でしたから観光ですよ」

「ん?夕方出てって観光?いくら椿ちゃんが強いって言ったって物騒だよ」

弟村は社長がメキシコの地図を見ていた事を思い出した

「たしかに1日だけ名城さんいなかったですよね?、何があったんです?私たちに話してくださいよ」

「弟村さんまでやめてくださいよ…私は何も…」

「ねー?椿ちゃん、事件のあった豊袋もこの前行ってたよね?これって偶然?」

名城は立ち上がりながら答えた

「偶然ですよ…紅茶でも入れますね」

「私はコーヒーでお願いします」

「社長は紅茶、弟村さんはコーヒーですね?」

「うん、熱いの嫌だからぬるめで」

「ブラックでお願いします」

「承知しました」

名城が紅茶とコーヒーを持ってきた

「はい、社長、ぬるめ紅茶です。音村さんはブラックコーヒーでしたね」

「ありがとう椿ちゃん、いただきまー〜す」

社長は一気に流し込んだ

弟村はコーヒーを飲む前にカップのコーヒーをじっと見た

「社長!いけない!直ぐに吐いて!」

「へ?もう飲ん…じゃった…よ…あ、れ…うまくぅ…ひゃべ…」バタン

弟村が名城に詰め寄った

「あんた何をいれた!」

「さすがは弟村さん、気が付きました?」

弟村が名城の襟元を掴んだ瞬間名城が弟村の腕を掴みホールドして両足で寝技体勢に持ち込み弟村を締めた

「あれはただの即効性の弛緩剤です、死ぬ事はありません…ご安心を…」

弟村が腕と足をバタバタさせていたが静かになった

「ごめんなさい…これは私がしなきゃならない事なの…2人を巻き込む訳にはいかない」

そう言って名城は素早く着替え1638号室を出た

エレベーターホールでボタンを押す前に下から3機上がってきた

「…もう気づかれたか…」

小声でそう言うと非常階段で屋上まで上がった

屋上は闇の世界だった

排気管や配電盤を抜け柵に登り柵に何やら小型の機械をつけてそれをハーネスに繋ぎ一気に下までかけ降りた


その頃16階に降りたのはタツオ・カミサカだった

「急げ!1638号室だ!」

連れと何人かが走って1638号室まで来た

ドアに人の手が挟まっていた

「どうした!おい!おい!」

弟村だった

「な…しろ…さ……とめ…」

「クソ!遅かったか!誰か下行って追いかけろ!油断するなよ!それと医者呼んでこい!」


タツオ・カミサカの声が16階に響き渡った







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