第12話

ひどい二日酔いだ。部屋の中が散乱している。

ドラッグストアで購入した安いジャパニーズウィスキーの空き瓶やらガス入りの水の空き容器やら灰皿やらインスタントスナックの包装紙やら胃腸薬の箱やらがこたつ机の上に散乱している。


頭の中も散乱しているようだ。だが、その散乱ぐあいを捉えるだけの処理能力は昨夜に摂取したアルコールのせいで完全に消え去っている。自宅でウィスキーを飲んでいたことだけは覚えているが、それ以外の記憶があいまいだ。


思い出そうとするとより頭痛が強くなるので、僕はキッチンへ向かい蛇口を回しコップに水を注いだ。二日酔いの日に限って外は快晴である。罪悪感がこみ上げてくる。こみ上げたところで対処できるだけの体力/精神力は残っていないため、ベットに戻って不貞寝をする。今日は確か2コマと3コマに授業が入っていたが自主休講とする。


3コマの代返を友人に頼もうとLINEを起動する。秋奈とのやりとりが最上部に残っている。どうやら秋奈は昨日僕の家に来ていたみたいだ。酩酊したらすぐ女に逃げる。悪い癖だ。それにしてもいつ帰ったのだろう?いや思い出すのはよそう。もし何かロクでも無いことをしていたことに気付いてもリカバーする体力はない。代返のお願いだけしてさっさと寝ちまおう。


二日酔いの日に限って、老後のことを考える。八十歳くらいになると常時この二日酔いのような状態になるのかな。集中力も記憶力も気力も衰えて流動食のようなコンテンツしか摂取できなくなるのかな、狭義の食事においても広義の食事においても。嫌だなぁ、四十歳くらいでさっさと死んでしまいたい...


二日酔いの日は夕方になると決まって泣きたくなる。いつも熱闘甲子園の過去回を見て少し泣く。陽が完全に落ちるまで、タバコを吸いながらぼうっと待つ。牛丼を買いに行く。紅生姜と七味の付与を断る。今の胃腸に刺激物は入れられない。


自転車のカゴに持ち帰りの牛丼を入れて帰る。夜風が心地よく感じられるくらいには体力が回復してきたらしい。ついでに昨日ウィスキーを買ったドラッグストアでポカリの900mlを買う。牛丼と一緒にカゴに入れる。


帰宅して牛丼を食べる。通常サイズの牛丼をなんとか20分ほどかけて完食する。ポカリも300mlほど飲んだ。明日はなんとか通常の活動ができそうな予感が芽生え始める。タバコを吸って歯を適当に磨いて、21時ごろに就寝する。


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