第3話
僕が生まれ育った街について。
瀬戸内海に面した気候の穏やかな土地で真冬に僕は生まれた。生後3ヶ月くらいの時に何の病気か忘れたが、一度死にかけたらしい。その後は大きな病気もなく、一般的にいう健康児として育った。
いわゆるベッドタウンといわれる街で、健康で文化的な最低限の生活を営むために必要となるような商業施設しか存在しない。
スーパーマーケット、コンビニエンスストア、ドラッグストア、格安日用品店、中古本/ゲーム販売店、ファストファッションブランド店、市営鉄道 -----
市営鉄道。1車両しか走らない市営鉄道。東西に1車両、キャパ4-50人ほどのコンパクトな車両が市内を走る。
敷かれた線路は地上5mほどの高さにあり、どことなく宙ぶらりんな印象を受ける。実際にその車両はよく小刻みに左右に揺れている。
僕は地元に帰った時、よく歩道橋の上から車両が走る様を見る。街灯がほとんどないため、数百メートル先は暗闇である。くすんだ銀色の筐体内にまばらな乗客が暖色系の安蛍光灯に照らされながら徐々に暗闇に飲み込まれていく。運行ダイヤ上は隣町に約3分で到着するようになっているが、全く別の場所に運ばれているような不気味さがある。その様を見る時、僕はいつも缶ビールを飲む。
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