第27話 絶望
友達からも会いたくないと宣言され、家族からも絶縁され途方に暮れていた
だが正直手持ちのお金もそこまであった訳ではないので、そう何日も寝泊りできるわけではない。
(あたし、これからどうしたらいいんだろ・・・。)
そんな時、茉莉花の頭に
最近不仲な感じではあったが、なんだかんだで自分のことを受け入れてくれる。そのような甘えがあったのだろう。
茉莉花は
翌日の朝、茉莉花は孝明の住んでいるアパートの近くへと到着する。
正直孝明だって自分の生活があるのだから他の人間を養っている余裕などないだろう。
だが茉莉花がそんな配慮をするハズもなく、まして今はそんなことを考える余裕もないため孝明を頼ることにした。
(あいつ・・・多分まだ家出てないよね?)
今日は孝明は大学のハズだが、この時間ならまだ家にいると思ったのだ。
茉莉花はアパートを訪問しようと玄関へ向かおうとする。
すると
それと同時にアイリーが孝明を送り迎えするように一緒に出てくる。
「じゃあ行ってくるよ、アイリー。今日もバイトがあるから遅くなるよ。」
「うん。いってらっしゃい、孝明。毎日お疲れ様。」
孝明が家を出ようとすると、アイリーが呼び止める。
「そうだ、孝明。たまには夕飯のリクエストとかどう?いつも私が勝手に決めて作ってるだけだし。」
「そうだなあ。シチューとかどうかな?この前作ってもらったばっかだけど、すごく美味しかったしもう一回食べてみたいなあ。」
孝明の言葉にアイリーは頷く。
「ん、分かった。前のルーの残りも具材もあるから大丈夫。頑張って作る。」
「じゃあ楽しみしてるよ。行ってきます。」
そう言うと孝明はアパートを出て大学へと向かおうとする。
だが、その瞬間アイリーが孝明の胸元にもたれかかり、服を掴む。
「あ・・・アイリー?」
孝明は突然のアイリーの行為に驚き戸惑う。
「孝明、できるだけ早く帰ってきてほしい。」
そういうと二人はそのまま時が止まったかのように動かずにいる。
孝明はアイリーの要望に応えようと彼女の頭を撫でながら答える。
「分かった。なるべく早く帰ってくるよ。」
「・・・うん。」
アイリーは孝明から離れお互い手を振りながら別れる。
それを見ていた茉莉花は言葉にできない怒りと嫉妬が沸き上がる。
(何よ、あれ・・・。まるで本物の恋人同士じゃない・・・。)
以前からも度々そういう素振りを見せていたが、そのような様子を改めて見せつけられ茉莉花の頭の中は真っ白になる。
他にすがるものがない今の茉莉花にとってはもはや絶望でしかなかった。
自分にとっての唯一の居場所・・・それはもはやアイリーのものとなっている、そのように見えたのだ。
茉莉花はその様子を見送ると何も考えることができないまま歩き出し住宅街から街中へと歩きだす。
ただ目的地があった訳ではないが、どうしようもない気持ちで溢れどこへ行ったらいいかも分からない状態で向かって行く。
そして街中の壁にもたれかかるように横たわり何時間も何もせず呆然と過ごす。
(なんでよ・・・。なんでこんなことになっちゃったのよ・・・。)
色んな友人から拒絶されてるような態度をとられ頼子からも縁を切られ、そして家族からも家から追い出されてしまった。
そこへ追い打ちをかけるように自分の居場所を奪っていくアイリーに全ての怒りを集中砲火させてゆく茉莉花。
もはや茉莉花に冷静に物事を分析する余力は残されていなかった。
茉莉花は今までの出来事を無意識に振り返る。
最初に憤りを感じたのはいつからだっただろう。
いつからおかしなことになったのか、そのように考え始めていた。
そして彼女はきっかけはアイリーだったと考え始める。
彼がアイリーと出歩いており、その時孝明が自分には見せないような笑顔でいたのを見てから自分の中で怒りを感じ何かがおかしくなったことを思い出す。
孝明が自分のことよりアイリーの方に気が行っている。
それが全ての元凶だと彼女は思いこむ。
自分の最後の綱であった孝明まで奪い去ったアイリーに全ての怒りを集中砲火させる。
「あの人形だわ・・・。あのガラクタが・・・あたしの人生を滅茶苦茶にしたのよ・・・。」
茉莉花は立ち上がり実家へと戻る。
そして家族にバレないよう、ガレージから金属バットを持ち出す。
コロシテヤルコロシテヤルコロシテヤルコロシテヤルコロシテヤルコロシテヤルコロシテヤルコロシテヤルコロシテヤルコロシテヤルコロシテヤルコロシテヤルコロシテヤルコロシテヤルコロシテヤルコロシテヤルコロシテヤル
ニドトウゴケナクナルマデブチコワシテヤル!!
茉莉花は心の中でその言葉を延々と繰り返し、孝明のアパートへと向かう。
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